書名 本当の学力をつける本
著者 陰山英男
文藝春秋社
昭和12年生まれの私の母は兵庫県の朝来町立山口小学校の卒業である。子どもの頃から耳が悪かったこと、またその通院のせいで算数にわからないことが多く、分数が苦手だといまだにいう。割り算の九九もよく知らないという(私たちはそんなものが算数の時間にあったことすらよく知らない)。
今、その朝来町立山口小学校の実践が全国から脚光を浴びている。「読み書き計算の反復練習で学力は驚異的に伸びる」というのである。書き計算の徹底は一生の財産になるというのである。大変な売れ行きらしい。大きな書店では山積みになっている。「本当の学力をつける本」は山口小学校の実践報告集ともいえる。著者は山口小学校の教諭である。
第一章の「学校でできること」のなかに山口小学校の数々の実践例が報告されているが、それよりも第二章の「家庭でできること」が面白い。私自身が子どもの親として反省させられることもあるし、本校の生徒を思う時、彼ら彼女らの家庭での生活はどうなのだろうと気持ちが動く。例えば、保護者と面談する時、また生徒を指導する時のネタとしても重宝するはずである。
第三章は「新学習指導要領でできること」として、安直に「理解が大切」とする新指導要領の姿勢を否定する。そして第四章の「社会でできること」と続く。
教員の立場として、また親の立場として二度読める本である。
母の小学校だった時代に、この実践があれば母の人生は今とは違うものになっていただろうか、そして母の子である、私自身の人生も今とは違うものになっていただろうかと思う。
2002年7月