あ ど れ な り ん

主にブルベを中心に趣味と日頃の鬱憤を晴らすために書こうと思います。

【オリンピック】南北統一チームに思うこと(セルフ緊急寄稿)

2018-01-26 00:01:22 | ニュース
近々行われる冬季オリンピックにおいて、南北朝鮮が合同で入場するだけでなく、
女子アイスホッケーは南北統一チームで出場しようとしているようです。
過去にあった、南北統一チームの光と影があった事を知るものとして、
現在の騒動について複雑な思いを抱いていることを書き連ねたいと思います。

一応断っておきますが、今回、タイトルは唯一のユーモアです。

統一チームの優勝を見た
過去に何度か幾つかの競技で南北統一チームが組まれたと記憶してますが、
自分が鮮烈に覚えているのは1991年の世界卓球選手権千葉大会です。
その大会では南北分断依頼初めて南北統一チームが結成され、
団体とダブルスは南北の選手が混ぜて組まされました。
そして、なんと女子団体では常勝中国に打ち勝ち優勝したのです。
自分は目の前で見ていました。
これは本当に衝撃でした。
応援も当然統一で大応援団が応援しており、異様なムードでした。
宿敵中国に統一チームで勝ったのですから、それは大騒ぎ…というか、
みんなでアリランかなにかを歌っていました。
その時は歴史的な瞬間に立ち会えたと思ったものです。

光と影
女子団体が大成功を納めた影で、男子団体、男子ダブルスでは実力を発揮することができませんでした
(ついでに言えば、エース二人以外の女子ダブルスも)。
女子団体では南北のエース同士でダブルスを組んで奇跡的な勝利(とここでは呼びます)を演出しただけでなく、
女子ダブルスでも同じペアで準決勝で中国の優勝ペアに負けたものの3位だったと記憶しています。
対して男子のペアはうまく行きませんでした。
数週間前に急に組んだのですから、上手く行くはずありません。
世界選手権に向けてずっと同国内のペアで練習してきたのに、
ほんの数週間前に今まで組んだことのない人に変わった訳ですから、
そうそう簡単に息の合う動きなんてできません。
女子が奇跡的過ぎたのです。
男子の結果はむしろ順当でした。
男子はちょうどスウェーデン最強時代だったとはいえ、
中国が実力を落としている時期だったので優勝のチャンスも有ったところ、
非常に残念な結果となってしまいました(特に南の男子)。
女子アイスホッケーの件では、出場人数がルール通りなら、
出場できない、もしくは出場機会が減る選手が出てくることが懸念されていますが、
それは過去の卓球団体でも同じことが起こっています。
女子が優勝したからといって、そのことを忘れてはいけません。

疑問
もう27年も前の話になりますが、近年になって、この時のことを題材にした
「ハナ 〜46日間の奇跡(原題:コリア)」という映画が作られたくらいですから、
40歳から上の世代の韓国人にとっては、とても良い思い出として記憶しているのではないでしょうか
(映画のトホホな内容については後述)。
しかしながら、ここまで書いてきたように、彼、彼女らはこれまで積み上げて来たものを突然崩され、
南北統一という夢の実現のための橋渡し役を急に押し付けられたのです。
選手達は時代に翻弄されたと言っても過言ではないでしょう。
もしかしたら本人達は南北統一チームでやれたことに対して嬉しく思い、良い思い出として残しているかもしれません。
いや、むしろ上手く機能しなかった男子ですらその確率が高いです。
しかし、本当にそれで良かったのでしょうか?
世界選手権や、オリンピックのような大事な大会で選手たちのこれまでの努力を無視し、
統一という名の元に有無を言わせず政治的なパフォーマンスの道具として選手達を使うのは正しい行いでしょうか?
仮に選手達が喜んでいるとしても、選手のためになることなのでしょうか?
ちなみに、選手達に「南北統一チームになるかもしれないけど、どう思う?」なんて聞いても無駄です。
北はもちろん、南だって言いたいことが言える訳ない社会ですから。

南北統一チームの実現には時の世界卓球連盟の会長である荻村伊智朗さんが尽力されました。
荻村さんの輝かしい業績の一つとして数えられています。
が、しかし今となっては本当に良かったのか疑問に思うところです。
ここまで書いてきた通り、割を食った選手は確実に居ました。
そして奇跡の勝利の後、北朝鮮はどうなりましたか?
南北関係で何か進展があったでしょうか?
北はミサイルや核の開発を止めましたか?
女子の南北のエースだった二人は20年来会っていないとのことです。

当時と今回の違い
ここで私が知る範囲でですが、当時と今回の統一チーム結成の過程や状況について少し纏めたいと思います。

- 単一スポーツでの開催だった -
「卓球」という一つの枠の中でしたので、いろいろ都合を付けることができました。
しかし、今回はオリンピックという、規模がとてつもなく大きく、国家的な行事であり、
アイスホッケーはその中の一つでしかありません。

- 開催地が第三国だった -
政治的な問題は第三国で解決するということはよくあることです。
一方で開催地が隣国である上、在日の人が多いので手厚いサポートができました。

- 南北選手の実力が拮抗していた -
南北の選手とも強く、戦績、ランキングとも同様の実力だったので、出場枠数が殆ど同じでした。
ダブルスを組んだり、団体になっても戦力ダウンには殆どならなかったのです(息が合うかは別)。
ダブルスも一方の実力が下がって戦いにならない…ということが殆どありませんでした。
当時は北朝鮮も国際大会には頻繁に顔を出していました。

- 国際ペアを組むことが頻繁にある -
テニスでも見かけますが、ダブルスで違う国同士の選手で組むということが卓球では頻繁にあります。
ですので、団体はともかくダブルスで違う国の人で組むということに関して心理的な抵抗感は無く、受け入れられる土壌がありました。

- 「ピンポン外交」という実績が有った -
卓球というスポーツには、これを通しての交流から、政治的な関係を良くしたという実績あったのです。
発端は中国が当時険悪だった米国の卓球選手を招待したことに始まります。
この時、仲介役の一人として荻村伊智朗さんが居ました。
詳しくはWikiをお読みください。

- 協会長が主導した -
先述した通り、当時の世界卓球協会の会長であった荻村さんが綿密な根回しを行ったそうです。
ピンポン外交に熱心な人でしたから、統一チームを世界選手権で実現する為にはどんな根回しが必要かは分かっており、
その為の行動を前々から起こしていたそうです。
上にも書きましたが、団体では出場機会が減ることになるので、
双方の国とも、そうたやすく統一チームなら仕方ないなどと首を立てに振るわけがありません。
北朝鮮には30回以上足を運んだとのことです。
選手としても尊敬されている人でしたから、世界中に顔が利きます。
南北の関係者だけでなく、利害関係の強い中国の政治家にまで話を通していたと推測します。
しかも、開催場所はお膝元の日本。
条件は揃っていました。
奇跡的な勝利の裏には、それを演出する人と舞台が揃えられていたのです。

このように比較してみると、当時と今回では状況が大きく異なることが分かると思います。
今回も前々から計画はし、水面下では動いていたのしれません。
しかし、これからIOCと話し合うというのは遅すぎですし、政治的な思惑が表に出過ぎです。

スポーツは誰の物か
権力者というのは何かと実績を作りたがります。
前の政権を否定し、支持を強固な物にしたいでしょう。
さらに南北統一という夢があります。
それがオリンピックという平和の祭典と呼ばれているものに乗っかって、
「平和」という大義名分の名のもとに行動を起こせば、
周りはなかなか否定しづらくなってしまうでしょう。
しかし、それに割りを食うのは誰でしょうか?

スポーツに政治を入れるななんて良く言われますが、それはキレイ事です。
メチャメチャ政治的かつ人種的な思惑で取り決められているのは、周知の事実です。
ですから、南北統一して入場行進するくらいは勝手にやってろと思います。
しかし、それぞれの国を背負って戦ってきて、国のために頑張ってきたかもしれないのに、
それが無い状態って選手はどう思うでしょう?
南北朝鮮は元々一つだから問題無い?
殆どの選手は分断後に生まれて、ずっと別の国でした。
そんな人達に急に統一の橋渡し役を押し付けるなんて勝手すぎやしませんか?

これまでの経験上「南北統一チーム」が実現したからといって、北の態度が変わったということはありません。
そんなことは南の政治家も分かっているはずです。
結局のところ平昌オリンピックの注目度を上げて、結果成功だったという実績を無理やり作りたい。
平和に向けて何かしらの行動は起こしましたよ。俺達凄いでしょ?
というパフォーマンスをしたいだけというのが自分の推測です。
それは裏を返せば大失敗に終わる可能性も大いに有ります。

そもそも北朝鮮は予選を突破していません。
にも関わらず女子アイスホッケー南北統一チーム結成というのは、これまで代表になるために戦ってきた過程を無視し、
スポーツにおける公平性や機会均等性をないがしろにするものだと思います。

オリンピックは誰のものか?なんのために開くのか?
原点に立ち返れば、自ずと答えは導き出される筈です。
願わくば、オリンピック・パラリンピックを滞りなく終わらせることが最善ということに早く気付き、実行に移して頂きたいものです。
これについては、今からでも遅くありません。

 ☆ ☆ ☆

優勝後の話①
当時の韓国女子のエースは玄静和(Hyung Jung Hwa
(Googleで「ジヒョン・ジャング・ジョンファ」と出て来るが間違い))でした。
最近では女子の監督としてテレビに映っていましたが、彼女の実績はというと、オリンピックのダブルスで金。
世界選手権では、シングルス、ダブルス、団体、混合ダブルスの全ての種目で優勝経験がある、それはもう伝説的な選手です。
こんな選手は中国でも滅多に居ません(層が厚過ぎて役割が回ってこない)。
91年の南北統一チームの団体優勝の後、北朝鮮では記念硬貨が作られ、優勝メンバーの顔が刻まれました。
その中には玄静和の顔も有ったのです。
北の硬貨に南の人の顔が入るのは異例中の異例でこれが初めてだったそうです。
そんな人はその後にも居ないでしょう。
記念硬貨に国のトップの許可が無い筈がありません。
北でもいかに喜ばしく歓迎された出来事であったかが分かるエピソードです。

優勝後の話②
このときの出来事を題材にした映画が2012年に韓国で制作されました。
原題「Korea」
日本語タイトル「ハナ 〜奇跡の46日間〜」
("ハナ"は"ひとつ"の意)

自分は見ていません。
そもそも映画にも韓国にも興味が無いですし、卓球をやっていただけに、
素人の動きを見るのは苦痛ですので、出来れば見たくない部類のものです。
さらに下記のレビュー見たら、お金を貰っても時間の無駄と思うでしょう。

映画の冒頭で「これは事実を元にしたフィクションです。」と断りが入るそうです。
あとは推して知るべしです。
当時を知る人の詳しいレビューはこちら
短いけどこちらも。
自分もかなり友好的だったと伝え聞いてますし、いろいろとスムーズに行ったからこそ、女子団体で優勝できたのでしょう。

日本語のレビューを見ると韓国好きの人が見ていることもあって好意的な感想が目立ちますが、真実は↑です。
中にはノンフィクションと書いているところまでありますが、今からでも大いなる創作ということに気付いて欲しいです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿