「恋のマイアヒ」の「のまネコ」がアスキーアートの「モナー」のパクリではないかということが物議をかもしています.
HotWiredのNews Wacher's Talkの話題もこれで,圧倒的に「のまネコ」およびエイベックスに否定的な意見が多かったです.
今週になっても新たな展開があり,エイベックスの言い分を逆手にとって,所属アーティストである浜崎あゆみのロゴに「インスパイアされた」キャラクターの商標登録について公開質問状が出されました.エイベクスは「自分たちがインスパイアされたときには何の文句も言わない」などと大見得を切っていたので,「これは相当困るだろうな」と思っていました.
案の定,商標登録中止に追い込まれました.
ネットコミュニティ大勝利です.おめでとう.でも本当に手放しで喜んでいられるのでしょうか.
少し視点を変えます.
以前「最強ロボ ダイオージャ」というTVアニメが放送されていました(1981年).話のあらすじはこんな感じです.
...イプロン星系の国々を平定するエドン王国のミト王子は,王位継承者のしきたりに従い,デューク・スケード、バロン・カークスを伴い,身分を隠して諸国漫遊の旅に出る.旅先では民衆を苦しめる悪人たちと出会い,ミト王子はロボット「ダイオージャ」を操り,悪人を懲らしめ世直しをする...
ここまで読めばすぐお分かりの通り,「最強ロボ ダイオージャ」は「水戸黄門」の話を基に作成されたSF合体ロボットアニメです(ちなみに,弥七は出ないのかというと,シノブさんという女スパイ的キャラがそれに当たり,この点では本家(お銀)を先取りしていたということができる).
「最強ロボ ダイオージャ」というのはずいぶんマニアックな例ですが,よくよく考えてみるとアニメやコミックや小説や演劇やゲームの中には,よく知られた古典作品や歴史的事件・逸話を下敷きに作られているものはたくさんあります.たとえば,「ドラゴンボール」の主人公キャラは,どう考えても「西遊記」がヒントになって作られているでしょうし,黒澤明監督の「乱」は「もし三本の矢が折れちゃったら」というのがストーリーの根本にあるわけです(毛利家にしてみればずいぶん失礼な話なのかもしれません).
これらの世界では,よく知られた古典作品や歴史的事件・逸話をモチーフに(今回の件にあわせれば「インスパイアされて」)新しい作品を生み出すということは,目だって変わったことではないように思います.むしろそれが許されないのであれば新しい創造は困難であるということもできるかもしれません.言い換えるとパブリックドメインに属すると考えられるフリーな著作物を改変して新しい著作物を作るということは決して珍しいことでもなく,これまで別に目くじらたれられてきたわけではないということです.そもそも,著作権侵害は,著作権者が「侵害された」と親告しないと成立しないので,当たり前といえばそうですが.
「モナー」はパブリックドメインに属するキャラクターであることは,ネットコミュニティも認めるでしょう.「モナー」はみんなのものであり,誰のものでもない.ネットコミュニティは強い愛着こそ持っていても,「モナー」に関する独占的な権利を持っているわけでもない. でも,今回の「のまネコ騒動」の顛末からは,「モナー」も「のまネコ」ものネットコミュニティの所有物であるという印象が強く浮かび上がってきます.パブリックドメインの著作物を改変して新たな著作物を創造することは,フェアユース(公正な利用)の範囲外であるという社会的事実がつくられ,社会がそのように認知してしまった.今後この件が前例としてまかり通り,著作物の創造が萎縮しないことを願っています.「時代が変わったのだ.今後は認めん」という主張もなりたちますが.
「のまネコ」が「モナー」に似すぎていたのがいけないのでしょうか.「営利目的」の利用がいけないのでしょうか.「商標登録」については今年いろいろと話題となりましたが,10年という期限はあっても更新が可能で,永続的な権利が発生する恐れがあるのが問題でしょうか.あと,ネットコミュニティは消費者やユーザの声を正しく反映しているのでしょうか.一部の特定の意図を持った人々(たとえば,ライバル企業の社員など)に扇動されたり偽装される危険性はないのでしょうか.コミュニティ内でバランスの取れた議論・意見集約はなされているでしょうか...いろいろと考えるところの多かった騒動と思います.
HotWiredのNews Wacher's Talkの話題もこれで,圧倒的に「のまネコ」およびエイベックスに否定的な意見が多かったです.
今週になっても新たな展開があり,エイベックスの言い分を逆手にとって,所属アーティストである浜崎あゆみのロゴに「インスパイアされた」キャラクターの商標登録について公開質問状が出されました.エイベクスは「自分たちがインスパイアされたときには何の文句も言わない」などと大見得を切っていたので,「これは相当困るだろうな」と思っていました.
案の定,商標登録中止に追い込まれました.
ネットコミュニティ大勝利です.おめでとう.でも本当に手放しで喜んでいられるのでしょうか.
少し視点を変えます.
以前「最強ロボ ダイオージャ」というTVアニメが放送されていました(1981年).話のあらすじはこんな感じです.
...イプロン星系の国々を平定するエドン王国のミト王子は,王位継承者のしきたりに従い,デューク・スケード、バロン・カークスを伴い,身分を隠して諸国漫遊の旅に出る.旅先では民衆を苦しめる悪人たちと出会い,ミト王子はロボット「ダイオージャ」を操り,悪人を懲らしめ世直しをする...
ここまで読めばすぐお分かりの通り,「最強ロボ ダイオージャ」は「水戸黄門」の話を基に作成されたSF合体ロボットアニメです(ちなみに,弥七は出ないのかというと,シノブさんという女スパイ的キャラがそれに当たり,この点では本家(お銀)を先取りしていたということができる).
「最強ロボ ダイオージャ」というのはずいぶんマニアックな例ですが,よくよく考えてみるとアニメやコミックや小説や演劇やゲームの中には,よく知られた古典作品や歴史的事件・逸話を下敷きに作られているものはたくさんあります.たとえば,「ドラゴンボール」の主人公キャラは,どう考えても「西遊記」がヒントになって作られているでしょうし,黒澤明監督の「乱」は「もし三本の矢が折れちゃったら」というのがストーリーの根本にあるわけです(毛利家にしてみればずいぶん失礼な話なのかもしれません).
これらの世界では,よく知られた古典作品や歴史的事件・逸話をモチーフに(今回の件にあわせれば「インスパイアされて」)新しい作品を生み出すということは,目だって変わったことではないように思います.むしろそれが許されないのであれば新しい創造は困難であるということもできるかもしれません.言い換えるとパブリックドメインに属すると考えられるフリーな著作物を改変して新しい著作物を作るということは決して珍しいことでもなく,これまで別に目くじらたれられてきたわけではないということです.そもそも,著作権侵害は,著作権者が「侵害された」と親告しないと成立しないので,当たり前といえばそうですが.
「モナー」はパブリックドメインに属するキャラクターであることは,ネットコミュニティも認めるでしょう.「モナー」はみんなのものであり,誰のものでもない.ネットコミュニティは強い愛着こそ持っていても,「モナー」に関する独占的な権利を持っているわけでもない. でも,今回の「のまネコ騒動」の顛末からは,「モナー」も「のまネコ」ものネットコミュニティの所有物であるという印象が強く浮かび上がってきます.パブリックドメインの著作物を改変して新たな著作物を創造することは,フェアユース(公正な利用)の範囲外であるという社会的事実がつくられ,社会がそのように認知してしまった.今後この件が前例としてまかり通り,著作物の創造が萎縮しないことを願っています.「時代が変わったのだ.今後は認めん」という主張もなりたちますが.
「のまネコ」が「モナー」に似すぎていたのがいけないのでしょうか.「営利目的」の利用がいけないのでしょうか.「商標登録」については今年いろいろと話題となりましたが,10年という期限はあっても更新が可能で,永続的な権利が発生する恐れがあるのが問題でしょうか.あと,ネットコミュニティは消費者やユーザの声を正しく反映しているのでしょうか.一部の特定の意図を持った人々(たとえば,ライバル企業の社員など)に扇動されたり偽装される危険性はないのでしょうか.コミュニティ内でバランスの取れた議論・意見集約はなされているでしょうか...いろいろと考えるところの多かった騒動と思います.