目の中のリンゴ

20年ぶりにオペラ座熱が再燃!!

「往復書簡」 湊かなえ

2010年10月28日 | 読書
映画化もされた「告白」の湊かなえさんの新刊。

「往復書簡」(湊かなえ 幻冬舎)

タイトルどおり、やりとりされる手紙の文面だけで
構成される物語。

・高校時代の部活仲間の結婚式。
 そこでの10年ぶりの再会をきっかけにやりとりされた手紙。
・小学校時代の恩師の頼みで
 20年前の出来事を追いかける青年。
・結婚前に遠く離れてしまったカップルが
 15年前、中学生時代の事件の真相について語り合う。
という3つの小説が収められています。

「告白」があまりにも衝撃的で
後味の悪い物語だったので、読むのをためらいましたが
結果的には・・・とても面白かったし、怖かったし、
そして今回はホッとしました。
自分の過去をいろいろ思い出したりもしながら、
最後はちょっと心温まる感じで。

今の時代に手紙でなければならなかった設定づくりが
難しかったと思うけれど、手紙のよさが生かされてました。
相手のことを考えながら直筆で綴る手紙には
強い思いが込められ、人となりが透けて見える。
書いている間は自分の世界に没頭してしまう。
返事を待つ間に記憶は徐々に蘇り、心は揺れ動く。

書き手の独白ともいえる形式、そして
ひとつの出来事の見方を変えると、がらりと変わり、
やがて真実が見えてくるという描き方は
「告白」と同じだけど、やっぱり上手い。

人の心の奥に潜むどす黒い感情がリアルで
胸に痛いほどです。
まるでありふれたことのように描かれる過去の出来事は
実際にはそうそう経験しない大事件だけど
似たようなことはあるかもしれません。

過去の出来事は思いのほか、
心の奥底でくすぶっている。
人はどれだけ他者を傷つけ、
どれほど他者に救われることか・・・。

それにしても、教師というのは大変な仕事だと
二つ目の「二十年後の宿題」を読んで思いました。
実際、湊かなえさんはどんな先生だったんでしょうね。
ご自身が海外青年協力隊に参加された経験が
三つ目のお話「十五年後の補習」に生かされているのですね。

「告白」はもう二度と読みたくないと思ったけれど
まず、未読の著作も読んでみようっと。
この先、どんなものを書いていかれるのか楽しみ。
映画と同じで、読みたいもの芋蔓方式にどんどん出てくるなぁ。
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