大寒の魔羅は深海魚のごとく

　　　　　　　　　　　　　　大寒や枝にかかりし褪せし凧


　　　　　　　　　　　　　　大寒やガリガリと噛み砕く飴


　　　　　　　　　　　　　　大寒やズドンと穴の開くやうな


　　　　　　　　　　　　　　大寒や見様見真似の太極拳


　　　　　　　　　　　　　　大寒の辛さ十倍カレーかな


　　　　　　　　　　　　　　大寒や地蔵の笑みもこはばりぬ


　　　　　　　　　　　　　　大寒や一発勝負大博打


　　　　　　　　　　　　　　大寒や凜と寺屋根たじろぐ空


　　　　　　　　　　　　　　大寒や明日は剃ろふぞ無精髭


　　　　　　　　　　　　　　大寒や手を滑らせし魯山人



　　　　　　　　　　　　　　大寒の湯船で労ふ魔羅かな

湯豆腐のゆれにゆらめく恋心

　　　　　　　　　　　　　　湯豆腐や恋の始まり湯気の幕


　　　　　　　　　　　　　　恥じらひの指や湯豆腐くずれゆく


　　　　　　　　　　　　　　湯豆腐の崩れて愛の深まりぬ


　　　　　　　　　　　　　　飲み屋の椀の気取らぬ湯豆腐かな

蝋梅や甘い派多き玉子焼き

　　　　　　　　　　　　　　蝋梅は童話の国の香のランプ


　　　　　　　　　　　　　　蝋梅や明日へ明日へと日の光

　　　　　　　　　　　　　　蝋梅や辿り着きたし君のもと


　　　　　　　　　　　　　　蝋梅と聴きたる昔のシャンソン


　　　　　　　　　　　　　　蝋梅や夢のもろさよ愛しさよ


　　　　　　　　　　　　　　蝋梅の産毛くすぐるかをりかな

早梅や老いてもなほ未来志向

　　　　　　　　　　　　　　早梅や空に向くタクト千本


　　　　　　　　　　　　　　枝ほほに早梅に鼻ちかづけり


　　　　　　　　　　　　　　早梅や一輪に向けるバズーカ


　　　　　　　　　　　　　　探梅のまだ閉じられし茶店かな


　　　　　　　　　　　　　　探梅や下ろしたてなるスニーカー


　　　　　　　　　　　　　　探梅や老いて目覚む研究心


　　　　　　　　　　　　　　早梅やブンと振りたる放尿後

あやまちの積もりゆきよく眠る冬

朝まで目が覚めずに、ぐっすりと眠るということはないけど、冬はよく眠れる。
毎晩いろんな夢を見る。時々きまって出て来るのは、若い頃に働いていた職場や仕事関係の夢。
失敗したり、間に合うことが出来ずに焦ってる夢。
目が覚めて、「夢か…。」と、ホッとする。
あと、おじいさんとはぐれてしまう夢を時々見る。
スナックを探しても見つからなかったり。
目が覚めて「電話しなけりゃ。」と思って、しばらく夢と現実の狭間にいる。
「…ああ、夢か。」と覚めて淋しくなる。

雪が降っている。この冬、初めての雪だ。10センチほど積もるかもしれない。まだ降っている。
北国の積雪に比べたら、微々たる雪だけど。

　　　　　　　　　　　　　　明けから飲みアル中となりゆく冬