Ali'i Drive Breeze

The Big Island
ハワイ島で体験した思い出を写真とともに綴る旅日記

ハワイ島 流れる溶岩<Lava Flow>

2007年05月14日 | ボルケーノ地区

どうしても、ハワイ島の流れ出る溶岩を間近で見たくて、
チェーン・オブ・クレーターズ・ロードへ。
(2003年の3月のことです。)

海に向かってクレーターが連なる道をひたすら下って行くと、
AHAHと、PAHOIHOIが道路の左右に広がり、
次々にクレーターが顔をのぞかせます。



やがて、眼下に海が見えてくると、立ち昇る水蒸気が見えてきました。
「あの場所で、溶岩が海に流れ落ちてるんじゃない?」
妻が助手席で指差します。

どれくらい走り続けただろうかと思う頃、ようやく海に近いところまで降りて来ました。
キラウエアの麓の海岸線を走ると、
道路の左側には、見事なまでに一列に並んだ数十台の車が、遥か先まで連なっていました。
溶岩を見に来た人たちの車の列のようです。
「ここから、歩くの?」
車を降りて、その先に向かって歩き出す人たちの姿を見て妻が言います。
「そうじゃないかなぁ?」
とりあえず、私たちも、車列の最後尾に向きを変えて駐車。

午後5時45分。
車を降り、いよいよ、溶岩の流れ出ているところまで歩いていくことに。
軍手と懐中電灯、飲み水を入れたリュックを背負い、歩き始めました。
アスファルト道路を東に向かって歩くため、西日が背中に当たります。



思った以上に距離が長くて、レンジャー・ハウスがある所までたどり着くだけで、
10分近くかかりました。



レンジャーに現在の状況を尋ねると、
3週間前に溶岩の流れが変わったらしく、10日前までは近くに行けなかったそうです。
レンジャー・ハウスも、この場所まで移動してきたとのこと。
でも、今はここから一番近いところを溶岩が流れているので、
見学するにはベストだと教えてくれました。



安全に気をつけて行くように言われ、
逸る気持ちを抑えつつも、ややスピードアップして歩いていくと、
アスファルト道路の上を溶岩が流れ超えたポイントに、ようやく辿りつきました。

 (拡大できます。)

しかし、ここからが本番。
念のため軍手をして、固まった溶岩の上を歩いていきます。
すると、足下が暖かいことに気づきました。
どうやら、表面は固まっていても、内部はまだ熱いようです。
私たちはスニーカーを履いて歩いていましたが、
何故か、この溶岩地帯をビーチサンダルで歩いているアメリカ人がいました。
「オイ、オイ・・・」
彼らのお気楽さには、時々呆れさせられます。

黒々とした岩の上にガイドとして置かれた黄色いマーカーを頼りに、
右に左にと安全な場所を辿って行きます。
まだ、日没前ということもあり、表面が凹凸していても比較的歩きやすく感じました。
それにしても、ただ歩いているだけなのに、どんどん体が温まってきます。

時折、汗を拭いながら、漆黒の溶岩大地の上を15分ほど歩いたでしょうか。
大勢の人たちが、何かを取り囲むように弧を描いて集まっている場所に着きました。



直線距離にすれば、大した距離ではないはずですが、
慎重に歩いて来たため時間がかかりました。

ふと足元に目をやると、岩の割れ目に、バナナの葉に載せたお供え物がありました。



地元の人がPELEに供えた物なのでしょう。
どうやら、ここが目的の場所のようです。
私と妻は、集まっている人垣の隙間を探し、そこから前を見てみると・・・。

 (拡大できます。)

なんと、すぐ目の前で、
赤々とした溶岩が、ゆっくり、ゆっくりと流れ出ています。

しかも、流れの最先端部!!



何十人もの人々が、まるで何かの儀式を見守るかのように息を潜め、
溶岩の周りを取り囲んでいます。



どこか厳かな雰囲気が辺りに満ちていて、
私も、足元から立ち昇る熱気に包まれながら、
流れる汗を拭いもせずに、その光景を見つめていました。

流れ出した赤い溶岩は、空気に触れ冷やされると、
表面が黒く固まっていきます。



しかし、その内側では、
流れを堰き止められた熱い溶岩が圧力を増していくのか、
一旦は冷え固まった表面に亀裂を入れます。
そして、遂には、圧力に屈した表面の殻が押し倒され、
内側から真っ赤な溶岩が勢いよく溢れ出して来るのです。


                (拡大できます。)


溶岩が溢れ出た瞬間、人々の間からは、一斉に感嘆の声が!!
「すごいね・・・。」
隣で妻が囁きます。
よく耳を澄ませば、冷えた溶岩の表面の欠片が、パチパチと弾け飛んでいる音も聞こえてきます。

溢れ出た溶岩の表面は再び冷え固まり、
しばらくすると内側から熱い溶岩がまた溢れ出す。
これを繰り返しながら、
私たちの目の前で黒い岩の大地が形成されていきます。



圧倒されながら、その光景に見惚れていると、
突如、大きな爆発音が響き渡りました!!
「えっ?!何?」
妻が怯えた声で周囲を見回します。
なんと、溶岩に埋もれた木々から発生したメタンガスが、引火して爆発したのです。
幸い、私たちのいるところから離れた場所だったらしく問題はありませんでした。
しかし、この場所が、決して安全とは限らないのだと改めて実感。

流れ続ける溶岩は、刻一刻とその姿を変えていきます。
私は言い尽くせない感動を胸に、
二度と見ることの出来ない景色を目に焼き付けようと、
いつまでも立ち尽くしていました。

 (拡大できます。)

午後6時半。
夕日はKILAUEAの山裾へと消えていきました。
女性のレンジャーが、懐中電灯を持っていない人は引き上げるようにと、
注意を呼びかけています。

暗くなるにつれ、周囲の景色が一変してきました。
流れる溶岩の赤い輝きが、より鮮明になっていきます。
しかも、今まで黒く見えていた所までも赤く輝きだし、その数も増えていきます。
何百メートルも離れた遥か遠くでは、何かが燃えているのが分かります。

気がつけば、
流れる溶岩を取り囲むように見ていた私たちの更に外側を取り囲むように、
無数の赤い輝きが広がっています。
その光景を目にした瞬間、私はこう思いました。
『そうだ!この輝きはPELEの命の輝きなんだ!』と。
 そして、
『私たちの立つこの地は、間違いなく彼女のものなのだ・・・』と。

すっかり暗闇に包まれた溶岩大地は、
とても幻想的な景色を私たちに見せてくれました。




「そろそろ、帰ろうか?」
いつまでも見ていたい気持ちを抑えて、妻を促し帰途に着くことに。
懐中電灯の明かりとマーカーを頼りに、ルートを逆に辿ります。
すると、来るときには平気だと思って歩いていた足元の割れ目さえ、
赤く光っていることに気づきました。
靴底からわずか数十センチ下を、まだ熱い溶岩が流れているようです。
こんな所を歩いていたのかと、改めてビックリ。

自然に対する畏怖の念と、PELEの存在を間近に感じることができた、
生涯忘れることのない思い出のひとつです。



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