長寿幸せ企業への「変化と継続」2022-25

第5回 緊急資金繰り対策③

第5回

一般的には、次の優先順位で支払うのが原則にかなっています(会社の事情によって異なる場合もあります)。

 <優先度1> 手形

会社にとって、手形は最も大切な信用です。手形が2回落ちなければ、金融機関との取引が停止され、事実上の倒産となってしまいます。一部の流通業やサービス業などで2回不渡りで現金仕入れ、現金販売で事業を継続できる場合がありますが、相当の覚悟が必要です。

 <優先度2> 従業員給与

経営者の報酬は遅延しても、従業員の給与は遅延しないようにしてください。従業員の給与に遅延が発生してしまうと、社内の士気が落ちてしまいます。そうすれば、売上も確実に下がり、会社の状態はますます悪くなります。どうしても遅延しなければならないケースについては後述します。

 <優先度3> 仕入れに関する支払い

資金繰りが難しくなるとすぐ、仕入先や外注先などへの支払いを遅延する会社が多く見受けられます。おそらく、厳しい苦情を言われないからでしょう。しかし、会社の信用が大きく崩れる恐れがあります。信用をなくすと当然、以後の仕入れや外注が難しくなり、場合によっては前金でしか仕入れられなくなる可能性もあります。そうすれば、資金繰りは今以上に悪化します。相手先との信頼関係や取引状態で慎重に判断する必要があります。

・一定期間に限って、掛け率を相手が有利になるように変更してもらい、その間支払期日を延ばしてもらう。

・今回に限って、支払期日をずらしてもらう(ただし、【日繰り資金繰り表】で検討して約束の期日は必ず守る)

 <優先度4> 経費に関する支払い

売上に関わらない経費であることが条件です。

 <優先度5> 借入金の金利

元金返済よりも金利支払いを優先します。

 <優先度6> 借入金の元金返済

  支払い優先順序の中で最も大きなポイントとなるのは、「借入金の元金返済は一番最後」ということです。多くの経営者が間違ってしまうのはこの点です。なぜなら、「元金を返済しないと、金融機関から取引を停止されてしまうのでは?」という不安を抱いてしまうからです。

ただし、絶対に無断で返済をストップしないで必ず事前に、金融機関へ相談することが必要です。金融機関が条件なしでストップしてくれることはありません。いつ、いくら返済が可能かがわかる資金繰り表や事業計画書、再建計画書の提出を当然求められます。

また、租税や社会保険など以前は滞納して交渉することもしてきましたが、現在では対応が非常に厳しく、早い段階で差し押さえするなど滞納者に対する対応も変わってきていますし、会社分割でつくった第二会社に追及されることもあります。国民のお金という意味からもお勧め出来ません。

それでも不足して、個人のお金を投入したり、借入したりしなければならない場合は、【日繰り資金繰り表】でそれらを返済する日を特定できてからなければなりません。それでなければ、またもとの木阿弥になりかねません。

基本的な対策方法は以上ですが、【緊急資金繰り対策】はあくまで一時しのぎの対策ということを忘れないでください。

経営者が毎月どころか毎日資金繰りに悩まされることから、一時的に開放され、【経営再建(改善)プログラム】などに集中できるようにすることが最大の目的なのです。

経営危機に瀕している会社が1月20日の資金繰りを解消できたからといって、「咽喉もと過ぎれば・・・」になれば倒産への「負の連鎖」がまた進むことになります。

後々述べていきますが、私が着手させていただいた段階で、個人のお金を会社につぎ込むことを許可するのは、この段階だけです。個人のお金を会社につぎ込んで資金繰りを解消するのは、経営の根本的な対策を何もせずに当面の問題を解決させただけなので、またすぐに資金ショートがやってきます。

個人のお金を会社に入れることも、返済のための借入やリスケ(ジュール)、無計画な会社分割なども同様に、会社の経営力そのものが変わっていませんので、この段階で本腰を入れて【経営再建(改善)プログラム】などに着手しなければ、早晩経営危機が忍び寄ってくるのです。 

「知識」は行動することにより「知恵」に変わります。

たとえば、【日繰り資金繰り表】作成していくことによって副作用としていろいろな「知恵」を生み出してくれます。

数ヶ月先の入金を入力するには、売り上げ予算を作成していないと入力出来ないことがわかりますし、支払い金額を請求書から転記しているようでは1ヶ月先の表さえ完成できないことがすぐわかります。それを解消するために、まず、納品書を受け取ったときに、金額を記入し伝票を起こします。そうすれば、【日繰り資金繰り表】に入力するのは簡単です。さらに、仕入れなどの原価勘定は売り上げ予算を作成できれば、そこから作成でき、【日繰り資金繰り表】に予算を入力できます。

【経営再建(改善)プログラム】で危機から脱し、優良企業と呼ばれるようになった会社は、自社で翌月10日までに月次決算が出来ることが当たり前のようになっています。会計王などすばらしい会計ソフトが出来た今日、早いところは翌日に月次決算速報を見ることが出来ます。これら正しい【日繰り資金繰り表】を作成するための努力は自然と月次決算が早く出る経営の仕組みになって行きます。

このような繰り返しで、会社の経営力がついていってはじめて、二度と資金繰りに悩まないだけではなく、経営危機から脱し、正常企業、優良企業になることが出来るのです。

とくに、元金ストップを要請した金融機関から要求される事業計画書作成は先送りしていた本質的な経営再建(改善)へのスタートとなります。

まさに、「衰退の極みに新しい胎動が生まれる(歎異抄)」です。

 

次回からは、ブログ「中小・零細企業が『幸せ企業』になり、またそうであり続けるための経営の『原理原則 』」の中のカテゴリーテーマ「その『知識』と『知恵』」の

2、何処へ行きたいのか?使命(ミッション)と展望(ビジョン)

です。

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