標準治療と最新治療-メリット・デメリット
高血圧性脳症
中嶋匡、成冨博章
1326-7、CLINICAL NEUROSCIENCE 23、2005
1.高血圧性脳症とは
・急激または著明な血圧上昇のため高度な脳浮腫・頭蓋
内圧亢進が起こり、頭痛、悪心、嘔吐、痙攣、意識障
害、視野障害等を呈する重篤な疾患である。
・緊急降圧を要する代表的疾患の一つ。
・稀な病態である関係上、多数例において治療の検討を
行ったという報告は乏しく、また治療に関する新たな
エビデンスが最近加わった事実も見られていない。
2.発生機序 (2説ある)
A.血圧が自動調節能の上限を突破して上昇したために
脳血流量が異常に増加し、脳血管の異常伸展、血液脳
関門障害がおきて、脳浮腫・頭蓋内圧亢進が生ずる。
B.異常な血圧上昇の結果、脳血管の一部に攣縮がおこ
り、脳血流が減少して虚血性脳浮腫が生じる。
・最近は前者を支持するものが多いが後者が完全に否定
されたわけではない。
3.症状・診断
・正常血圧例に本症が発症することは皆無に近い。
・通常、基礎疾患として本態性高血圧、腎疾患、内分泌
疾患、膠原病、妊娠中毒の存在がある。
・臨床症状として、頭痛、悪心、嘔吐はほぼ必発。他に、
意識障害、痙攣ないし視覚障害が出現することが多い。
局所神経症状を伴うことは非常に稀で、運動麻痺など
が生じた場合は脳血管障害をまず疑うべし。
・脳血管障害であるかどうかの確認の為に頭部CTの撮
影が要。出血などがなく、脳浮腫を思わせる所見が後
方領域に両側性に認められたら本症を疑う。その後、
MRI撮影を行う。
4.緊急降圧療法
・異常な血圧上昇に起因するので速やかな降圧が治療の
基本。ただし、脳循環自動調節能障害があるので急激
で過度な降圧は脳虚血をもたらし悪化させる危険性が
ある。
・神経症状と血圧値を監視しながらの降圧速度調節が必
要。
・降圧薬に関しては、従来では短時間作用型のニフェジ
ピンカプセルの使用が軽症例には推奨されていた。が
最近は過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあり用
いられない傾向にある(高血圧治療ガイドライン2004に
明記)。子癇症例では妊婦への安全性の問題からヒドラ
ラジンが好まれてきたが、頭蓋内圧を上昇させるとし
て用いられない傾向にある。一方、ニカルジピン、ジ
ルチアゼムの点滴静注は降圧速度を調節しやすく比較
的安全性が高いために現在では最も好まれている。
5.その他の治療
・高血圧性脳症の原因は高血圧だが、症状は脳浮腫・頭
蓋内圧亢進によるものである。そこで降圧療法と並行
して、抗脳浮腫薬であるグリセオールの点滴静注を行
う。特に新たな治療法は加わっていない。
・痙攣を伴う例では、ジアゼパム(10mg)0.5~1Aの静
注、フェニトイン500mg(生理食塩水100mlに溶解)の
点滴静注等を行う。新たな治療法は見出されていない。
高血圧性脳症
中嶋匡、成冨博章
1326-7、CLINICAL NEUROSCIENCE 23、2005
1.高血圧性脳症とは
・急激または著明な血圧上昇のため高度な脳浮腫・頭蓋
内圧亢進が起こり、頭痛、悪心、嘔吐、痙攣、意識障
害、視野障害等を呈する重篤な疾患である。
・緊急降圧を要する代表的疾患の一つ。
・稀な病態である関係上、多数例において治療の検討を
行ったという報告は乏しく、また治療に関する新たな
エビデンスが最近加わった事実も見られていない。
2.発生機序 (2説ある)
A.血圧が自動調節能の上限を突破して上昇したために
脳血流量が異常に増加し、脳血管の異常伸展、血液脳
関門障害がおきて、脳浮腫・頭蓋内圧亢進が生ずる。
B.異常な血圧上昇の結果、脳血管の一部に攣縮がおこ
り、脳血流が減少して虚血性脳浮腫が生じる。
・最近は前者を支持するものが多いが後者が完全に否定
されたわけではない。
3.症状・診断
・正常血圧例に本症が発症することは皆無に近い。
・通常、基礎疾患として本態性高血圧、腎疾患、内分泌
疾患、膠原病、妊娠中毒の存在がある。
・臨床症状として、頭痛、悪心、嘔吐はほぼ必発。他に、
意識障害、痙攣ないし視覚障害が出現することが多い。
局所神経症状を伴うことは非常に稀で、運動麻痺など
が生じた場合は脳血管障害をまず疑うべし。
・脳血管障害であるかどうかの確認の為に頭部CTの撮
影が要。出血などがなく、脳浮腫を思わせる所見が後
方領域に両側性に認められたら本症を疑う。その後、
MRI撮影を行う。
4.緊急降圧療法
・異常な血圧上昇に起因するので速やかな降圧が治療の
基本。ただし、脳循環自動調節能障害があるので急激
で過度な降圧は脳虚血をもたらし悪化させる危険性が
ある。
・神経症状と血圧値を監視しながらの降圧速度調節が必
要。
・降圧薬に関しては、従来では短時間作用型のニフェジ
ピンカプセルの使用が軽症例には推奨されていた。が
最近は過度の降圧や反射性頻脈をきたすことがあり用
いられない傾向にある(高血圧治療ガイドライン2004に
明記)。子癇症例では妊婦への安全性の問題からヒドラ
ラジンが好まれてきたが、頭蓋内圧を上昇させるとし
て用いられない傾向にある。一方、ニカルジピン、ジ
ルチアゼムの点滴静注は降圧速度を調節しやすく比較
的安全性が高いために現在では最も好まれている。
5.その他の治療
・高血圧性脳症の原因は高血圧だが、症状は脳浮腫・頭
蓋内圧亢進によるものである。そこで降圧療法と並行
して、抗脳浮腫薬であるグリセオールの点滴静注を行
う。特に新たな治療法は加わっていない。
・痙攣を伴う例では、ジアゼパム(10mg)0.5~1Aの静
注、フェニトイン500mg(生理食塩水100mlに溶解)の
点滴静注等を行う。新たな治療法は見出されていない。