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日本の将来---5.展望(5):Gデザイン50の位置づけ

2014-08-10 | 日本の将来
5.展望(4)から続く。

(3)「Gデザイン50」の位置づけ
世の中には大小さまざまなプロジェクトが存在する。それぞれのロジェクトは、最初の構想を具体化しながら完成に向かって進んでいく。過去にこのブログで説明したが、そのプロセスをプロジェクト・ライフ・サイクルという。たとえば構想設計→基本設計→詳細設計→製造→試験→実地導入は、システム開発プロジェクトのライフ・サイクルである。このライフ・サイクルの構想設計や基本設計をプロジェクトの段階(Phase)という。

プロジェクト・ライフ・サイクルでは、最初の構想が大切である。構想の切れ味が悪いと、後工程の基本設計や詳細設計で行き詰まりや手直しが発生し、思うような結果を得られない。分野は違うが、機械や製品開発でも同じことがいえる。

ここで、筆者は「Gデザイン50」をプロジェクト・ライフ・サイクルに当てはめて、中身の検証を試みる。もちろん、「Gデザイン50」はコンピューター・システムではなく、大きな国家プロジェクトであることは承知の上である。

「Gデザイン50」は先月(7月)4日に発表されたばかりで、まだ構想設計の段階である。しかし、構想設計は最も大切な段階であることは先に述べたとおりである。この意味で「Gデザイン50」の構想の論理的な筋道と実現性に大きな関心がある。

さらに、基本設計や詳細設計に該当する「Gデザイン50」の中身にも興味があるが、それは先の話である。そこで、風車に立ち向かうドン・キホーテ的であるが、とりあえず手元の構想設計を頼りに基本設計の要件を検討する予定である。

(4)構想設計(Conceptual Design/概念設計/概要設計などという)
構想設計は、プロジェクトの粗筋(アラスジ)を描く段階である。現状にとらわれない自由な発想が必要だが、ただの夢物語でなく実現性が求められる。また、未来像を裏付けるデータの分析と予測も必要である。この観点で、「Gデザイン50」の内容を筆者なりに次のように整理した。

「Gデザイン50」の構想設計
1)目的
①少子高齢化に対応する国土づくりと国民へのサービス機能の確保
②グローバル化における日本の国際競争力の強化
③巨大災害への対策とインフラの老朽化への対応
④食料・水・エネルギーの確保と地球環境問題への対策

2)目標時期
2050年:推定人口=9,710万人(総務省)

3)戦略
①コンパクト+ネットワーク
 (各種サービスを一定の地域(エリア)に集約→エリアのネットワーク化→高度な都市機能と人口確保)
②交通革命と新情報革命で地域間の距離の制約を排除、知識・情報空間とネットワークの融合
 (多様性に富んだ地域間の人・モノ・情報の対流(交流)を促進、生産性の高い国土構造を実現)
③脱工業生産力モデルを志向した新産業を創出、農林水産業の6次産業化・輸出促進
 (フューチャー・インダストリアル・クラスターの形成、農林水産業への企業ノウハウ導入、農山漁村の経済活性化)
④スーパー・メガリージョンの形成と世界の人・モノ・カネ・情報の取り込み・・・コメント①②参照
 (リニア中央新幹線による東京・名古屋・大阪を互に1時間で結ぶ6,000万人圏の創出)
⑤日本海・太平洋2面活用型国土と圏域間対流の促進
⑥観光立国の実現
⑦災害に強い国土づくりとインフラの効率的なメンテナンス
 (防災・減災、インフラの効率的なメンテナンスと利用状況に応じた統廃合)
⑧国民生活の充実と活性化
 (田舎暮らしの促進、高齢者対策、民間活力と技術力の取込み、国土・地域の担い手づくり)

4)コメント
①スーパー・メガリージョンへの疑問
構想は、リニア中央新幹線により、2050年頃に東京・名古屋・大阪圏の6,000万人のスーパー・メガリージョンを形成するとしている。しかし、現在(2014)も3大都市圏は6,015万人で新幹線、航空機、高速道路でリンクしている。
◇現在の3大都市圏に対して、2050年のスーパー・メガリージョンの優位性に疑問がある。
 2014年=6,015万人高齢者率=21%、
 2050年=6,000万人高齢者率=38%(参考資料)
スーパー・メガリージョンはコンパクトに反して都市集中を促進するだけ?特に、ビジネスから離れていく高齢者を引き付けるだけ?
◇スーパー・メガリージョンにおけるリニア中央新幹線の役割に疑問がある。
リニア中央新幹線の輸送能力(アクセス&待ち時間&走行時間×時間帯)に関するデータが欠落、リニアを地下鉄並みに利用できるだろうか?
②2050年以降の人口減少の影響
◇2050年以降はさらに人口が減少、スーパー・メガリージョンを維持できるだろうか?
◇北東日本と南西日本へのスーパー・メガリージョンの拡大は都市への人口集中&高齢化を加速、一方、他のエリア(コンパクト+ネットワーク)は極端に過疎化(無人化)するおそれがある。
◇リニア中央新幹線と6,000万人規模のスーパー・メガリージョンを中心に据える「Gデザイン50」に一種の危うさを感じる。

参考:2050年から2075年の人口推移
◇2050年の人口=9,710万人(総務省ベースの概数)
    0~14歳=  940万人(10%)
   15~64歳=5,000万人(51%)
    65歳以上=3,770万人(39%)
◇2075年の人口=7,070万人(総務省ベースの概数)
    0~14歳=  650万人(9%)
   15~64歳=3,530万人(50%)
    65歳以上=2,890万人(41%) 前回の表「年齢別人口の変化」参照

③戦略の整理統廃合
「Gデザイン50」概要③&④が示す基本戦略は盛り沢山、言い換えれば多様かつ玉石混交である。
12の戦略と53のサブ戦略を整理統廃合すれば、「Gデザイン50」は分かりやすくなる。同時に、他省庁の長期戦略と調整すれば、国家計画として「Gデザイン50」の完成度がさらに向上すると期待する。

次回に続く。

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