見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

モアイを見上げながら

2008-01-13 03:36:50 | 南米
モアイについては謎が多く、その起源から建造目的まで諸説諸々である。
が、モアイ像を切り出した岩山の工房跡や、前向きになぎ倒されたモアイの放置現場を歩くと、事実として存在するモアイの意味を考える楽しみに時間を忘れるほどだ。
大きさは3mから20m。重量20~90トン。赤岩の冠をつけたモアイや、目を入れた跡のあるモアイまで様々な形態をしている。
島内に1000体あるモアイのほとんどが倒されているが、日本の某TV番組の影響で某企業がクレーンを持ち込んで何体かを立ち上げ復元した。

けれど、ドイツから移り住んだジョゼは言う。
「歴史は通り過ぎていくもの。過去に起こったことを今の人間が修復するのはおこがましい。倒れたモアイはそのままにし、風化していく姿を今の時代の人間が見て、時の趨勢を感じる権利があると思うんだけどね」と。

素朴な島でも観光化が始まっている。これまで、チリのLAN航空だけが空路を独占していたが、フランスの航空会社が新たに参入する話がまとまりつつあるという。空港も飛行機が離着陸する時間だけオープンする平屋建ての簡単な施設だが、これから観光を島の産業に発展させていこうとする動きが加速すれば、舗装道路は増え、巨大資本の大きなホテルも入ってくるだろう。
観光産業は、島の人々の生活を豊かにしてくれるかもしれない。が、同時に失うものも少なくないことは、先進国に住む私たちが一番よく知っている。
モアイはこの島で風化させたいと言ったドイツ人のジョゼの言葉が、いつまでも耳に残った。


↑沈む夕日を背景にしたモアイは神秘的な影を見せる。


↑モアイ切り出し工房となった岩山。顔と体まで彫刻が済み、岩山から切り出す直前となって放置されたモアイもある。島に1000体確認されているモアイ像は、すべてこの山の岩を切り出し運ばれたという。


↑モアイ像は、各部族リーダーの権力の象徴だったと言う説もある。部族ごとにモアイを飾る広い台座(プラットホーム)が造られ、リーダーが代わるたびに順に並べられたとか。米国が作ったモアイ像制作の時代を撮った映画のDVDを買ってみた。空想に基づくストーリーだがなかなか楽しめる。


↑巨大なモアイ像をどのようにして運び、どのように冠を被せたのかの仮説にもとづくイラストが要所に展示されている。


↑耳の長い(ピアス穴を広くあけていた)部族が覇権をもち、耳の短い(普通のサイズ)を奴隷化していたが、ある日、耳の短い部族が総決起し、モアイを顔を伏せた方向へ次々と倒していったと言う逸話を信じたくなるような現場。手前に転がっている赤い岩の塊は、モアイ像に被せる赤岩でできた王冠。島で唯一赤岩がとれる場所から切り出して運んだらしい。

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2 コメント

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歴史から見えること (pechka)
2008-01-21 10:00:21
 モアイ像は神秘的ですね。像は人々の時間と労力の賜ですが、そういうことができたのは人が食べることに困らない自然があったからでしょう。しかし、自然の人為的な改変(自然の復元能力を超えた攪乱)が何をもたらすのかについて、当時の人たちは思い至らなかったのかもしれません。
 翻って、農地と成熟しつつある里山林を放置しつづけ、大量の資源を輸入しつづける今の日本。われわれのこの生き方は、歴史から教訓を得ているといえるでしょうか。
 ワインさんのレポートを読んで、そう自問せざるを得ませんでした。
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地球に共存するもの (ワイン)
2008-01-23 14:49:40
各国の自然や都市空間を歩きながら、人間が地球を独占するようになった意味、日本社会の行く先などについて思う機会が多くなってしまいました。
pechkaさんのように、日常生活の中にあっても近視眼的にならず、地球の上の自分の足元の位置を確認していくようになりたいと思います。
返信する

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