見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

クリチバの治安と住居地としての魅力

2007-12-17 09:00:14 | 南米
クリチバに落書きはないのかという質問をいただいた。
日本の都市とクリチバを比べると、落書きの存在は否定できない。が、ブラジルの他都市とクリチバを比較すれば圧倒的にクリチバは少ない。
クリチバには、不当な落書きや張り紙の禁止条例があると聞いたが、「世界が注目している私たちのクリチバの街並みや景観を大切にしよう」という歴代市長たちの熱いメッセージに応えようとする市民も少なくないようだ。



ブラジルの多くの都市では、市民の安全を守る警察官に似た役割の「自治警備部」を設置している。一見、警察官とも思える紺色の制服に身を包み、拳銃や警棒を携帯しペアになって街中を巡回している。
都心の歩行者専用道路では、ブラウン色の制服に身を包んだ連邦警察官が、足台の上に乗って人ごみや周囲を警戒したり、馬に乗って巡回したりしている。
人の集まる場所には、必ず複数の警察官や自治警備員が巡回しているので、安心といえば安心だが、「つまり、危険なのだ」と緊張感も高まる。



クリチバの郊外の高級住宅街では、家の周囲を取り囲む外塀の上に「高圧電流注意」の表示が付けられた侵入防止装置が張り巡らされている家が目立った。通りかがり異邦人に向かって甲高くほえ続ける番犬がゲートを守っている家もある。
都心の緑地公園は、一晩中、目にまぶしいほど明るい防犯灯で浮かび上がっている。



ブラジルの都市は一般的に治安が不安定なのだ。そうした状況を改善するための自主防犯策、行政策がどこでも練られている。貧困が改善され、マフィアが鎮圧され、安全な社会になることを住民の誰もが願い、政府も自治体も模索している。
しかし、クリチバ市では、「デイパックを後ろに背負ってはだめ!盗られるよ」と親切に注意してくれることは何度かあっても、「外出は手ぶらで。拳銃を持った人が襲ってくるかもしれないから」と注意されることはなかった。



クリチバの観光要所巡回バスの停留所で、サンパウロから来たという若いカップルと話をした。夏休みを使ってクリチバ市周辺の観光を楽しんでいるという。
「クリチバはすばらしいですよ。何もかも整頓され、きちんとしている街です。何よりも、ここは緑が豊か。空気がとても美味しい。サンパウロは空気が淀んでいます。いい仕事をみつけて、この街に住もうと二人で考えているんです」と、市の誇る現代美術館で買ったお土産の袋を提げてバスに乗り込んだ。

旧駅舎を改築したショッピングモールでネットショップを運営している青年ヘナトは、ブラジルの北部からクリチバに昨年やってきた。
「数年前に出会った米国人女性と恋に落ちて、僕の人生は180度変わりました。彼女がクリチバをよく知っていて、ブラジルに住むならクリチバでと望んだので、故郷の全てを捨てて、彼女と二人でこの街に来たんです。ここは彼女の言う通り、清潔で近代的な街。田舎に比べると治安はそれほどよくないけど、都会にはありがちでしょ。今はこの街に出会えてとても幸せです」と、聞いている方が照れてしまいそうな程率直に語った。



そうそう、一人だけクリチバに批判的な人がいた。パンタナール湿原のロッジで出会った現在イギリスに在住しているというブラジル人のマルコだ。
「クリチバね。知っている。1年ほど住んだことがある。確かにきれいだし、すべてが整えられているよね。でも、僕は好きじゃない。サンパウロの方がずっといいよ。サンパウロの住人はみんなオープンさ。陽気で親切だ。でも、クリチバの住民たちは、お高く止まっているんだ。オープンじゃないし冷たい。クリチバにいたときは孤独だった。好きになれない街だよ」と。

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