バイクも仕事も走ります。

バイクででかける。美味いものを食べる。は継続。弁理士の仕事のはなしを加えていきます。

ちまちま中間手続11

2024-07-24 21:08:41 | ひとりごと
弁理士近藤充紀のちまちま中間手続11

拒絶理由
引用文献1には、・・・等の・・・を主成分とする粘土鉱物からなる排ガス中の有害物除去用吸着剤が記載され ている(請求項1、4、段落0020参照)。

意見書
 引用文献1では、有害物質除去用吸着剤は「活性炭」を必須要件として含んでおり、この点で、「・・・を主成分とする粘土鉱物からなる吸着剤を単独の吸着剤として排ガス中に投入」し、活性炭を含んでいない本願発明とは異なっている。 
 ここで、引用文献1では「活性炭」が必須の要件になっていることについて説明する。
 まず、引用文献1の請求項1では、「・・・と・・・剤および/または、活性炭もしくは・・・からなる」と記載されており、この記載を参照しても、どの要素が必須要素でどの要素が択一的要素であるかが全く理解できないので、請求項1の記載によっては「活性炭」が択一的な要件であることは支持されない。また、引用文献1の詳細な説明の記載を参照しても、その 段落番号[0018]に、無機酸化物の多孔質物質と活性炭とを併用することができる旨 が記載されているが、活性炭を完全に省いてもよいとの記載はない。また、段落番号[0027]には、活性炭の配合量は、無機酸化物の多孔質物質100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であることが望ましい旨が記載され、また、引用文献1の発明を具体的に説明する実施例1においても活性炭を含む吹込剤のみが説明されている。したがって、引用文献1の記載全体を参照すれば、引用文献1では「活性炭」を必須の要件としているといえる。 
 これに対して、本願発明では、活性炭ではない「・・・を主成分とする粘土鉱物からなる吸着剤」を単独の吸着剤として排ガス中に投入するので、活性 炭を含む引用文献1とは完全に異なっているので本願発明は新規性を有する。 
 また、本願発明の上記構成と異なり、活性炭を必須要件として用いている引用文献1で は、発火するおそれがあり、「発火する危険性がなく、安全性の向上を達成することができる」という本願発明の効果を得ることはできない。したがって、本願発明は進歩性も有する。

拒絶査定
上記の引用文献1の請求項1の記載は、無機酸化物の多孔性物 質と活性炭を択一的に記載したものであると認められるから、出願人の上記の主 張は採用することができない。

審判理由
 ・・・
 しかしながら、引用文献1中の上記記載は、必須要件を列挙する場合に使用される接続 詞「と」と、必須要件を列挙する「および」と択一的要件を列挙する「または」を複合し 、列挙された要素が必須要件および択一的要件のいずれでもよいことを表す「および/ま たは」と、択一的要件を列挙する場合に使用される「もしくは」とが混雑して使用されて おり、上記記載のどれが必須要件でどれが択一的要件であるのか極めて理解し難い記載に なっている。  上記各要件のうち、・・・引用文献1の段落番号[00 32]~[0036]の実施例を参照しても、「多孔性物質」と「酸性ガス中和剤」との 両方を用いた場合について記載している。 
 これに対して、本願発明では、「・・・を主成分とする粘土物 質からなり吸着剤」を単独の吸着剤として排ガス中に投入するので、多孔性物質と酸性ガ ス中和剤とを組み合わせて用いている引用文献1とは完全に異なっており本願発明は新規 性を有する。 
 また、本願発明は、「・・・を主成分とする粘土物質からなる 吸着剤」を単独の吸着剤として排ガス中に投入することによって、活性炭等の他剤を加え ることがなく、安全でかつ簡単に処理を行うことができる。多孔性物質を単独で用いない 引用文献1では、このような本願発明の効果を得ることができないので、本願発明は進歩 性も有する。

拒絶査定
引用例1の記載事項(b)(e)及び(f)によれば、・・・、引用発明においても、吸着剤としては多孔性物質からなる吸着剤のみを投入するものである。
 一方、本願発明も、本願明細書の実施例1、2(段落【0015】【00
19】)で、消石灰と吸着剤である活性白土とを一緒に吹き込んでいること
から、単独の吸着剤と消石灰とを一緒に投入する態様を含んでいる。
 そうすると、・・・点において、本願発明と引用発明に差違はない。

 要するに、本願発明は、「活性炭」を含まないものとして構成しているのに対して、引用例は、実施の形態を参照すれば、「活性炭」を必須として含むものであるので、この点について反論した。

ところが、引用文献1の「請求項1」には、「活性炭」は、択一的なものとして規定されているので、引用文献1は、「活性炭」を含まないものも含む、との拒絶査定

これに対する審判は、並列の用法の、「と」と「および/または」により解釈が複雑になっているので、明細書の記載に沿って解釈すれば、引用文献1において「活性炭」は必須である、との反論を試みた。

拒絶査定は、並列の用法の、「と」と「および/または」の解釈論について説明がなされた後、やはり、「活性炭」は、択一的に記載されている、との認定。

引用例1の明細書には、「活性炭」は必須である、とのこちらの反論には、解答なし。

納得のいかない審決だったが、それ以上はすすまなかった。

並列の用法の、「と」と「および/または」の解釈論に論点をもっていかれれれば、その辺は、あちらの方がプロなので、勝ち目はない。

明細書と請求項の記載が違っていて、明細書の記載を優先すべき、との点をもっと強調すればよかったのかと思われる。

また、本願では、「活性炭」を用いることによる弊害を強調した。活性炭による弊害は、引用文献1でも存在しているはずで、それを防止するための「手段」が引用文献1中に記載されていたはず。それを、特定して、引用例では、「活性炭」が必須であると強調すればよかったか。

もしくは、引用例の課題を特定して、その課題を解決するための手段として、「活性炭」は、はずすことのできない手段である、との記載もしくは示唆を見つけることができれば、十分に反論できたはず。

請求項の記載範囲のほうが広い場合に、明細書に書いていない点を請求項に規定されている、として開示されている(要は、請求項がサポート要件を満たしていない)場合の、対処法は、考えておかないといけない、との反省材料が残った件である。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 鹿児島方面へのツー  4 | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ひとりごと」カテゴリの最新記事