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ダメせんの日常 BLOG

思い出したかのように前に進んでは戻るBLOG

停滞者。動く!第五話 「そのブタに名前はない」

2013-03-18 14:39:31 | 停滞者。動く!
 一言呟きながら体液と自分の血液が混ざり合った部分をまだ骨がむき出しの右手で抉り取り捨てる。
ベチャ、何とも言えない音が地面に響いた時、教室の廊下には人間の血と化物の体液が混ざり合った液体で
染みが出来上がるがその染みも一瞬して、ドロドロと地面を溶かし下の階へと垂れていった。

「溶解液みたいな体液をしている。ますます、気持ち悪いな、あんた」

体液が下に垂れていく様を眺めながら、再生は続く

「お前も大層なものだぞ。地球人にも再生能力があるのだな」

 噴水のように体液が吹き出している腕をひと振り
飛び散った体液が付近に植えられていた木々や草に降れ木々たちが変色
していく。あの体液はどうやら、かなり危険な汚染物のようだ。

 汚染物を体内で生産しそれを通わせている辺りが宇宙人
本当に人間の企画ではない未知の生命体

「本来、地球人には再生能力はねぇよ。俺が特別だ。それに「も」か。
さっさと再生したらどうだ?これ以上、汚染するんじゃねぇ」

「ふん、俺の体液で汚染とは地球の生物や造形物は脆いな」

「デリケートなんだよ。アンタたちと違ってね。」

鼻息を鳴らしながら切断された手首から上が生えて来る。体液に塗れでヌルッとした光沢を纏いながら

「気持ち悪いことで・・・・では、再生して申し訳ないんだが」

 その光景を見ながら真琴は飛び出していた校舎の外へ砕かれ抉られた
教室だった場所から化物目掛けて

「被害が広がるんでなぁ!!!!!!!!」

蹴り飛ばす。勢い良く飛び出したものの普通ならば失速するだろうが
失速することなくその巨躯は宙を舞ったのだ。

「飛べない豚はただの豚ってか」

 蹴りを見舞いしながら自身に対する皮肉を言う。化物はというと反応できなかったのかわざと反応しなかったのか蹴りをその見に受けその巨体を
後方へと飛ばされていた。この学校の見取り的に真琴がいる教室の向かいは
校庭である。そこまで化物は砂埃を巻き起こし、花壇や木々を薙ぎ倒しながら校庭中央へ

教室にただ立ち尽くしている二人は今の光景に絶句していた。一人は今起きている光景が自分には理解できず
夢幻ではあってほしいという願望を願いながらもそのまだ言えぬ傷口から垂れる血液の暖かさと痛みで
現実だということを改めて自覚し、もう一人はただ空中に立っている少女と今飛び出していった同級生を
眺める。彼は地球人のはずだ

「さて、さっさと片付けようか。本来なら汚い体液をぶちまけて臓物を抉り出してやるのが
覚醒暴走した主人公っぽいけども・・・・どうにも、あんたの体液は有害のようだから」

息を吸い込む、肉体は完全に再生されビリビリに破れた制服も買った当初のように新品同様に

「出来るだけ被害を出さないようにさっさと終わらす」

「笑わせるなよ。地球人が」

短い息継ぎと言葉は同時に交差する。砂埃から一つの鉄塊にも腕が・・・・獲物を狙う
腕からは人間のような手と二の腕にあたる部分からだろうか、無数の突起が現れ
包み込むようにして伸びる。

「流石に・・・・もう逃げねぇよ」

 その攻撃の意図は至極簡単なことなのだ逃げる隙間を無くす。ただでさえ、太い体がすり抜ける余地も
最初から存在していないわけだが、相手は戦いなれた異星人、どのような状況でも最善の一手で
獲物を仕留めるのだろうが

「ふぅ、いくぞ」

その突起や腕が体を突き刺す手前、新品の卸たてのようになった制服が再び、無残に破れるより速く

「な」

化物は違和感を感じた自分の視界がズレたのだ。地球人を粉々にする己の腕が相手を捉えるより
その瞬間、左右の視界が数cmの誤差を智能基幹へと訴えた

「にがお・こ・・」

言葉が出ない。この星の言語はそれほど発音が難しいわけでも化物の骨格的問題で発音できないわけでも

「ってい」

化物が認識したのは己の体が半分、綺麗に切り裂かれているという事実

「良く斬れる」

辛うじて残っている意識で標的を視認しようとするがもはや、視界が覚束無い。可笑しい・・・・俺の
細胞たちがこんな単純な現象に対して再生機能を生命機能の保護を取らなないなど

「死ぬってのはさっき死んで来た身だからわかるが、随分とあっさりなもんだ。愉しいとか
悲しいとかそんな感情なんて何もない。ただ、闇に呑み込まれる」

「る」

「アンタは生き返らせないが、ゆっくり眠ってくれ」

左右離れていく視界が獲物を・・・いや、獲物だった者を捉えた。手から何か液体状のモノを発生させながら

視界が完全に無くなる。無くなる一瞬、ほんのりと温かいモノを感じた
あの「温かさ」は一体なんだったのだろうか。ただ、その意識が闇に落ちていくのだった

化物の命が消える時、そっと彼は化物の顔まで宙を蹴ってまだ光あるある瞳らしき部分に膜を下ろしたのだ
そこに膜のような機能があることも知らずに自然に身体動いたと言ってもいい。

「あぁ。地球人で初宇宙人を殺した人間になっちま」

 意識が再び遠のいていく、さっき覚醒したばかりなのに身体が脳の命令を受け付けず
再び冷たく光のない世界に誘おうとしている「こ」思わず、口から漏れた最後の一文字
 二度目になる生命の終わりを締めくくったのは情けない単語につながる頭の一文字とどこか柔らかく
そして温かい何かだった。
 ふっと、目を覚ますと医療水の交換が終わったのか少女がそっと手を抜いているところだった。
そんな姿をぼーっと見ながら、我に返った真琴が口にした第一声は

「何が二度は名乗らないだよ。まだ一度も聞いてないじゃないか
それどころか一言も発してない。」

そんな皮肉を聞いた少女は、そうだったか?っと言う表情を浮かべている
また、強引に記憶旅行に誘ったとは少女とは別に

「そして、貴方の名前もまだ聞いてないです」

 命の恩人である彼女の本当の名前もまだ知らない。この反応に少女たちは二人して顔を見合わせ
かなり最近に命を狙って襲ってきた側・命を狙われた側の何とも不可思議な関係にある
少女たちは二人して笑いながら、

「「完治したらね」」

その返答に不満の意を示す顔を作ろうとしたがどこか、そういうわけにもいかず笑ってしまった

大切なことは思い出したのだ。少女の名前ではなく、自分がどうしてこうして生きていられるのか
何をしてしまったのか。そんな感情を覗かせまいとしたら笑うしかなった

「あぁ、これからどうなるんだろう」

 季節は夏、学生ならば最高に待ち遠しい夏休みの入口間近
どうやらただの夏にはなりそうにない。

停滞者。動く! 第四話 「化けの皮」

2013-03-18 14:14:57 | 停滞者。動く!
砕けた教室から見えるそのモノの正体は一部でしかなかった。

彼女の目の前に広がっていた青空や惨劇の現場に光を指していた

空間には紫色の壁が突如として出現したのだから、その紫色の物体が

 あの下品な声を発し、・・・・これまた下品なクラスメイトの
一人を葬り去った。彼はクラスのいらないモノで一緒の空気を吸うのも嫌だった。なぜ、私の高校生活に
一年も過ごしたという記憶がなければならなかったのかそう考えている
うちにいつしかどうでもよくなった。

 現にこうして、私は彼の死に対して何の感情も持ち合わせてはいない。
(あぁ、かわいそう)
そんな気分でもなければ、そんな感情を述べるのも疎ましい。
 所詮、そんな存在の人間が消えた。しかし、彼は一体、何をしたんだろうか
女性を・・・・宇宙人を守るために命を散らした。

 それは決して、褒められるようなことでもないように思えた
彼の口癖は「他人なんてどうでもいい」
そんな人間が今さら人助けをして美談にめいた死を飾るのか
私は感じている。
 決して、人を助けた悲劇の英雄だとしても
彼はそれに賞賛されるほどの人間でもなければ、ましてやクラスの
人間がそのように思うことはないということを彼らは感想を聞かれれば
素直にこういうに違いない豚がいなくなった。
 もしくは、テレビで取材された時のように「気持ち悪い奴だった」とか「普段は大人しい奴」
などの有り触れた答えかもしれない。彼の死は人間の死としてすら扱われない。
 死んだ当人はそう思いながら散った。

「しかし、俺はこいつのおかげで儲けられたぜ」

天空から声が響く、その声色はどこかにやけている用に聞こえた。

「まさか、お前も俺のモノになるとはなぁ・・・・そこにいる
女とお前・・クライアントには悪いが楽しませてもらうぜ」

 下品な笑い声だ。殺伐とした教室と悲鳴をあげている生徒たちの声を
かき消すかのようにその声だけが当たりに響く
彼を殺したことに対して、なんの後悔や躊躇もない。

 それは突如、出現した壁に取って仕事であり、当然のことである。
彼からしてみれば田舎星である地球で頼まれた単なる小遣い稼ぎ
程度の仕事、殺しても罪にもならない。

 そんな仕事なのだ。だが、そんな退屈な仕事に突如として
飾るモノが現れた。それは言うまでもない女である。
しかも、極上の女と来れば男として・・・いや、雄としての
本能が高ぶり、つまらない仕事も夜を迎えるまでの時間潰しへと変わる。



・・・・・・俺のことは誰も考えていないのか
衝撃を体に受け暗闇に消えた真琴の意識は、そう考えていた。
人間は死ぬと魂だけの存在となるというがこのが肉体と言う外装が
なくなっただけで周りの言葉がダイレクトに伝わってくる。

 それは声ではなく、心そのもの・・・・心でモノを感じろというが
死んだという実感よりも先に自分という存在のちっぽけさに
気がつかされる。俺のためには誰も泣いてくれない。

 そんな感情が死してなおも襲ってくるのか・・・・どうしてだ。
死ねば何も考えなくてもいい、自分の存在がなくなるからと思っていた。
一時期は自殺も考えたこともある
それほど俺にとっては現実というのは辛く、そして息苦しい場所だった。

 世界に留まることを続けていたのは
俺が死んだら悲しむ人がいてくれると信じていたからだ。
それは家族であり、友人であり・・・・赤の他人でもいい誰でも良かった。
自分の存在を少しでも認めてくれる人がいればそれで
・・・・気持ちが俺の生きる支えにいつしかなっていた

 俺の合図で逃げたアイツも無事ならそれでいい・・・だが、アイツの考えている
ことは手に取るようにわかった。俺の死よりも俺のしようとしてことを継続する。
あいつは泣きはしない。

「ふざけるなよ。」

 裕也はそう口にしながら教室へと駆け込んだ。そして、彼女の前に立つ
目の前には抉れた床と血だけがある。

「ふざけるよ。ふざけるんじゃねぇ!!!」

 激昂した叫び声、その声に気がついたのか壁が動く
少し距離を取り、覗き込むように教室の中に視線をやる。
この化け物からすれば学校はよくできたミニチュアハウスと変わらない。
教室を覗き込むとそこには別の人間とターゲットの女がいた。

「あぁ?さっさ、いなくなれ下等生物が・・・・」

 裕也の前には大きな赤い眼球が三つ・・・まっすぐに此方を見ていた
それが奴の顔の片面だということに気がつくのにそう時間は
掛らなかった・・・・いや、それが正面なのか、片面なのかを
理解するのを考えるのを止めたのだ。別に考えてもしょうがない
考える余裕も俺には残っていなかった。真琴が死んだのだ

 何のために?俺の後ろにいるこの人を助けるためにだ。
別にアイツじゃなくてもよかった。俺がもったいぶらないで
教室に入ってこの人に話しかけていれば状況は
違ったかもしれない・・・・だが、そうなると被害はもっと
広がっていただろう。・・・アイツが嫌われてるから
被害が少なかった・・・あいつが好かれていれば大災害だと
ふざけるなよ。
冷静な判断は下さない。自分にそして、この状況に


・・・あぁ、珍しい。裕也が怒ってるよ。
もはや他人事・・・・・・いや・・・・そうではない
やり残したことが押し寄せてそう感じてしまっているだけなんだ。
・・俺は俺は何もしてない
死ぬのが嫌だ。この状況が死んだというのであれば
それをどうにかしたい・・どうにかできなくても
なんとかしたいのだ・・・人間死ぬ気になれば何でもできるというが
死んだら何にもできないのか?
 そんな概念でいいのか?・・・・俺は宇宙人がいることに喜びも
覚えたさ・・・あぁ、また世界が変わるだってワクワクした。
また?何がまたなんだ? 高校に通うという甘い幻想が世界というものに

「夢を見た時期・・・・糞、糞、糞」

 俺は結局何にもしてないし、しようともしなかった。
さっきのアレはなんだ?結局、誰を助けた?自分自身を助けたかったのか
しかし、その自問自答には何の意味さえも与えられない。

 何故ならもうこの世に「春日井 真琴」という人物が存在しないからである。
つまり、この場の彼がどう願ったところで今、繰り広げられている光景に対して
何の干渉も起こすことはできないことを意味していた。確かにその光景を見ている真琴という
存在とその世界から消え去った真琴という人物

 これはどういうことなのだろうか?考えろ、考えるんだ。
真琴の頭はフル回転していた。もう死んだという
仮定が可笑しいじゃないか?確かに霊という存在になったとしたら
もうあそこに干渉することはできない。それは何故か?
向こうの世界に恨みは有ったとしてもそれを晴らそうとか
誰かに取り憑き呪い殺そうという概念がわかないからだ。
 そして、もしそれを今この場で仮にやろうとするのであれば、あの裕也たち
を襲おうとしている得体の知れない化け物に対してだ。

・・・:・得体の知れないというのは間違いか、宇宙人だったな
この時、真琴の頭の中には一つの疑問が浮かんだ。
そうこの場にこうして確かな意識のある自分という存在は
一体、何に分類されるのだろうか?
 もう死んでいるから人類というカテゴリーからは外された。それは
人類として生まれて来た時点から死ぬまでの人間としての括りに他ならない。
だが、今のこの状況は確かに存在する。
宇宙人が存在したということは霊体も存在することを許されるのではないか
いや・・・・そういうことではない。

 真琴の考えは終着点へと向かい始める。そう辿り着かなければならない場所に
・・・・ということは、今まで俺の知っている概念は
なくなったと考えてもいいじゃないか?

 この世にあり得ないことは確かに存在した。それは死人は生き返らないという
こと、それはおそらく万物全てのモノに対する共通点であるはずだが
 どうして死人は生き返らないのか?という考えはまだ
したことがなかった。そうもし仮に・・・そう、もし仮に
生き返った実例があるとするのであれば
行き返った時点で死んだ自分とは別のモノとしてこの世に戻ることになるから
ではないだろうか?

 死んだというのは生き返る前の自分で生き返った後の自分は
・・・・そこに辿り着いた時、感じるはずのない
胸の鼓動の高鳴りを感じた。さっきの化け物・・宇宙人の一撃で
木端微塵になり教室のあちこちに飛散したはずなのに
そして、何より自分が死んでいるはずなのだ。胸の鼓動を感じる

「「辿り着いたか。さぁ、ネガエ・・・いや、渇望しろ!!!
お前は何がしたい。何がしたいんだ」」」

この声は何だ?そんな疑問はどうでもいい

「俺は・・・・・・あいつらを守りたい!!!!!」

 そう願った瞬間だった。それは嘘や建前ということにすぐ気がついた。
そして・・・これでは声の主への返答には不十分であることを
認識したのだ。何故なら声の主は渇望しろと言ったのだ。
そう俺が本当にしたいのは
今、襲われようとしている二人を助けたいんじゃない。
自分をあんな目で見た奴らへの復讐がしたいのだ。

(まず初めに俺をこんな姿にした宇宙人を殺したい!!!!!)

 そう願うのが一番いいに決まっている。
こんなヒーローの話ではないのだから自分の欲望に素直になればいい
だが、そうすることができないのが自分であるということは
自分が一番理解していた。自分も傷つくのも嫌いだが
他人が傷つくのはもっと嫌いだ。建前でも偽善でもない
俺は結局、答えが出る前だった。その寸前で助け舟が出されたのだ。
そうその助け舟を出した声は・・・

「「最後まで煮え切らない答えだな。だが、それが正解だ。」」

俺に呟いた。この声の主は誰なのだろうかという疑問を
この答えを聞いた時に解消することができる。

・・・もともと、答えや正解などはこの問い掛けには存在しない
存在したといしてどれが答えであり、正解なのかという
元のベースがないからである。

生きて行く中で生まれた個性
そう個性を答えや正解で測ることはできないはずなのだ
最終的に導き出すモノを知っているのはその同一の個性を保有している
者にしかわかるわけはないのだ。そして、同一の個性を自分以外に

持ち合わせている者がいるだろうか?

 その答えは簡単である。いるわけがないのだそう居るとすればそれは自分自身
つまり、この声の主は俺だ。

「「お前が本当に渇望したモノは俺が頂く。お前はせいぜい
建前と偽善で生きるんだな」」

その言葉を聞くと更に鼓動が激しく・・・そして体中が熱くなる。

「「さぁ、俺のステージだ。」」

 最後まで素直になれなくて他力本願な俺だけど、この瞬間はさらけ出そう
普段から抱えている鬱憤を残虐性を誰にも見せたことのない本心を
他人によく思われようと塗り固めた嘘をはぎ取ろう。

停滞者。動く! 第三話 「悲鳴と衝撃」

2013-03-18 00:12:04 | 停滞者。動く!
またも少女だった。しかし、普通では考えられない光景である。
ここは校舎の3階、重機で上から吊るすには不都合な場所であり
そこまでして、こんなことをする意味がない。しかし、目の前に広がっているのだ。
少女と俺に向かって来るガラスの破片たちこんな現象にはお目にかかることのない・・・・
というか、お目にはかかれないであろうこの状況、辿り着く先は生物としての終わりつまり死が迫ってきている。
 
 真琴の頭には今までの想い出が走り抜けていた。
これが走馬燈というやつか・・・・嬉しくもない。苦い出来事ばかり
俺は結局、こんな苦い想い出を頭に浮かべながら死ぬのだろうか
自分が生まれてから今に至るまで苦痛と嫌悪の日々だった。
友人と過ごした日々ですら霞んで見えるぐらい嫌なことが多かった。
人間、辛いことよりも楽しいことの方を良く覚えているというが、それは違うのではないかと思う。

 何故なら、今こうして俺が見ている走馬燈はろくでもないただ辛い
記憶だけ・・・どんな記憶だと聞かれても、それを周りが聞きたいとは思わないだろう。
 真琴は走馬燈を見ながら異変に気がつくことになる。
ガラスの破片が飛んでくるのを遅く感じるのだ。極限まで高められた
感覚がなせる技なのだろうか?
 よく、事故をする瞬間はスローモーションのように見えると言うが
これもその現象なのだろうか?

 その疑問への解答を求めるよりも自分の生存を1%でも高めるために
左腕を心臓へ右腕を額へと当てる。そして、顎を引き身体を曲げる。
ボクシングでいうピーカプースタイルに似た形になる。

 この構えに至りきる前にすでにガラスのいくつかは真琴の腕を捉え
無駄についた肉を抉り、そこから鮮やかな血が飛び散ろうとしていた。
「世界が遅い。」声にならぬ声が真琴の口から洩れていた。

 しかし、それは錯覚・・・脳がアドレナリンを大量に分泌し、痛みを
感じさえないように気を高ぶらせる一種の痛み止に近い行為、真琴は
何に興奮しているのだろうか。襲いかかる死に興奮を覚えたのだろうか
 それとも自分が先ほどまでしゃべっていた少女に、はたまた
窓の外で浮いている少女にだろうか。
興奮が思考を加速させ痛みがろくでもない考えを巡らせながら近寄ってくる。

 体中から力が抜ける。遅れてきたガラスの破片が真琴の全身へと
突き刺さる。いくつかの破片が扉の方に向かう巻き込まれた生徒たちの悲鳴が学校中に響き渡った。
その悲鳴の後に窓ガラスが割れる音と衝撃波が真琴の身体を揺らす。
自分たちがこんなことに巻き込まれるなど想像もしていなかった者たちの

 真琴の耳にはどうしてかこの悲鳴が心地よく聞こえた。
何故だろうか。体中から血の気が抜けていく中で誰の悲鳴だということが
耳には聞き取ることができたのだ。そして、その中に友人・・・
 友人と呼べる人間の声が混じっていないことに安堵した。
後ろに振り向く力は残されていないのでもし後ろから友人の悲鳴が聞こえたのならば
助けに行くことができないことを後悔しそうだ。

 もっとも急所を庇った腕は肉が見え、筋肉が切断され、どうしてこの構えた
ままでいられるか不思議なぐらいの損傷だ。それに後から襲ってきた
衝撃波に吹き飛ばされた机と椅子が両足に当たり、足元から鈍い音が聞こえた。
骨が折れた。・・だが、それが今更どうした。
身体に無数の破片を受け、足もこの有り様・・・逃げることもできない。
 自分が死に向かっていくのが実感できる。
脳から痛みの信号が神経を伝って駆け巡る前にいくつかの部位に
感覚がないことも感じ取ることができた。神経もいくつか切れている。
 
 幸いしたのは自分がまとっている贅肉に対する評価だ。
ガラスが脂肪に阻まれ、自分の体を貫通する一歩手前のところで
食いとめているということ、初めてかもしれないがこれには感謝
しなければならい。後ろには自分が蹴飛ばした彼女がいる。
 それに悲鳴の主たちがいるからだ。俺の体で被害が抑えられたのであれば
安いものではないか。

脳から発せられた信号が体の隅々まで辿り着いた。辿り着かなくてもいい
ものを真琴は声にならない悲鳴を唇が噛み切れるのではないか
という残された力を使い噛み堪えた。

 舌に血の味を感じた。出血した腕から舌たる血が真琴の口元へと
垂れてきたからだ。鉄の味、こんなものを好んで飲むのは
吸血鬼とその分身とされている蝙蝠ぐらいなモノではないだろうか。

 意識が薄れゆくなか、倒れることもせずに真琴は窓の外に視線を送る。
いや、もうこの事しかこの体にできることはなかったのだ。
窓の外に立つ少女もまた彼女と同じように表情を一つも変えず、こちらを見ている。

 その姿は死神に似ていた。死神に似ていると言っても実際に会った
ことがないので少女が死神ではないだろうか。
できればこんな死神にはこういう形以外で会いたかった。

 彼女とは別の美しさを持つ少女、顔立ちは洗礼され全てが完璧と呼べる
レベルの代物である。彼女との違いを述べるのであれば
褐色の肌と血を彷彿とさせるようなその瞳、そして短く纏められた白銀の髪

「今日は美人と良く会う日で、こうじゃなきゃ、だい」

 死にそうな人間としては些か、余裕のある発言を真琴は口にしていた
馬鹿は死んでも治らないと言うがどうやらこの
口は死んでも治りそうにもないようだ・・・・視界が掠れ

「こりゃありがてぇ、まさか賭けが成立するとはなぁ」

 どこか汚らしく下品な声が聞こえた。そう聞こえたのだ。
校舎の天井が崩れる。真琴のいる教室の当たりまでその崩落は進み
空間を粉砕した。崩れる音を感じぬままに真琴の視界と意識は暗闇へと放り込まれた。

「人間にしてはいい反応だ。起点もいい。だが、所詮は人間・・・
おっと、アイツを人間と呼ぶには些か太り過ぎてるがな」

 一人の少女が震えている。この現状を理解できていない真琴のクラスメイト
名前なんて知らないし、語ることもない。自分の周りに広がっている
光景が彼女の脳を支配し、ただ恐怖に身を震わせている。

 周りにはさっきまで真琴を馬鹿にしていた友人が血まみれになりながら
転がっている。痛い、痛いとただ泣きわめいている。
 他も同じようなものだった。ガラスの破片に当たった者は
ただ泣き叫び、当たらなかった者は今、自分の置かれている状況に
呆然と立ちすくんでいる。そして窓の向こうに見えるそれに恐怖するしかない。

彼らの前に広がっている光景、教室の天井が抉れ
轟音とともに真琴のいた場所が砕けて、目出度く天井と地面が
御対面を果たすことになる。砕けた部分には大量の血肉と臓物
生で見るのは初めてかもしれない脳髄が真琴がそこにいたという証明していた。

 少女の目にはそんなのはどうでも良かった。彼の死など
どうでもいいといことでもあるし、他人の死など自分の死に繋がる
モノに対する恐怖心がそれを遥かに凌駕していた。

 死神の隣に更なる異形の化け物・・・いや、狩人が現れたのだ。
さっきまで何もなかった空間、もう何が合ったかも証明することができない。

そこに広がっているモノは

停滞者。動け! 第二話 「キック」

2013-03-17 17:19:10 | 停滞者。動く!
「落ち着いたか?」

 目覚めてから二日過ぎた。ベットの上で相変わらず水に包まれている。
この水は「超浸透医療水(ヴァイス)」、宇宙では常識だがココ「地球」では知る者はいない
俺が病院に搬送されて来たときにはもう
地球の医療LVではどうすることのできないに状態だったらしいが
どうも、俺の処置をしたのは彼女とそしてもう一人の少女だったらしい
この俺の体を包む液体が地球医療の限界値以上の細胞を活性化させ
自然知う力を高めた上で投与される薬品の効果を高める。

勿論、この包んでいる水の中にもわけのわからない薬品が
溶けているわけでそれが俺の体を再生させたわけだ。

おかげで目覚めた当初は目を動かすのがやっとだった俺は手や首が動く
ほどまでになっている。だが、依然として生々しい傷後が残っており

 傷口が周りには聞こえない音を立てて塞がっていくのを間の当たりすると
自分が本当に地球人だということを忘れてしまいそうだ。
 そのせいでこの病院内の看護師たちが噂話をしているのを耳にした。
彼女達が人間の原型を辛うじてしている俺の命の恩人というのだろうか
しかしながら、もう一人の少女は

「あぁ、お前をその様にしたのも私ではあるな」

考えこんでいる俺の心を読んでいたかのようなタイミングでその声の主は現れた。

「はは、君は何がしたかったのかはさほど問題ではないと思うけど」

ようやく動かせるようになった首を声がする方へと傾ける
視線に飛び込んできたのは自分の母とその少女

いや、少女という言葉はいまいち正しいとは言えない

 おそらく歳は同じぐらいだろうがその少女からしてみたら一体、どれほどの差が
あるのだろうか。宇宙人である彼女のなんたるか
そもそも、そのようなものが存在しているのかもわかるはずがない。

 ただ一見しただけでは彼女が宇宙人だとは分からないだろう
見た目は俺と変わらない少女、彼女と違ってコレと言った外見的特徴はないが

「いや、外見的特徴がないってのも変な話か」

自分の考えていることを声を漏らした。どうせ、病室にいるのは
母親と彼女だけ母の顔には疑問の色が出ているようだけれど彼女には
通じているらしい。

「なぁ、少女とか彼女じゃぁどうも味気ないんだが君の名前教えてほしいな」

話が噛み合っていない空間で通じているかの用に話す。この光景は異質なのかもしれない。
そこに存在するのは我々がコミュニケーションとは認識できないのかもしれない。

少女は怪訝そうな顔をしながら

「私は二度は名乗らない」

 冷たくそう突き放された。母親もいつの間にかいなくなり
病室には彼女と俺、そして気まずい空気だけが存在した。
痺れを切らしたのはいうまでもなく

「二度ということは一度は聞いているのか?」

その問いに少女は頷きながら俺を包む医療水に手をかざす。
手を中心に小刻に波紋を立て始めた。その波紋が傷口をズキズキと刺激する。
 その痛みに身を悶えながらも俺は必死に記憶を掘り下げようとするが
手をかざして近寄ってくる整った異星の顔が記憶を呼び戻すのを妨げる。
言うまでも・・・というか、言う機会を逸していたがこの少女も凄い美貌の持ち主
で俺はといえばオタクで肥満な地球人、顔が赤い。
 だって、未だかつてここまで異性に接近されたことが合っただろうか否ない。
彼女の名前とそしてやはり、まだ手から離れないこの生々しい感覚

「まだしばらく、交換には時間がかかる。それに貴様は感度が良すぎるな」

 そう呟くと彼女の手が額へと近づいてきた。彼女の手が入ると医療水の色が
侵入してきた異物を警戒するかのように色を変えていく無色透明だった部分が
紅く変化しながらそれが何なのかを確かめるように全体が対流する。
対流で生じたかすかな感触ですら俺を悶えさせるには十分なほどの痛みを与えた。
 やがて、彼女の手が額へとたどり着いた。冷たくそしてどこか
人とは違う感触・・・・よく考えればこんなことをされてたことがない
宇宙人がいることを事実をテレビで告げられた時よりも衝撃的な出来事だ。

「思い出してくるんだな・・・・・」

その呟きが聞こえた時には俺の意識は再び深い記憶の世界へと旅立っていた。

時がゆっくりとだが確実に巻き戻り意識が無くなった時間へと誘う。

 自分が何をするべきか教室に入って数秒、そればかりを考えていた。
彼女に見とれていた時間の方が思考する時間よりも多いかもしれないが
この温度差が激しい空間に自分が留まっているのが不思議で仕方がない。
今すぐにでも逃げ出したい気持ちが俺の額からじんわりと嫌な脂汗を浮かび上がらせる
これは断じて、日差しのせいではない。

 外では彼女に対する差別視する視線や言動
そして、集団が行う一連の動作が凍てつく寒さをもたらす
皮膚の痛点を刺激するような刺す痛みならまだそれは構わない。
 皮膚を舐め回り、相手を甚振るかのように這いずり回り
ジワジワとそして確実に蝕んでいくあの感覚放っている者からすれば到底理解できないであろう
あの居心地の悪さそれに比べて教室の中は中で少しでも自分の存在を見失うと
一瞬で凍えてしまうようだ。この行動たちも俺の脂汗を加速させる原因である。
 冷たさは度を通り過ぎると熱さよりも質が悪い。痛みの度合いはどちらも変わらないが
痛みが溶けてなくなろうとする所を固めてしまう。

彼女の存在がそうさせるのか、彼女から出ている独特の雰囲気に
飲み込まれてしまったのか。どちらにしろ
居心地は良くはないが良くないからそれで我慢する・・・・その考え方はもうやめた。

 宇宙人との対面、そのスケールの大きさを考えたら今まで自分が
我慢していた全てがどうでも良くなる。
あの暗くどこにも行き場のないあの負の感情、いつか爆発してしまいそうで
誰かを傷つけそうで
自分が傷つけられるのならそれはいい・・・・いや、本当は良くないが
知り合いがやられるよりはマシそう考えていれば自分の気が晴れた。耐えられた。

だが、もうその気持ちが自身の中で唸り声を上げながら別の感情に喰われていく
目の前に自分の理解を超えた存在がいる。それだけでワクワクしてくる
 何かしらの期待感もしかしたら、彼女なら自分を受け入れてくれるかもしれないという甘い感情
他人に善がりで自分では改善しないというこの怠惰な性格、それが自分でもわかっているのに
言ってもキリがない。言って治るなら俺はこんな体をしていない。

この自分勝手な考えは押し付けてはいけないというのも理解している。
感情の整理がつくまでにまた数秒、時間を浪費した。

 もう俺の腹は決まっている。「次に繋げる」
物語のページを進める。自分が立ち止まっていたページを一枚捲るのだ。
あぁ、自分のためというわけではない。これも一人善がりの押し付けだが
会話が生まれれば何かが変わるかもしれない
それにちょっとでも話をしていれば、きっとあいつが来る。

扉の近くこちらの様子を見守っている裕也ならこの空気をどうにかしてくれるだろう
俺は道化で彼は主人公、そんな位置づけがしっくりくる。
 この物語の主人公はアイツに違いないから

(アイツなら女受けもいいし、話やすそうだし)

 主人公ならきっちり救ってくれる。あいつはそういうやつだ。
俺の勝手なイメージだけど、幾度となくそれに助けられた。
結局、それにまた頼ることになるだろうけど
あぁ、俺って卑怯な人間だ。
そう思いながら自分の口から出たのは何とも間抜けな言葉だった

「名前なんでしたっけ?」

 自分の全身から感覚が全部なくなったかのような時間が訪れたのは
言うまでもなく、彼女がこちらを見て冷たい目で見ている。
我ながら言っておきながらなんだがどうすればいい。

 だがその答えも自ずと自分の口から滑り落ちるわけで・・・・・
口は災いの元というけれど、その災いの大きさもさまざまであって

「ははは、しょうがないじゃないですか。偽名は知ってても本名は
知りませんからね。それに・・・記憶を錯乱する電波まで流されてたら
偽名も思い出せませんよ」

 またなんて間抜けな発言をしているのだろうか。電波?
自分が言っている発言の方がよほど電波であるに違いない
だが、どうもその電波は突破口になりえたようだ。
下手な鉄砲も数を撃てば当たると言うが
今回の場合、下手というよりも明後日の方向を狙った結果が
どうにも功をそうしたようだ。

 女性の反応というのは「嫌い」とかそういう反応しか、わからないが
人間というモノに関してこの彼女が今、見せようとする反応がなんなのか
それは俺にでも理解することができる。おそらく、それは動揺だろう

 このような考えになるのはどうしてだろうか。相手に言葉を投げた後に
浮かぶのは対外そういうことだ。相手の行動を予想するのか楽しいから?
いや、そういうわけではないだろう。そういうことを考えるのが好きだから
それもきっと違う気がする。こんなことにはまったからか?

 答えは案外、簡単なのかもしれない。それしかすることがなかったから
特に趣味もなかった。これが運動の趣味でもあればこんな身体を
してはいないだろう。それに一つでも集中できる趣味でもあれば
おそらく、まともな性格にでもなっていたのかもしれない。

 何事も中途半端にそんなことだから今もろくな趣味を一つとして持てた
試しがない。だが、それもどうやら少しは役に立ちそうである。
だいたい、余計なことを中途半端に知っているとその分野に関して専門的な知識を持っている人に手痛い
しっぺ返しか皮肉を言われるものだが今回はどうだろうか。

 浅くしか知らない者が深く踏み込んだ報いというのもは
かなり痛いものになるはず何せ、話の前提があくまで同じ地球人という前提での話であり
今回は例外中の例外でもあるし、それに俺はドキドキしている。

いつもならこのような思いつきな発言をした後は後悔するのだ自分の傲慢で軽率な言動と行動に
だいたい後悔から始まる。今回のこうしてこの場にいるのも後悔し始めたのは
自分がまた軽率な発言をした後のこと

「変なことを言うのね。どうして、そう思うの」

 自分の考えがまとまりきる前に返答が返ってきてしまった。
しかも、動揺するだろうと思っていたが声色にその変化はない
いや、別に声色に変化がないからと言って動揺しているかどうかという
ことがわかるわけではない。表情やしぐさという全体を見て
その人物が動揺しているのかを考えるのだが・・・肝心の表情やしぐさ
というのを見ていなかった・・・いや、見ることができなかったという
方が正しい。
 自分なんかがまともに見ることが許されるのかというぐらい
彼女は綺麗であり、それにまともに女性と話した経験もない。
そんな人間がいざ、女性と対面してまともに直視できるだろうか?
 
何か、逃げる話題を探してさっさと逃げる。
どうでいい自分の回想なんかに思いをふけっていては

「なんとなく、自分が感じた中でしっくりきた言葉が電波だった。
偽名だったというのも思い付きです」

矢継ぎ早に自分の思ったことをただ言葉に並べた。だが、これでは
まだ足りない。だいたいこう思った時には

「それに仮に本名だったとしても俺たちはまともに言えませんよ
発音の仕方もわかりませんしね」

なんだろうか言った後に思ったのだが、彼女のどうしてという
理由の答えになっていない。これはただの自分勝手な理由であり
なんら根拠もない・・・・そもそも、どうして、偽名なんて思ったのだろうか

 どうも、今日はまた後悔の念を抱きながら寝ることになりそうだ。
そして本当のことを言いながらもまた嘘を織り交ぜる自分に対して嫌気が差しながら
真琴の頭を過るがそんなことなんて
この瞬間、置かれている状況を考えれば宇宙に浮かぶ星屑のような
 星屑というのが人間が考えているほどちっぽけなモノではない
ことを考えもしなかった。

なんとも煮え切らない言葉を返した後、俺の出来ることと言えば
彼女の返答を黙って待つということだけだ。

真琴は彼女をぼんやりと見ながら、頭の中で思考を巡らせた。
自分を見つめる彼女の瞳には冷たい感情を表すようなモノではなく

 何か久しぶりに見る懐かしささえ、伺えるモノが見て取れた。
あの瞳はなんだっただろうか。小さな時、そうまだ社会の柵を知らず
ただ友人たちと遊び、寝るという行動を繰り返した無垢な時代に良く見た
ような気がする。最近では、見ることが少なくなった・・・そう、相手に
対する興味を示している時に瞳に宿る光だ。

こんな身体になってから、これは自分の慢心と体たらくさが結晶になったようなものだ。
決して、現代医療で治療不可能というわけでもなく
自分で自分を変えようと思い、行動を起こせば時間と苦労を
消費することによって改善できる代物である。

 そんな結晶が身体につき始めてから、周りの視線から興味などという
温かい光は消えてなくなった。いや、自分が脱ごうとしなかったことは
十分にわかっているが、自分以外を敵にして世界を憎んでいた方が
ずっと楽でいられる。そんな、考えになってからだろうか
相手から消えた興味の光というやつを自分が相手に向けるようになったのは
ただ相手を観察して、相手を自分から遠ざけるという
仮定に置いて生まれた相手への興味、あの光はなんとも屈折した。

 輝きを帯びていた気がした。だが、彼女から向けられている光は
その屈折したようなものではない。

ただまっすぐに俺を見ている。何とも気まずい話である。
良く考えれば周りを敵だと思い、世界も憎んで自分が正しいと
思ったことをやろうと考えたということが
自分をこの場へと導いていたような気がする・・・・もし、それが
本当なら何とも喜べないことでもあるし、そして、笑うことでもないだろう。

仮にもしそうだとするのであれば、一時の芸術作品と向き合っている
この何とも言えない高揚感というモノには感謝してもいいのかもしれない。

しかし、俺が向き合っているのは無機質的な芸術作品ではなく
自分と同じ命ある生物なのだ。

「変わった人ね」

 彼女の返答は何とも真っ直ぐなモノだった。そこに嫌味もなければ
好意的なものすら伺うこともできないようなただ真っ直ぐな言葉

俺はそれにどう返せばいいだろうか?

 真琴が考えこむ前に彼の身体は、主に口はもう言うことを決めていたかのように
言葉を告げる。

「よく言われます。あなたも美人ってよく言われません?」

 あぁ、なんて馬鹿なことを言うのだろうか
後悔の見返りは案外、大きいものになる。彼女は冷ややかな目で
此方を見ながら、口元に手を当てならがクスクスと笑っている。
 一連の動作はまるで芸術作品を作り上げている作者のような
それでいて完成した作品がまだ見せたことのない表情を垣間見たような
何とも不思議な感覚に襲われながらも彼女の動作を息を飲んで見つめることしか
できなかった。表情は先ほどまでの無機質的な彫刻とは違い、温かみのある
人間らしいというべき表情が見えてた。表情の硬さが取れたというか

 自分がつくづく幸せ者であるということだけはなんとなく感じた。そして、不意に思ったのだ。
死ぬ前にいいモノが見れた。そう思ってしまったのだ。
 動物は自分の死期がわかるというが人間という生物はその野性的な感覚が理性という
非常に複雑な存在と医療と言う自己治癒力以外の存在が生物として最も優先すべき
 そして幾重にも研ぎ澄まされなければならな生に対する感覚というモノを鈍らせている
感覚は特殊な条件下にいる時に一瞬にして錆が落され隠れていた本能が蘇ることがある。
人間もまた生物だ。野生に生きているわけではない先人たちが作り上げた社会という箱庭の中を
 まるで自分の庭であるかのように闊歩し、その庭の中にある生態系を
玩具の積み木を崩すように平気で壊していく。その行為には
自己の利益もしくは、人類のためという大義名分を掲げて行われている。
それが過ちであろうとお構いなしである。破壊した後にその物の大切さに気が付き
神でもないのにその再生へと尽力を尽くそうとする。
 
 この矛盾を繰り返して行くうちに自分たちもまた生き物であるという感覚を忘れている。
勿論、事あるごとに生きているということを実感することにもなるのだが
そうした行為が自然であるという錯覚にさえ思えてくる。
しかし、命のやり取りの場に放り込まれたらどうなるのだろうか
そのために訓練を受けている人間はある種、その手の感覚を研ぎ澄ます
浮世離れしている感覚と平和なボケした感覚の混在する日常を
送っているだろう。そうした人間はスイッチが入れば
すぐに平和ボケという感情を切り捨てることができる。
 いや、切り離すのに時間はかかるかもしれないが浮世離れした感覚への順応力は
他の追随を許さないだろう。

なんでこんなことが思考を満たしていくのだろうか。

 我に返る時と言うのはだいたいこれから起きようとしていることに
対するリアクションが遅れている。

 真琴の耳はただならぬ音をとらえ続けていたのだ。人間の可聴領域
の遥か外で鳴り続けていた生命に対する警告の音がそれを聞くことは
本来ではありえないが、この世の中にあり得ないということは
死人が生き返ることぐらいで他は実はあり得ないという意識が
形成された時点でそう感じなければならいという思い込みである。

真琴は急に立ち上がり、目の前にいる少女の椅子にめがけて
太く長くもない足を使い自身の持てる力の限り、蹴り飛ばした。
 急な行動に外で傍観を決め込んでいた生徒たちが声をあげた。
また、その行動を見ていた友人はその人物が取った行動に
仰天してる中、行動に対する不信感と一瞬、彼の視線と自分の視線が
交差した時、彼もまた直感的に扉から飛ぶように離れた。

彼の目が「逃げろ」そう語っていたのだ。友人が扉から飛ぶように離れる行動
に映っている数秒、真琴の思考回路は今、自分が取っている行動
とこれから取らなければいけない行動に対する疑問が膨れ上がっていた。

「何故、俺は彼女を蹴っているのだろうか」

 蹴り飛ばした彼女は並べられていた椅子と机に音を立てながらぶつかる
木製部分と金属製の二つによって構成されているその両方に当たる鈍い音が真琴の耳には届いていた。
だが、それが本当かどうかを目視で確認することはできない。

 何故なら・・・蹴り飛ばした刹那、その巨漢に似合わぬ速さで
窓の方へと身体の向きを変えたのだ。窓から覗くのは夏を迎え、燦々と輝く太陽光とガラスに反射した
虹色の断片が見える。どこでも見れるようなありふれた光景のはずだが
それを知覚するよりも早く、押し寄せる虹色の断片が身体に突き刺さる。

 本来ならそこには存在しないであろうモノを真琴の瞳は捉えていた。
そこにいたのは・・・・・・・・・

停滞者。動く! プロローグから一話 「スタート」

2013-03-17 17:12:42 | 停滞者。動く!
世界というのは唐突な変化を望んでいるようだ。隕石落下然り、革命然り
そんな変化はある日、突然に起こるものいや、起こって欲しいと願いなら
退屈な日曜の昼下がり、何かに取り憑かれたように
オンラインゲームをやっていた俺の耳にあるビックニュースが飛び込んできた。
 
「宇宙人は実在します」

 このニュースが放送されるやいなや、オンラインゲームのチャットや
ゲーム内電光掲示板が油でも注がれたかのような勢いで会話が
飛び交った。内容は実にくだらないことばかりだ。
何せ、やっているのが日曜の昼間である。どこかの芸人がパロディでも
やっているのではないかと思いながらテレビに目をやるとどうやら本当のようだ。
 そのニュースを読み上げていたキャスターが突然、崩れだしたのだ化粧が崩れて
いるわけではない。その存在というか全てが崩れていく崩れ落ちた後に残っていたのは
地球人とは明らかに異なる容姿をした知的生命体だろう何か。
 その瞬間、カメラスタッフの悲鳴やその収録を見に来ていたお客の
悲鳴が集音マイクが拾わなくても聞こえるぐらいに木霊していた。
テレビ局にこんな予算をかけてでっち上げ番組をやるほどこのご時世の財政は明るくない。

 今日は人類と宇宙人の公にされたファーストコンタクトの日に
なったわけだが、やはりというべきか国のお偉いさんや極一部の人間は知っており
このニュースの後に流れた緊急政治速報では涼しい顔して宇宙連合への加入手続きや地球連邦政府
などの発足がトントン拍子のように進められた。

そんな世界が慌ただしであろう中、俺とその家族はというと

「宇宙人って本当にいたんだなぁ~」

「何を言ってるんだ。真琴、お向いの須藤さんは宇宙人だぞ。

会議の時に書類に目を通し終わった時だが、彼の目は明らかに

人間とは違う瞳孔の開き方を一瞬したからな」

「そうそう、兄貴。意外に身近にいるよ、さっき昔住んでたところの

友人にメールしてみたけどやっぱり、というか

宇宙人だったよ。ほら、兄貴も知ってるだろ。ツトム」

そう言いながら弟が指しだした携帯の画面には

地球人バージョンと本来の姿のバージョンの写真が表示されていた

「あら、ツトム君もそうだったの、実は遠藤さんのところも
そうだったみたいよ」

言いながら母が手をかざすと立体映像が浮かび挙がり
それを見ながら「おぉ」と関心しつつその映し出された人物を見ると
瞳の色が二色だったり、おまけに角が生えていた。
補足をするようであるがオッドアイというわけではない一つの瞳が二色なんだ。

「母さん、それどうしたの」

我が家では宇宙人よりもそっちが気になる

「須藤さんがね、くれたのよ。通信機として便利だからぁ~って
最初はなんのことかわからなかったけど・・・・あると、携帯より便利ね」

機械が得意ではない我が母が使いこなしているのであるのだから相当に便利
に違いないと心の中で流石は宇宙人的科学と関心しながらも、我が家の能天気というか
世界が凄いことになっているのに関心がテクノロジーに行くとはなんとも
思わず

「そういえば、このニュースで我が家の人間は驚かないよね」

当然の疑問が浮び口元から零れ落ちた。

「「「だって、10年前ぐらいにお隣に住んでたわけだし」」」

見事に声がはもった

「・・・・・あぁ、そう言えばそうだったね」

 今の今まで忘れていたが、10年前に確かにお隣さんに宇宙人が住んでいた。
そういえば、ファーストコンタクトはともかく
家族ぐるみの付き合いを始めてしたのは家だったりしないよな。

食卓に並んでいる味噌汁に手を伸ばし啜る。今日も味噌汁の味は変わらない。
明日のために各々、やることをしそれぞれの寝室へと向かった。

「明日、学校かぁ~・・・・・面倒だ」

世界が震撼してたであろう一日の終わりなんて俺にしてみればこんなもんだった。
この一日はね。

宇宙人騒動が起こった翌日、周りはどうかわからないが我が家では普通の朝が訪れた。

「真琴~早く、起きなさいよ」
「了解ぃ~」

母のモーニングコールに返事をしてリビングへと向かった。途中で寝ボケ眼の弟と合流

「あら、智哉(ともや)も起きてきたのね」

 そう言いながら母は俺たちの分の食事を食卓へと並べていた
欠伸交じりの俺達とは違い朝からハキハキしている。
そして、我が家の大黒柱である父はというとコーヒー片手に新聞を読んでいた。

「おはよう」

朝の挨拶を交わし出された朝飯へと箸を伸ばす今日は焼き鮭に味噌汁と漬物
スタンダードといえばスタンダードな「THE・朝御飯」
それを食べながら思い出したかのように

「そういえば、昨日のアレでなんか変わったことのニュース
してないの?」

弟が無言でリモコンを取りテレビの電源を入れる。

母はアレよ、アレと言わんばかりに父の読んでいる新聞を指さす
父もこちらに見やすいような形で新聞を読んでいた。

その一面にはデカデカと第一回 宇宙連合会議と書かれており、サブタイトルに
地球人の文明維持を考慮した上での宇宙的学習カリキュラムの提示と書かれていた。

第一回というのはおそらく地球が参加する的な意味合いなのだろうがそんなことよりも
そのサブタイトル見て思わずというか

「「いい迷惑だよ」」

兄弟揃って力強く苦言を言いながら弟がつけたテレビからも同じような内容のニュースが
流されていた。泣きたくなるね本当にそう思いながらテレビに出ている時計に目をやると

「やべ、遅刻する」

俺は慌てて食事を済ませ「御馳走様」、玄関に走って向かった。
後ろから母親「気を付けてねぇ」という声が聞こえた
それの返事と言わんばかりに

「いってきます」

俺の通っている学校は意外に遠い

自転車で45分ぐらい掛かるのだ。

・・・・・おっと、俺の自己紹介がまだだった

俺の名前は

春日井(かすがい)真琴(まこと)

普通の高校生と言いたいところだが、そうではない
重度のオタクで肥満体型なのだ。
別に威張れることではないが・・・・・まぁ、平凡な高校生
というわけにはいかないだろうね。
家族についてはおいおい説明する時がくるんではないだろうか。
ちなみに弟は痩せている。ここは重要なポイント

そんな俺が自転車で学校に辿り付き校門の時計を見上げると登校時間5分前

「余裕だったか」

そういいながら、校舎に入ると様子が違う
普段なら教室に入っている生徒たちが廊下に集まっているのだ
不思議に思いながら下履きに履き代えて
自分の教室へと向かうこの校舎は四階建てで自分の教室は三階

「毎日のこれが結構辛い・・・・・ははは、痩せなきゃな」
(口だけになるが)

などと呟きと内心を思いながら自分の教室に行くと
案の定というべきか廊下に生徒がたむろしていた。
何人か俺に気がついたようだが嫌な顔をしてすぐに他所を向き
友人と思しき人物たちと話始めた。

「あいつが宇宙人だったとはなぁ」
「うわ、春日井だ。あいつも宇宙人じゃねぇの?」
「いえてる、気持ち悪いしさ」

こちらには聞こえていないつもりだろうがその話は
まる聞こえである。皮肉なことに俺は少しばかり特殊な耳をしている。
軽く言うなら一クラス40人、全ての会話を聞き分けることが
できるのだ・・・・・いや、明言はできないがそれぐらいなら
雑音ではなく会話として聞き取ることは十分に可能である。

(聞こえてる、つぅの)

毎日、飽きもしないで人を見るたびに・・・・・まぁ、俺が悪いだけどさ
そう思いながら教室の中を覗き込むと
俺は自分が何をしに来たのかを忘れるぐらいの衝撃を受けた。

「綺麗だ」

 教室の中に居たのは言うまでもなく宇宙人なのだが
その容姿に心奪われたという表現がぴったりくるだろう
中にいた人物、宇宙人に人物という言葉を当てはめることが
正しいのかどうかわからない。

その容姿は人間離れしていた整った顔立ち
目がぱっちりしておりその瞳はサファイアを
思わせるかの如く深い蒼色をしている。
正面からではないので言い難いがその筋の通った鼻が彼女の横顔を
更に綺麗に見せ、地球人の耳とは異なる少し尖った耳

 その耳に掛かる背中まで達しているのではないかと思われる髪
髪の色は瞳とは違い澄んだ蒼色
そして何より目を引いたのがシルクを思わせる肌の白さと
背中に生えている翼だ。その翼は服からどうやって出ているのかは分からない
翼の形状を例えるなら猛禽類のようだ。だが
その猛禽類のよな翼のしなやかで且つ力強い印象が
彼女を一層、美しく見せた。

正直、この「綺麗」とか「美しい」という言葉では表現できないのだ
もしかしたら俺の語彙が足らないかもしれないが
俺の知る語彙、いや言語で彼女を表現することはできないだろう

まだ知らない宇宙の言語ならば可能かもしれないが今の俺にはまだそのような知識はない。

「何、見蕩れてるんだよ」

俺はその声で我に返った。慌ててその声の方に振り向くと

「よう、裕也(ゆうや)おはよう」

その声の主は、このクラスの唯一の友人と呼べる人物だ

尾澤(おざわ)裕也(ゆうや)

 俺とは違い人望も厚く、彼はイケメンの部類に入る人物だろう
成績も優秀だしおまけにスポーツもできる。ライトノベルとかにいる主人公の親友
スペックと言えば分かり良いかもしれないが、主人公ではない俺の友人としては
余りにも出来すぎていて何で俺の友人なんだろうか、時々疑問に思うくらい。
 本人に言わせれば「理由がいるのか」だそうだ。ありがたいことである。

「昨日のニュースで昨日の今日だっつうのにこの反応とはね
・・・・・と言いたいところだが、確かにビビるわな」

彼も教室の中を覗き込みながらそう言った。

「それにあそこの席は確か・・・・・・・・・・」

 裕也は言葉を詰まらせた。耳を澄ませてみると他のクラスメイトも
口ぐちに「アレ、だれだっけ」「あんなやつクラスにいたか?」

「俺、確かアイツのこと好きだったんだけど・・・・名前がでぇ」
「テストとかで必ず上位だったよね・・・・あれ?名前が」

どうやら彼女が「地球人」だった時の記憶が曖昧になっているようだ
しかも「名前」だけが出てこないらしい。

 それにしても、彼女を見る生徒の目は自分たち以外を受け入れない拒絶の眼差し、決して受け入れようとしない
その眼差しを向けられた相手のことを考えたことがあるのだろうか
自分がそんな目で見られたらどんな気持ちになるか

しかし、そんなことを例え習っていようが
彼らはこの眼差しを自分たちが認めないモノに向けるのだ。
まるであそこにあるのは生き物ではない何か

確かに彼女は宇宙人、地球人である彼らにしてみれば「異質なモノ」だろう
だが、その眼差しは同じ地球人にも向けられる
この眼差しを向けられたモノは世界に存在を認められていないも同じ
・・・・・・・・この感情は怒りなのだろうか
自分がそんな目で見られたことがあるから同族を見ているようでやるせない

いや、違う。なら傷の舐めあいでもするのか。それも違う

「考えてもしょうがないか」

 教室の扉を跨いだ。別に特別なことではない日常の行動
だが、今日に限ってはこの扉を跨ぐという行為が
途方もないことに感じる。

不思議だ

今まで俺にとって学校生活は「苦痛」でしかなかった
裕也や極一部の友人と話しながらその「苦痛」を和らげ乗り越える。

 毎日がそれの繰り返しだが、どうも今日は違う。自分の踏み出したこの一歩がどういうモノなのか
有名な宇宙飛行士が言っていた言葉が頭を過ったがそれとは違う。
 この一歩は自分にとっての「小さなモノ」ではない人類にとっても「大きなモノ」でもない
教室に入った瞬間、背中に刺さるような視線を感じたが
振り返るまでもない「いつも」のことだ

自分の席へと向かう何かの因縁か「都合」が言いといいように
俺の席は「彼女」の右隣
そういえば、この席になった時にも周りから変な目で見らてたな

まぁ、考えてみればそうだろう。
彼女の隣になれば少なくとも彼女の近くで過ごす時間が
あるわけでそこから会話などを交えつつ親しくなる可能性も
そしてそこからという展開も期待できなくもない。

俺にとってそんな可能性は万に一つもないがこの席は確かにいい
彼女が隣に座っているか云々を除いて
窓に近い列の一番後ろ一種の特等席というやつだ

しかも、季節は日が煌々と照りつける7月下旬
日が当たるのはきついかもしれなが風が吹けば多少は和らぐ
無条件に一番後ろというのは都合がいい
後ろを気にしなくていいからだ。後ろの会話というのは授業よりも耳につく
特に自身に対する悪口ならば尚の事、気にしないでどうにかいられるほど
うまく神経構造が出来上がっていない。

それ以外の理由は、俺だからだろうな
彼女に話しかけに来る場合に俺の近くにも来なければならない
俺が窓際の列であればそれもなかったかもしれないが右側なのだ
これがどういうことか彼女に近づく場合
移動する列は俺にも極めて近いわけで俺はだいたいいつも席を動かない。

人気者と嫌われ者の間に来ることになる彼らはそれがどうも嫌らしい
そんな事を考えながらいつの間にか席についた。

取りあえず、椅子を引き席に座る
気のせいかいつもより座り心地は良くない
視線は気にならなくなってきたが今度はこの空気が嫌いだ
彼女との距離は机一つ分ぐらいの距離なのだが
どうも何百光年と離れている気がする
凍りついたというか・・・・・私には近寄るなオーラが張られている気がする
よく考えれば、教室に入った時の違和感は視線だけではなかった。

「まぁ、ここまで来たらそんなことはどうでもいい」

そう言いながら机の近くに荷物を置き
彼女の方を向いた。この席からドアは確かに距離があるがそれでも
せいぜい、数メートルといったところたったそれだけの距離から見た彼女とこの距離から
見た彼女はまったくの別人にすら見える
 真夏の太陽光が彼女の透き通った髪を照らすと冷気すら感じるほど
美しい。一瞬、自分の時間が止まったかのように思えた
・・・・・おっと、自分が何をしようとしているか危うく忘れるところだった。

我に返った俺は口を開こうとした時、俺の耳に何かのノイズのようなものが聞こえた
・・・・・・・いや、歌か?そう考えた瞬間に俺は意識を失った。

俺が気がついたのは病院のベットの上

涙を浮かべている家族と彼女、そして・・・・・・見ず知らずの少女が一人
俺は水に包まれながらベットに横たわっている。
自分がどういう状態なのか、その時の俺には理解できなかった。
ただ自分の腕に目をやると生々しい傷がいくつもあり、酷いものでは
骨まで見えるモノもそして、水の中にいるはずなのに呼吸ができること

そんなことはどうでも良かった・・・・本当ならどうでも
いいような現状ではないだが、それよりも自分の両手に残っている

この生々しい感覚

「俺は誰かを殺したのか?」