ぶろぐのおけいこ

ぶろぐ初心者は書き込んでみたり、消してみたり…と書いて19年目に入りました。今でも一番の読者は私です。

稲佐の浜  神仏の通ひ路(2)

2022-11-04 18:23:40 | カメラのこと

 温泉津~仁摩間は山陰自動車道を通り、一旦9号線を走って再び山陰自動車道で大田市から多岐まで走ると、出雲大社もぐっと近くなります。仁摩という地名は高校生の時から知っています。ラジオで琴ヶ浜という鳴き砂の話題があったのです。砂が鳴くということを初めて高校生は知りました。番組では鳴き音は古代人が文明にまみれた現代を嘆いているのだという話題もあり、この年になっても記憶しています。行ってみたいなぁ、でも島根県は遠いよなと思って40年以上。その鳴き砂の浜の横を走っているわけです(琴ヶ浜には寄れずに通過。なんとっ!)。

 山陰自動車道は、海から少し離れた山の上を走っている感じ。紀勢自動車道と雰囲気が似ていて、人里離れたところを橋とトンネルとで結んでいるといえばいいでしょうか。紀勢自動車道は津波の被害があった時も人や物資を運べるように、海から離れた高いところに道路を作るのだとどこかに書かれてありましたが、こちら山陰でも同じ狙いかもしれません。そんな近代的な高速道路が山の上にできる。一方、昔ながらの山陰本線は単線のまま、昭和の時代から進化しているようには見えません。温泉津駅も小さな小さな駅です。若い頃から、温泉に津と書いて「ゆのつ」と読むのだと、行ったこともないのに誰かに教わった私としては、このこじんまりとした駅は少々寂しい。時刻表を繰ってみると上下とも普通列車が10本ずつ、特急も3本ずつが停車します。特急を含めても日に26本しか列車のやって来ない温泉津には、一方で無料で通行できる高速道路がある。クルマでやってきた私が言えることではありませんが、列車を利用する人が減るのは、どう考えても当然のことのように思えます。

 次の狙いは出雲市大社町の稲佐の浜。海に沈む夕日を見てやろうと向かいました。40年以上前のことですが、初めて大社にやってきた10代の私。宿で聞いた話はこうです。

 10月。神無月、出雲でいうところの神有月には、全国の神々が出雲大社で会議を行う。神々は稲佐の浜から上陸する。迎える側の大国主命は神々を迎えるために、拝殿から拝む私たちのほうを向かずに(南に向いて座らず)、稲佐の浜のある西を向いて座しておられる。よって良縁を願う参拝者はお賽銭を投げたら、すぐに大国主に対面する西側へ回って願い事を申し上げるのだ。

 嘘のような本当のような、やっぱり嘘のような、40年以上前に一度聞いただけの話を今でも覚えています(ゆうべの晩御飯も思い出せないのに)。

 

 2009年にやってきたとき、この稲佐の浜で朝の歯磨きをした。それ以来ですから13年ぶりですか。十分な下調べをしない私ですから当然でしょうが、この稲佐の浜の夕日は結構な人気スポットになっているらしいということ。工事中の駐車場になんとか停められはしたものの、この人の多さにはびっくり。おそらく大社付近の宿泊者や日帰りの人たちも結構やってくる。宍道湖の夕日に比べれば少ないとは思われるけれど。

 砂浜の上には弁天島と呼ばれる大きな岩がひとつあります。島と名乗っているのに島になっていないではないかと思うのですが、もともとは沖に浮かぶ島だったそうな。砂浜の成長により、歩いて「島」まで行けるようになったそうです。また推測だけれど、出雲大社お参りのひとつとして弁天島に手を合わせに来る人と、夕日を見に来た人とが混じっているらしいこと。左手には三瓶山がよく見えます。神話の中では、国引きのとき杭(アンカーですな)に使ったのが三瓶山と大山だったそうですから、杭に使えるほどの特徴的な山でなければならないはずです。確かに付近の山々とは違うオーラがある。

 その夕日スポット。夕日を撮りたいんでしょうね。波打ち際にアクションカメラを設置している人がいる。ドローンを飛ばす人が(一人)いる。弁天島を入れて沈む夕日を撮ろうとしたら、大きなリュックを背負った人が三脚に据えたカメラをもって前に出る。みなさん大人ですから、口々に文句は言いながらも我慢していらっしゃいますが、血の気の多い人がいたら大きなもめ事になるのではないかと心配しました。一方で、信仰のためとわかるグループが素足で水際を弁天島まで歩いてきて、拝んでいる。不思議な日の入りのシーンでした。

 太陽が海に沈んでしまうと一気に人が帰っていきますが、ここからの空の染まり具合が楽しみなところ。どんな空を見せてもらえるでしょう。この日の月は月齢がおよそ5。夕方の空を引き締めるアイテムになっています。

 さぁ、私も次のポイントに向かいましょう。稲佐の浜から国道431号を東へ東へ。宍道湖の北側の道路を松江に向かいます。もう日はとっぷり暮れていますから暗闇の中を走るイメージです。周囲の景色もあまり見えません。この国道は宍道湖の南側を走る国道9号線よりも風景が出雲らしいように思えて好きです。しかし何度も走っているのに、毎度平田市でどこを走っているのかわからなくなってしまいます。平田市街の道路が複雑なのでしょうか。

 さて、稲佐の浜から宍道湖の北側、中海の北側を通って美保神社に向かうコースは神仏の通ひ路とされています。ここだけではなく、鳥取県、島根県には神仏の通ひ路と呼ばれる道路がいくつもあります。道路を走っていると、案内が出されているのですが、ここで疑問がふたつ。いつから、こんなネーミングがされているのか。もうひとつは、神仏の通ひ路とは、誰が通う道なのかということ。この道路を行き来するのは、参拝者(=人間)?、神さんや仏さん?私の頭では、『千と千尋の神隠し』のカオナシが道路を行き来している姿が浮かんできます。

 国土交通省の関係で、日本風景街道が作られていて、全国であちらこちらの街道がリストアップされています。現在93のルートが登録されているそうです。そのうち出雲地方関連では、神仏の通ひ路というルートと水辺ルート(現名称)とが、湖水街道推進会議(現名称。組織は平成17 年6 月発足)により定められたようです。したがって、カオナシが、出雲大社や大山寺を目指して往来するというものではなくて、神社仏閣への参拝に善男善女が通行する街道というわけです。「神仏への通ひ路」と1文字入れておいてくれたら悩まずにすんだのにね。

 今夜は、中海の北側、道の駅本庄で休ませてもらいます。夜も赤いクルマの中で過ごすのです。松江市の李白酒造が醸した「やまたのおろち」を少し飲んで、おやすみなさい。

(つづく)


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