木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

議会発議のポイ捨て防止条例施行で見えてきた二元代表制の課題

2012-03-02 20:16:45 | 地方自治
 こんばんは、木村ながとです。

 3月2日の環境費の審議に際し、環境推進費のところで、私は議会発議で誕生した「江戸川区歩行喫煙及びポイ捨て防止等に関する条例」をめぐる行政府の取り組みの問題をフィルターとし、タバコをめぐる環境問題という範疇のみならず、地方自治と二元代表制の課題という少し大所高所の問題について議論しました。以下、その部分のやりとりの抄録です。(記憶をたどっていますので、議事録とは多少の言葉の齟齬があるかもしれません。)

木村
 議会発議によるポイ捨て防止条例をめぐる取り組みについてお尋ねします。地方自治と二元代表制のあり方という、少し大きな話にも言及いたします。

 昨年は震災の影響で「環境フェア」は中止になりましたが、「環境をよくする運動」は、開催が6月から12月になったものの、例年のように文化センターで開かれました。その再上映されたビデオの中でもポイ捨て防止条例に関するPRがあったことは好ましく思っています。また、「環境をよくする運動」とは別に、駅前広場での「歩きたばこ・ポイ捨て防止PR活動」も区全体で10回以上行われており、地道な取り組みを評価しています。

 さて、議会発議のポイ捨て防止条例が施行されました。それを受けて、年始には、区内のたばこ組合、日本たばこ産業の協力を得、全議員が条例施行告知のキャンペーンを区内の各駅頭にて行いました。その際、ベストや旗を区の環境部からお借りしました。また、駅のシールや看板の「マナー」とある文言に「条例」というシールを張りかえるといった対応もしてもらいました。

 先ほど、同僚議員から「『広報えどがわ』でポイ捨て防止条例について周知することはしてもらえないのか」という質問がありました。それに対して、「検討します」という答えがありました。具体的に伺いたいと思いますが、その「検討します」とは、「掲載する方向できちんと検討する」という意味なのか、それともそうではないのか、どういうことなのでしょう。

環境推進課長
 (困惑した表情で)条例周知に関する状況を十二分に見極めながら、検討してまいりたいと考えている。

木村
 課長としては答えにいであろうことを承知の上で、あえてお尋ねしました。分かりにくい答えでしたが、課長にこの質問を追及するのをよしましょう。むしろ、区長にお尋ねしたほうがよいのでしょう。

 区長の率直な考えを伺いたいと思います。私の考えも改めて述べます。

 ポイ捨て防止条例については、まだ「広報えどがわ」では取り上げられていません。議会発議でせっかくできたポイ捨て防止条例ではありますが、そうした広報のあり方などをみると、議会と執行部との間の微妙な温度差を感じざるを得ません。問題はおそらくポイ捨て防止をめぐる方法論の違い、つまり<条例ではなく「環境をよくする運動」で取り組むべきという区長の考え>と<条例化を図って取り組むべきという議会の考え>という相違、といった単純なものばかりではなく、もっと根本的な、地方自治における二元代表制の陥穽の課題があるのだと思います。

 つまり、議会がまとまってしまえば議決権を持たぬゆえ拒否権も発動できない首長と、一方で、政策条例はできたけれどそもそも予算編成権も執行権も持っていないため職員配置もできない議会という、地方自治法の隙間から生じる相互の不満がその底流にはあるのだと思います。

 憲法(93条)では二元代表制と規定しながら、自治法上では首長に極端に権限を集中させる一方で(149条関係)、議会に限定的な条例制定権を認めながら予算編成権は付えない(96条関係)といった、時代の趨勢に全く対応しきれていない地方自治法に根本的な問題があります。

 地方議員の政策法務だの条例制定権だのと楽観的な言葉が地方議会関係者の間でもてはやされていますが、私個人はとても悲観的に考えていて、乱暴な言い方をすれば、現行の地方自治法の下では、議会にも「付与」されているという条例制定権なるものは機能しない権限だと考えています。

 話をポイ捨て条例に戻します。区民にとっては首長提案の条例であっても議会提案の条例であっても、成立してしまえば同じ効力を持つ条例であることにかわりはありません。議会も行政も関係なく、オール江戸川で取り組まねばならない課題です。今後、議会がますます積極的になっていけば、第二、第三の議会発議の条例案が提出され、成立しないとは限りません。

 地方自治法の問題点についても述べましたが、区長は議会発議によるポイ捨て条例をめぐる取り組みについてどのように考えているのか、率直なお考えを聞かせてください。

区長
 確かに、言及されたような自治法上の課題があるのだと思う。議会と行政のあり方も変わりつつあると思うし、これまで想定されていなかったことが求められようとしているのだと思う。

 ポイ捨ての問題など人のモラルを問う課題については、私は、区としてこれまで長年にわたり続けてきた「環境をよくする運動」で取り組むことがよりふさわしいと考えている。確かに、そこに議会との相違はある。しかし、ポイ捨て条例が成立した以上、それを否定するものではない。区として必要な協力をするつもりでいる。

木村
 自治法上の課題については、ここで追及しても仕方ありませんので、この程度に留めます。
 大切なのは、ポイ捨て防止条例という一つの条例が成立した以上、議会も行政もお互いに協力して、施策遂行していかなければならない、ということです。以上で終わります。




江戸川区議会議員 木村ながと
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