ブラジルの宿を検索しているうちに、宿を始める準備を進めているという日本人青年のブログに出会った。
現在、日本のセミプロ総合格闘家の若者が一人、2ヶ月ほど逗留しているという。彼ら二人に興味がわき、リオから夜行バスで12時間のクリチバ市へ来た。
旅先で幾度となく再認識することだが、世の中には自分の知らないことが山のようにある。
「総合格闘技」という言葉を聞いたことはあっても、どんなスポーツなのか、ルールはあるのか、など何も知らない。が、はるばる日本か武者修行に来る若者がいるほどの魅力的なスポーツなのだ。
クリチバ郊外の宿で出会った総合格闘家は、子犬の世話を好む寡黙で笑顔の優しい若者だった。格闘技を目指す者であれば、誰でも知っているという有名なトレーニングジム「シュート・ボクセ」に通っているのだと言う。
プロレスやボクシングは苦手、残酷というイメージが強い。今までTVでもあまり見たことはないが、そういえば、年末年始に紅白歌合戦の裏を張ってそんな番組があったような。元相撲力士が出て・・・。
「それはPRIDEですね。」と宿主のゴウさん。
日本人宿に到着した夜、早速、総合格闘家マサトさんと、ゴウさんから「総合格闘技とは何か」のレクチャーをしてもらった。
何しろ、全くの素人なので、私の質問そのものが、まったく的を外れているらしい。ゴウさんは、空手の名手。二人の格闘家は、チンぷんカンぷんな質問に嫌な顔ひとつせず、「総合格闘技」のAtoZを教えてくれた。
ゴウさんは格闘試合の録画DVDを何枚も持っていて、私は初めて、「総合格闘技」の白熱した試合を、彼らの解説入りで何本か観た。白熱した緊張感に満ちる試合には思わず引き込まれてしまう。
すでに日本国内の試合に出ているセミプロのマサトさんは、22歳。よく聞いてみると、なんと私の故郷の出身で、中学生時代に専念していた剣道の指導者は私の知人だった。世の中狭い。
朝、8時半のバスに乗ってクリチバの中心地にあるジムに向かい、一日練習。土日は、遊びに出かけることなく、宿で体を休める日。ゴウさんが表通りで拾ってきた3匹の子犬の世話をしたり、たまった大量の洗濯物をごしごしと手で洗って暑い日差の中で干している。
知る人ぞ知るというジム「シュート・ボクセ」は、誰でも自由に見学できると聞き、マサトさんの練習について行くことにした。
日本では大阪のジムに所属していたというマサトさんに、日本のジムと、シュート・ボクセとの大きな違いは何かと聞くと、
「日本は、基礎トレーニングをみっちりやるということっすかね」
と大阪のアクセントでマサトさんは答えた。「こっちは、強ければいいという感じで、練習をまじめにやるというより、どうすれば勝てるかに焦点を当てている感じ」
クリチバ市の日本庭園裏にあるジムは、清潔で新しい建物だった。ムエタイのジムでスタートした当初はもちろん名の知れない貧乏ジムだったらしいが、強い格闘家を輩出するようになって有名に。各国から修行するセミプロが集まるという。でも、遠いブラジルへ来ている日本人は、今はマサトさんだけだ。
「今日は練習人数が少ないかもしれません。雨の日や月曜日はあまり人が来ないんです」
なるほど、マサトさんは練習熱心な日本人だ。
彼の後について2Fのトレーニングルームに入ると、先客が2人、5分間隔でブザーの鳴る大きなカウントダウン時計を前に、グローブをはめて打ち合いの練習をしていた。マサトさんの言うように、天候のせいか他に誰もいない。
「あそこにいるのがルイス・アゼレードです。年末に日本に行って試合をすることになっています」とマサトさん。
昨夜話題になった一人だ。
今年の大晦日の夜8時。さいたまスーパーアリーナで日本人の川尻達也(有名らしい)と対戦するという。TV放映もされるのだろうか。
その彼の練習風景を目の当たりにする。ファンだったら感激の涙が潤むところかもしれない。
ルイスは、マサトさんや他のプレイヤーを相手に5分+1分間隔のスパーリングをしながら、時々ジャブの腕の伸ばし方、ボディブローの入れ方などにアドバイスをした。5分はけっこう長い。みるみるうちに、彼らのTシャツが汗で濡れていくのがわかる。ブザーの音と共に1分休み、また次の相手と5分間。それを休むことなく続けていく。
小さい頃からずっと剣道を続けていたというマサトさんが、総合格闘技にはまったのは高校を出てから。大阪のジムに入った頃は、単なる興味からだったが、そのうちに、夢中になり、初戦から注目されるような選手となった。
1対1で対面する点では剣道に似ている。剣道で得たことで何か役立っている?
「ええ、間の取り方とか。礼儀とか、っすかね」と笑顔で語るマサトさんは言葉少なくニヒルだ。
笑うとたれ目がちで優しい顔、サングラスをかけると強面になる。
ゴウさんの宿に長いが、何かと気を遣って礼儀正しい。もうしばらくしたら、同じジムの仲間と一緒のアパートに移るという。
有名なジムだからといって、トレーニング指導が格別にいいとも思わないが、そこにいる仲間たちから学ぶものは大きい、とマサトさん。日本に招聘される格闘家が、何人も日常的に練習の相手になるジムだ。
「できれば、ずっと長くいたいけど、お金が続かないので、来年春には日本に戻ります」と言う彼に、TVに出るときは教えてねと言うと照れた笑いが返ってきた。
今のうちに、サインをもらっておこうか、未来のチャンプに。
↑ルイス・アゼレードの動きは、さすがに他の練習者とは一線を隔していた。写真を撮っていいかと聞くと、笑顔で応じ、撮影後は「アリガトウ」と日本語で言った。大晦日の彼の試合を応援したくなる笑顔だった。
現在、日本のセミプロ総合格闘家の若者が一人、2ヶ月ほど逗留しているという。彼ら二人に興味がわき、リオから夜行バスで12時間のクリチバ市へ来た。
旅先で幾度となく再認識することだが、世の中には自分の知らないことが山のようにある。
「総合格闘技」という言葉を聞いたことはあっても、どんなスポーツなのか、ルールはあるのか、など何も知らない。が、はるばる日本か武者修行に来る若者がいるほどの魅力的なスポーツなのだ。
クリチバ郊外の宿で出会った総合格闘家は、子犬の世話を好む寡黙で笑顔の優しい若者だった。格闘技を目指す者であれば、誰でも知っているという有名なトレーニングジム「シュート・ボクセ」に通っているのだと言う。
プロレスやボクシングは苦手、残酷というイメージが強い。今までTVでもあまり見たことはないが、そういえば、年末年始に紅白歌合戦の裏を張ってそんな番組があったような。元相撲力士が出て・・・。
「それはPRIDEですね。」と宿主のゴウさん。
日本人宿に到着した夜、早速、総合格闘家マサトさんと、ゴウさんから「総合格闘技とは何か」のレクチャーをしてもらった。
何しろ、全くの素人なので、私の質問そのものが、まったく的を外れているらしい。ゴウさんは、空手の名手。二人の格闘家は、チンぷんカンぷんな質問に嫌な顔ひとつせず、「総合格闘技」のAtoZを教えてくれた。
ゴウさんは格闘試合の録画DVDを何枚も持っていて、私は初めて、「総合格闘技」の白熱した試合を、彼らの解説入りで何本か観た。白熱した緊張感に満ちる試合には思わず引き込まれてしまう。
すでに日本国内の試合に出ているセミプロのマサトさんは、22歳。よく聞いてみると、なんと私の故郷の出身で、中学生時代に専念していた剣道の指導者は私の知人だった。世の中狭い。
朝、8時半のバスに乗ってクリチバの中心地にあるジムに向かい、一日練習。土日は、遊びに出かけることなく、宿で体を休める日。ゴウさんが表通りで拾ってきた3匹の子犬の世話をしたり、たまった大量の洗濯物をごしごしと手で洗って暑い日差の中で干している。
知る人ぞ知るというジム「シュート・ボクセ」は、誰でも自由に見学できると聞き、マサトさんの練習について行くことにした。
日本では大阪のジムに所属していたというマサトさんに、日本のジムと、シュート・ボクセとの大きな違いは何かと聞くと、
「日本は、基礎トレーニングをみっちりやるということっすかね」
と大阪のアクセントでマサトさんは答えた。「こっちは、強ければいいという感じで、練習をまじめにやるというより、どうすれば勝てるかに焦点を当てている感じ」
クリチバ市の日本庭園裏にあるジムは、清潔で新しい建物だった。ムエタイのジムでスタートした当初はもちろん名の知れない貧乏ジムだったらしいが、強い格闘家を輩出するようになって有名に。各国から修行するセミプロが集まるという。でも、遠いブラジルへ来ている日本人は、今はマサトさんだけだ。
「今日は練習人数が少ないかもしれません。雨の日や月曜日はあまり人が来ないんです」
なるほど、マサトさんは練習熱心な日本人だ。
彼の後について2Fのトレーニングルームに入ると、先客が2人、5分間隔でブザーの鳴る大きなカウントダウン時計を前に、グローブをはめて打ち合いの練習をしていた。マサトさんの言うように、天候のせいか他に誰もいない。
「あそこにいるのがルイス・アゼレードです。年末に日本に行って試合をすることになっています」とマサトさん。
昨夜話題になった一人だ。
今年の大晦日の夜8時。さいたまスーパーアリーナで日本人の川尻達也(有名らしい)と対戦するという。TV放映もされるのだろうか。
その彼の練習風景を目の当たりにする。ファンだったら感激の涙が潤むところかもしれない。
ルイスは、マサトさんや他のプレイヤーを相手に5分+1分間隔のスパーリングをしながら、時々ジャブの腕の伸ばし方、ボディブローの入れ方などにアドバイスをした。5分はけっこう長い。みるみるうちに、彼らのTシャツが汗で濡れていくのがわかる。ブザーの音と共に1分休み、また次の相手と5分間。それを休むことなく続けていく。
小さい頃からずっと剣道を続けていたというマサトさんが、総合格闘技にはまったのは高校を出てから。大阪のジムに入った頃は、単なる興味からだったが、そのうちに、夢中になり、初戦から注目されるような選手となった。
1対1で対面する点では剣道に似ている。剣道で得たことで何か役立っている?
「ええ、間の取り方とか。礼儀とか、っすかね」と笑顔で語るマサトさんは言葉少なくニヒルだ。
笑うとたれ目がちで優しい顔、サングラスをかけると強面になる。
ゴウさんの宿に長いが、何かと気を遣って礼儀正しい。もうしばらくしたら、同じジムの仲間と一緒のアパートに移るという。
有名なジムだからといって、トレーニング指導が格別にいいとも思わないが、そこにいる仲間たちから学ぶものは大きい、とマサトさん。日本に招聘される格闘家が、何人も日常的に練習の相手になるジムだ。
「できれば、ずっと長くいたいけど、お金が続かないので、来年春には日本に戻ります」と言う彼に、TVに出るときは教えてねと言うと照れた笑いが返ってきた。
今のうちに、サインをもらっておこうか、未来のチャンプに。
↑ルイス・アゼレードの動きは、さすがに他の練習者とは一線を隔していた。写真を撮っていいかと聞くと、笑顔で応じ、撮影後は「アリガトウ」と日本語で言った。大晦日の彼の試合を応援したくなる笑顔だった。
また、クリチバは環境都市計画の成功例として世界的に有名です。特に交通システムはすごいらしい。一度訪ねてみたい町です。
ブラジルの治安は不安ですが、行政や教育機関における環境への配慮や意識の強さを到るところで感じます。ブラジルを誤解していました。
とはいえ、治安の問題がやはり気がかりです。けっして無理しないでくださいね。安全第一です。
ワインさんのクリチバレポート、楽しみにしてます。
今日、クリチバ市役所を訪ねたところ、広報課の担当者二人が、2時間も対応してくれました。二人ともクリチバが大好きで誇りに思っている様子が、様々な話しから伺えました。2005年まで2期務めた日系人の市長は州政府へ引き抜かれ、新たに40才の市長が誕生。新市長は住民との直接対話を重視しながら来年度の予算を昨日決定したとのことでした。詳しくはブログで報告いたします。
お二人はすでにとても詳しいので、私が広報課にインタビューした内容は初歩的内容かもしれませんが。明日、パラグアイの国境へ移動しますので報告まで少しお時間をください。