今朝の朝ドラでヒロインが大きな凧をあげていた。
それを見てふっと思い出した光景がある。
幼い頃、冬の風の強い日になると決まって現れるおじいさんがいた。
私が育った家の周辺は崖になっていて、風のある日に空を見上げるとそのおじいさんの大凧が空を舞っていた。
大人たちもその人の事は詳しくは知らないようだった。
真っ白なあごひげを生やしていて、風が吹くとどこからともなく現れる不思議なおじいさんだった。
凧とは関係ないが、もう一人のおじいさんの話。
つばの広い黒い帽子をかぶり、夏も冬も黒いロングコートを着て、自転車を押して歩く黒い犬を連れたおじいさん。
背が高くて少し前かがみに歩いていて、黒い大きな犬がゆっくりと後に続く。
近くですれ違うことはあまりなくて、ふっと気がつくと畑の向こうの道を歩いていたり、砂利道の国道(当時は)を歩いていたりしていたのを見かけた。
真夏にコートを着ているおじいさんは、子供心に不思議な人にうつった。
昔、不思議な人は結構いたけれど、大人たちは特に噂することはなかった。
子供たちも不思議に思いながらも“そういうものなのだ”と思っていたのだった。