金沢ミステリ倶楽部

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泣ける本 7

2016年07月01日 06時34分00秒 | 泣ける本
泣ける本、他作家の作品も色々あるのですが、まず島田荘司特集で!こんなにもYの涙を搾り取った作家は他にいません。まず、今夏、中国で公開の映画『夏天十九?的肖像』PVをご覧ください。

ね? ね? ね? 最高でしょ?原作『夏、19歳の肖像』を愛して止まないYは、このPVだけで誇張抜きに鼻腔の奥が潤み、目頭に熱いものが湧いてします。逆輸入的に国内公開されることを祈願して、本題の「泣ける島田荘司作品ベスト10(各カテゴリー出版順)」をご紹介します。

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【御手洗シリーズ短篇】「数字錠」(『御手洗潔の挨拶』収録)探偵の優しさに涙。 非常にファンの多い、御手洗シリーズのキー作品の一つ。探偵の欺瞞や密室トリックに難があるが、もう一つのトリックは秀逸。

「シェフィールドの奇跡」「追憶のカシュガル」(両作品とも『御手洗潔と進々堂珈琲 追憶のカシュガル』収録)上記短篇集収録作品はどれも泣かせてくれる極上の青春小説(ほぼノンミステリ)だが、特に上記二作が出色。「シェフィールドの奇跡」で描かれる〈不器用な努力家〉、「追憶のカシュガル」で描かれる〈歴史の犠牲者〉は、どちらも島田作品頻出の重要なテーマ。

【御手洗シリーズ長篇】

『異邦の騎士』不器用な主人公に涙。数ある島田作品の中でも最もファンの多い作品。名言、名シーン、泣かせどころ満載。上記お勧め短篇で御手洗に愛着を覚えた後で読むと、感動がひとしお。

『ロシア幽霊軍艦事件』自己犠牲を厭わない無上の献身に涙。「湖に一晩にして出現し消失した軍艦」という幻想的な謎が、ロマノフ王朝最後の皇女・アナスタシア物語に発展。〈トリックの無茶をドラマに転化〉するメソッドは島田の十八番だがが、これが〈歴史の犠牲者〉を描くあたり、面目躍如の最たる作品。比較的コンパクトな作品ながら描かれるスケールは大きく、その大きさの分だけ感動も大きい。

『最後の一球』男同士の友情に涙。ミステリ色は希薄ながら、とにかく中盤で描かれる野球パート(野球のルールに疎くても問題なく愉しめる)に涙また涙。島田による〈不器用な努力家〉モチーフの一つの到達点。本作以上の青春スポーツ小説を不遜にして私は知らない。

【その他島田荘司作品】

『夏、19歳の肖像』青春のかがやきに涙。「病室の窓から覗く隣家の女性に一目惚れした僕は、ある夜、彼女が”何か”を埋めているのを目撃してしまう。彼女を救うべく、共に逃避行をはじめた僕らの背後に、何者かの手が迫る……」というサスペンス色濃厚な青春ミステリ。若さ故の憧憬、純愛、情熱、衝動、自己犠牲、無知、無力、痛み……そういったもののすべてが本作にはある。青春のひとときに「愛するもののためになら自分なんかどうなってもいい」と一瞬でも思ったことのある貴方なら、永遠のマスターピースになる作品。

『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』ロマンに涙。「ロンドンに留学した夏目漱石がホームズと一緒に、東洋趣味に彩られた密室殺人に挑む」というパスティーシュ作品だが、とにかく抱腹絶倒。本作以上に笑える小説を、私は他に知らない。ミステリとしての完成度も高いが、最後の最後で名シーンを挿入し、ロマンを語るのだから狡い。笑って泣ける極上のエンタメ作品。

『サテンのマーメイド』クライマックスに涙。ハードボイルド作品ながら、骨格は「250マイル離れた場所で同じ男が轢き殺される」という本格ミステリ。しかしクライマックスに至ってハードボイルドで描かれた意味がわかる辺り、周到な一作。

『灰の迷宮』

クライマックスに涙。 吉敷竹史シリーズ。『星籠の海』同様「一見地味な個々の事件が思いも寄らないかたちで一つに繋がる」が、その繋がり方が本当にとんでもない。そんじょそこらの連作短編の比ではない。さんざん驚かされて放心しているところに泣かせるクライマックスを配するあたり、これまた周到。

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まだ他にも……

『占星術殺人事件』のエピローグ、『斜め屋敷の犯罪』の動機、「紫電改研究保存会」(『御手洗潔の挨拶』収録)で騙られるロマン、『奇想、天を動かす』の主要人物が抱く懐郷、「ある騎士の物語」(『御手洗潔のダンス』収録)の犯人の行動、「暗闇団子」(『踊る手なが猿』収録)のラブストーリー、『都市のトパーズ』の動物との交流、「さらば遠い輝き」(『御手洗潔のメロディ』収録)と「里美上京」(『最後のディナー』収録)でのファンサービス的追憶(注:左記二篇は『異邦の騎士』読了後に読むこと)、『涙流れるままに』でのシリーズ大団円(注:『北の夕鶴2/3の殺人』→『羽衣伝説の記憶』→本作の順に読むこと)、「最後のディナー」(『最後のディナー』収録)の老人の人生の顛末、「溺れる人魚」(『溺れる人魚』収録)の転落人生と献身、等、事ある毎に、読者の喜怒哀楽プラス驚きを揺さぶってくるのが、島田荘司作品の魅力です。とにかく問答無用に面白いので、既読のかたもこの機会に再読を、未読のかたは僕を信じて、是非、島田荘司作品を手に取っていただきたいところです。