短歌つれづれ

日常詠、時事詠などを掲載しています。

弥生

2013-03-09 13:41:22 | Weblog
列島の峰を分かちて降雪の様ありありと見する映像
純白の「雪を憎悪」と北国に進学せし生徒らも定年を過ぐ
長引ける風邪に倦みたるカレンダーのアポイント目立つウイルス如
「水甕」の百周年の記年号風邪に臥せれば吾に重たし
同志らの力作並ぶ記念誌を机上に置きて風邪と対峙す
吾病めば二桁気温の春を聞く励まされおり二月尽日
一わたりリレーされたるウイルスの敗走見えて笑顔の並ぶ
薬漬けに水晶体を入れ替えるこれから先の世を見るために「夫白内障手術」
一日に十五回なる点眼を処方されたる黴菌とう敵に

如月

2013-02-08 18:55:31 | Weblog
一国の命運を負う宰相の演説を聴く期待と不安
均等な幸せ願う民なれど至難と思う何時の時代も
地の果てに又冬の海に死せるを聞けば哀れ男なる性
聖戦など有り得ぬことを信じいる中東の輩の集団憎し
教壇に「よくぞ男に生まれける」と宣しし恩師の面影の顕つ
四面楚歌国のめぐりの闖入に小市民なる吾らの憂鬱
日脚のびし睦月尽日カレンダーを勢いめくれば菜の花絵画
庭隅に芍薬水仙屯して天を指しおり気合見せいる
立春の雨しとどなり生きものの静かな歓び野辺に聴こゆる
   

睦月

2013-01-12 15:08:53 | Weblog
男等も満艦飾に着飾りて機械仕掛けか奇妙に踊る 「紅白歌合戦」
恋歌も禁句とされて戦場に征きて還らぬ世代を顕たす
草木も静かに眠る小春日の濃尾平野を遥かに見放く
敵失の如も勝利の政権党期待はずれを怖れつつ待つ
難破船に似たる心地の列島に元旦の陽は爽やかに照る
信長の庭跡を掘る原発の活断層を掘る今を生きる者たち
特養の開設ありと見学会わがゆく駅か寒く去りたり
あっさりと逝ってしまった友思う生きいるうちは煩悩まみれ
孤を描き穏しき風にひと葉づつ順を定めず散りゆく紅葉

水甕短歌 「記年号のため欠詠」

2012-12-18 11:47:29 | Weblog
能衣装 絹の風情も繊細に描きし女性におくる賞賛
本堂にあまたの大作展示され能の世界に酔いし秋の日
空の青 秋は哀しも齢重ね葬の知らせにうろたえいたり

霜月)

2012-11-07 15:21:31 | Weblog
岡本太郎「芸術は爆発だ」と精悍な遺影見す個展会場
ピカソにも似たる構図の抽象画に思考迷路にさまよいいたり
「太陽の塔」の縮尺置かれたりタイムトンネル彼の日彼のとき
大作の太郎の意気に気おされて共感なきまま館を出でぬ
芸術に思いの総てぶつけしか人様々に一世を生きし
夏草も静かに憩う刈り跡の広く静もり小春日今日は
今日昨日一昨日も似たる日が大股にゆくこの年の秋
故郷の祭囃子の音色よし振り向く彼方に父母の面影
穏やかに海は凪ぎおりそはそれで防潮堤に津波の談義

神無月

2012-10-04 14:49:40 | Weblog
彼岸花すこし遅れて咲き満てり訃報いくたりファックスは吐く
耕作放棄地あまた増すなり列島に難問ばかり押し寄せ止まず
戦場に三人の兄の還らぬを嘆きし夫も米寿に近し
旅プラン心に体が追いつかぬ一夜の後に「ボツ」と決めたり
年若き証券マンが先行きを力説なすを耳を過ぎゆく
ハイブリット車巷に増せばスタンドが潰れゆくらし今日の情報
一歳児の「スマホ」操る真似仕草八十年のスパンのずれは
冴え渡る月光を浴び涼風に猛暑のほてり溶けてゆくなり
庭隅にクロッカスの白凛と咲く元気を貰い天を仰げり

長月

2012-09-06 14:39:03 | Weblog
雪に死に陽に死ぬもあり列島にいま燃え盛る太陽を受く
為すべきは涼しきうちにと決めし故炒る如き昼部屋に籠れり
老い二人相次ぎ逝けり荒草の繁る哀しさ冥土はいかが
尖閣に竹島北方騒がしき敗戦国とや侮られいむか
情報は遍く届き周辺の島々の危機われらの憂鬱
「愚か者」と怒りも疼く外つ国の人等さまざまの思いに群れつ
ストーブを焚く日々に倦み花待ちし季のサイクル狂うことなし
鈴虫のか細き音色聞きとめる葉月尽日真夜のうつつに
母さんと呼ばれいし日の三河湾子らの歓声海馬のメモリー

葉月

2012-08-07 10:25:46 | Weblog
友逝きてひととせを経しその庭に荒草こもり悟るものあり
一本の草さえ許さぬ友の庭そのいちにんの背負いしひと世
花々をかたみに分かち愉しみし日々の在りしが眼交にあり
列島は隈なく晴れて太陽と対峙に怯む土用丑の日
とつくにの五輪に燃える若き等の気概眩しく眺めるばかり
この地球悲惨憂鬱あまた見し今やこの眼に平和の祭典
悲喜交々僅差を競うアスリートのエスカレートする技に瞠目
建築の槌音響く猛暑の真昼怯むことなき男等のむれ
絶滅の命もあらんこの鄙に蝉の合唱衰えることなし        

文月

2012-07-06 13:21:14 | Weblog
月じまい歌をまとめる焦りあり天地身めぐり検索はじむ
台風の海辺の宿ゆ潮騒を危ぶみつ聞くも旅情と言わんや
焼く如き盛夏に至るつかの間の梅雨静かな刻を惜しめる
花に寄る祭りあれこれとマンネリに醒めし心も行きて愉しき
足萎えて車上に気づく円形のタイヤ四本に転がり行くを
津波予測に悩める街を映しいる「知らぬが仏」かいにしえびとは
「べにばな」と名の艶やかさに種蒔きて初夏の花群れその姿好し
「貧すれば鈍す」と言えりこの国の為政を嘆きいちにん憎し
特養がこの鄙に建つと説明会嬉しくもあり哀しくもあり

水無月

2012-06-05 21:02:56 | Weblog
白紙なる脳細胞に書き入れる幼なに先ずは日本の言葉
幼子の無垢の瞳に見つめられ従う他なし老躯は怯む
ふわふわと事無く生きし吾がひと世浦島太郎の如きふるさと
吾ら皆片道切符を携えて今日を頑張り夢に紛るる
若きより心かよわす友が逝き吾が先行きの細道決まる
青天に緑極まり風さやか皐月尽日うっとりひと日
宰相が「乾坤一擲」まっしぐら何処へいくのか吾ら小市民
性の渦に呑みこまれたるおみななれ哀れ終焉草むらのなか
同期会終了を告ぐる老い夫を駅に迎えて無言のふたり