月乃和熊(ツキノワグマ)のささやき

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零式艦上戦闘機(68) 自動消火装置

2014-11-22 12:00:00 | 航空機・船舶(軍艦・機)
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零式艦上戦闘機(68) 自動消火装置   

日華事変の劈頭、昭和12年から防弾装置の装備が議論されていながら、日本海軍は防弾装置を装備して飛行機の重量が増加するくらいなら、爆弾を1個でも多く搭載しほうが良いという思想から、防弾設備の研究が遅れていた。

太平洋戦争開戦後に鹵獲した空の要塞B-17を調べてみると、燃料タンクには、人造ゴムや天然ゴムが7層にも張り合わされ、被弾してもゴムが溶け出して穴を塞ぐようになっていた。

当時の日本には、アメリカのような人造ゴムを創り出す技術がない。
仮に天然ゴムなどで九六式陸攻の燃料タンクを覆うと、300kgも重量が増加してしまう。

B-17のエンジンは、1200馬力×4
一式陸攻のエンジンは、1400馬力×2
最大速度はB-17が510km/hに対して、一式陸攻は430Km/h
爆弾の搭載量に至ってはB-17は5440kg、一式陸攻はわずかに1000kgで、B-17は一式陸攻の5.5倍もの搭載力を誇る。

しかもB-17は、重い防弾設備が施されているにもかかわらず、性能にこれだけの違いがあった。

三菱の本庄季郎技師は、防弾設備の重量まで考慮に入れて、4発のエンジンを搭載した大型の攻撃機の開発を提案したが、新型の攻撃機を早期に制式化し、大量に前線に送り出したい海軍からは拒否されてしまった。

一式陸攻では、インテグラルタンクが採用されて、主翼内に燃料タンクが設けられたが、防弾装置が施されていなかったので、被弾するとすぐに火災を起こすことから、アメリカ軍からワンショット・ライターという不名誉なあだ名もつけられた。

そこで、海軍では自動消火装置の研究がすすめられ、その研究に携わったのは、空技廠 発動機部の中田金市技師(のち技術少佐)だ。

自動消火装置の重量はおよそ60kg。
火災が発生すると約0.1秒で炭酸ガス(消火剤)がタンク内に充満し、酸素を遮断して消火する。

実験では、7.7ミリ焼夷弾や13ミリ炸裂弾が、防弾装備の無いタンクに被弾しても瞬時に消火され、その消化率は95%に達した。

零戦には昭和19年(1944)に52型乙に初めて搭載されたのでありました。

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (MOTOMMZ)
2014-11-22 15:52:21
月乃和熊さん日本軍の開発は常に人は使い捨ての様な気がします私は
それに反して欧米では逆の様な気がします、今になって見聞きするから何でしょうが違い過ぎますねー
結果的に負けてしまったわけですが、当時の偉いさん達には読めなかったのでしょうね

今は懐かしく当時の機体を見せて頂くだけなので勝手な事が言えます
それにしても馬力の差も在り過ぎなのですねー、戦う気力も私には無くなりそうです
良くそれでも戦ったものですね、日本軍の兵士たちの勇敢さに敬礼です

勝手な事ばかり言って申し訳ありませんでした、
返信する
Unknown (RW)
2014-11-22 16:54:18
これはもう立派な零式艦上戦闘機の大図鑑ですね!出版されて見てはいかがでしょうか!
返信する
結局・・・ (月乃和熊(ツキノワグマ))
2014-11-22 18:54:19
MOTOMMZさん
資源のない日本は、陸海軍で技術を共有することがなく、
技術力の乏しい日本は、名人芸的な職人技でカバーしていたから、
結局量産化も大変だったんですね・・・
まさしく負のスパイラルってところです。


返信する
RW様 (月乃和熊(ツキノワグマ))
2014-11-22 18:58:04
お褒めいただき、ありがとうございます。
とっても嬉しいです!

でも、直接取材したわけでもなく、
ん十冊の文献から拾っただけなので、、、、

それに、自費出版すると130万円くらいかかりますし・・・



返信する
Unknown (はじめまして)
2015-08-20 23:32:10
旧軍の航空機の消火装置を調べているのですが、消化率が95%、という記述に関する資料が探しても見つからないのですが、そういった資料をお持ちでしょうか?もしそうであれば教えていただきたいのですが。。。
よろしくお願いします、
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