カテーテルアブレーション体験記

心房細動のカテーテルアブレーションの体験を綴る

カテーテルアブレーション体験記

2006年11月17日 | Weblog

 発作性心房細動の治療の為、カテーテルアブレーションを受けました。

 カテーテル心筋焼灼術(アブレーション)は、足のつけね(そ径部)と右鎖骨の血管からカテーテル(治療用の細い管)を心臓内に挿入し不整脈の原因となる異常興奮発生部位または、異常興奮伝導路などに高周波通電をおこない頻拍を根治する治療です。

 心房細動の発作の誘因は高血圧、生活習慣、加齢、ストレス等と言われますが、私の場合は発作の時は、必ず心身のストレスがあり、そして必ず朝でした。

   1.発病から経過

平成 8年 6月  動悸、不整脈、心房細動といわれる。点滴で快復。心臓の薬は特
               に処方されず。
平成 9年 9月  発作。点滴で快復。心臓の薬は処方なし。
平成14年9月   5年間異常なかったので忘れていた所、発作。点滴で快復せず電
           気ショックを受け快復。サンリズム、バッファリン、ワソランを2週間
           服用。
平成15年 2月  発作。電気ショック。薬は前回同様。
平成15年 4月       〃      薬はシベノール、ワーファリン服用。
平成15年11月      〃               〃
平成16、17年は多少体調の悪い時もありましたが、小康状態でした。薬はシベノー
ル、ワーファリン。

 平成18年になって動悸が続く日が何回もあり、疲れやすく体調の悪い日が多くなる。
薬は変わらず。5月発作、シベノールで治まる。8月5日、31日発作、シベノールで快復。何時発作が起こるか分からず旅行等出かける予定がたたず。

   2.手術決断

 最初に心房細動と言われた時、カテーテルアブレーションの事は本で知りましたが
私の場合すぐ快復し、又心房細動にはまだあまり実績がないという事だったので、手術は積極的に考えませんでした。

 今年になって体調の悪い日が多く真剣に考えるようになりました。
薬では根治しない、何時発作が起こるか分からない、薬を飲み続けなければならない、副作用もある等。 
 
 3月4日の朝日新聞に「心房細動」治療に研究進むカテーテルアブレーション療法というのが載っていました。(家坂義人先生の紹介でした)その記事を読み、本、ネット等で発作性の時に受けた方が根治率が高いというので手術を受ける事を決断しました。

   3.病院選択

 次に何処でやって頂こうかと考えました。色々調べた結果、土浦協同病院の家坂先生が「拡大肺静脈隔離焼灼法」を開発、症例数、治療成績ともトップクラスとありこちらにお願いしようと思いました。

 9月4日初診、私的なことも話され親しみやすく、信頼できると思いました。
「大変ですよ痛いですよ」とも言われましたが、1週間に8人から10人手術すると聞き皆さんに出来る事が私に出来ない事はないと思い予約、10月11日入院、13日手術と決まりました。手術は1か月待ちだった。

   4.入院

 10月6日よりシベノール、ワーファリンの服用ストップされる。11日の入院まで何かあると不安なので6日より入院させてもらう。
主治医は鵜野起久也先生となり手術の説明を受ける。きわめて少ないながら危険性、合併症がある。リスクとして血管の損傷・出血、気胸、血栓、心筋の損傷等。
合併症は出血・動静脈瘻・静脈炎・穿孔・心筋梗塞・弁膜症・感染等丁寧なお話で不安感はなし。
 
 6日から12日まで、入院して安心したのか動悸も起こらず、心電図も異常なく毎日快適に過ごす。お風呂も毎日入れるのには驚く。
心房細動が起こっている方が手術しやすい(場所が特定できる)と言われ、階段を1階から6階迄上ったり下りたりするも異常なし。
家坂先生に「このまま帰宅しますか」と言われる。(笑)

 術前の検査は増強CT検査(冠動脈)、経食道エコー、心臓超音波検査等。12日そ径部よりカテーテルを挿入しやすくする為と、感染予防の為に下腹部の毛を剃り、入浴。

   5.手術

 13日手術。 浴衣、丁字帯をつける。朝食なし、水分は午前6時より控える。血圧、安定剤の薬を飲み、尿道カテーテルを入れる。午前8時30分手術室へ。
 
 今まで何人もの無事を見ていたし、先生方を信頼していたので不安感は全然なく笑いながら行く(笑いながら行こうと決めていた)。
 
 スタッフは10人位いたでしょうか、一瞬ドッキリ大変な手術だと改めて思った。
右のそ径部、右肩を消毒し、局所麻酔(これが結構痛かった)後、カテーテルを入れる。(錐で揉みこまれる様な感じ)2~3mm程度の太さで、そ径部から3本、肩から1本心臓まで。50℃の標的温度設定、30~35Wのエネルギー拡張設定で20~30秒間通電。
 そのような焼灼を場所を変え繰り返す。(場所を変える時ほっと一息)焼灼時、胸が締め付けられるようでした。痛い時は痛いと思っても楽しい事を考えても同じと思い楽しい事を考えていました。どうしても我慢できず声を上げたのは2回。(痛いとは言うまいと思ったのですが)血圧は230迄上がった。

 随分時間が経ったように思ったが、半分終わりと言われる。左肺静脈に時間がかかり右肺静脈は早く終わる。造影剤を使用の時一瞬気分が悪くなる。

 治療終了後カテーテルを抜き、15~20分圧迫止血。私の場合は静脈麻酔は使用せず(心房細動が持続していなかったので)、意識は殆どはっきりしていました。
術中に電気ショックを行う場合は(心房細動が持続している)、ごく短時間の静脈麻酔が行われるとの事でした。殆ど無意識のうちに終わる人もいるそうです。

 鵜野先生にやって頂き、家坂先生には枕元で声をかけて頂き、心強く思いました。
手術時間は3時間30分。私の場合左側肺静脈が拡張していた為(高血圧、スポーツの関係)、他の人の1.5倍時間がかかったとの事でした。手術は成功裡に終わる。


   6.術後

 午後1時15分病室に戻る。痛み等なく意識もはっきりしていて、一仕事終えたという充実感あり。そ径部から腿にかけ黒あざになる。

 安静にし出血を防ぐ為、食事、排泄はベッド。特に右の足は動かさないよう言われる。重しを午後8時まで乗せられる。

 飲水はすぐ、食事は1時間後から可。朝、昼食を摂ってなかったので2時間後位に摂ったら吐いてしまった。その後ヨーグルトのみで夕食も食べなかったが、空腹感はなかった。14日午前6時安静解除。(一寸大変だったのはここ迄)

 術後3日間は感染予防の為抗生剤の点滴を、1日2回。手術後は心臓の薬は飲まず、ワーファリンのみ3錠飲むことになる。発作時はワソランを処方される。
 術後、微熱が続き37.7~6.7度、炎症反応があり、退院が24日以降になる。25日帰宅。

   7.費用

 10月6日から10月25日迄で625,930円(3割負担、6人部屋。手術料は461,090円)でした。高額医療の対象になるので、後日保険者から返金あり。所得によるが私の場合は差し引き6万円余りだった。

 平成19年4月より高額療養費の還付制度が改正され最初から自己負担分だけを払えばよくなった。(保険者に手続きが必要)

 私の場合は早く入院し、術後微熱が続いたので入院期間が長くなりました。

   8.感想

 半年位考え、自分なりに調べ受けたので、今後どうあれ良かったと満足しています。又、カテーテルを心臓迄入れ治療するなんて、医学の進歩、先生の技術に感心しました。今現在、体調はとても良いです。

 どんな入院生活になるかと思っていましたが、先生はじめ皆さんに親切にして頂き20日間とても快適で、6人部屋でしたが広い部屋でした。

 私は1回で成功、退院となりましたが、日を改めて再手術の人、又2~5回目の人もいました。先生から「何かあったら何時でも連絡して下さい」と言われとても心強く思いました。病む者にとって先生の一言は身に沁みます。

 許可が出ましたら中断している登山、海外のトレッキング、長期の旅行等したいです。物事に対して前向きに考えられる様になりました。
 

                  家坂先生(副院長)

                    鵜野先生(内科部長)