kebaneco日記

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小泉首相のアフリカ歴訪

2006年05月02日 | 折々の話題
毎年ゴールデンウィークを利用して外遊に出る政治家は多い。今回小泉首相はアフリカ数カ国とスウェーデンを訪問中だ。

4月30日にワシントンで俳優のジョージ・クルーニーさんらがスーダンのダルフールの虐殺反対デモをしたその日、小泉首相はアジスアベバでアフリカ連合(AU)を訪問している。政府はダルフール問題解決に1,870万ドルの援助をすることをAUに伝えたとされている。1,870万ドルって22億円。積算根拠なくアメリカから求められた米軍再編成に日本として支払うとされるお金7000億円(あるいはアメリカ側のいう三兆円)と比較してどうなのさ?改めて対米偏重型の外交の一端を垣間見た気がした。

私の大学時代に親しかった友人のナンディはアフリカのナミビア出身だった。学年的にはひとつ下だったのだけど、年齢的にはずっと上。寮で同じフロアだったこともあり、同じ学年じゃない彼女と一番親しかった。

当時のナミビアはまだ南アの植民地で、SWAPOという独立運動組織に彼女は属していた。他にも同じゼミにナミビア出身(同じくSWAPOメンバー)の男性ヴェイコーとカンパラがいた。国際関係学部だったこともあり国際色豊かなゼミ。アフリカからの国費留学生の外交官が突出して多かった。

彼らは90年ナミビア独立以来母国の要職を歴任している。ナンディは女性問題担当大臣などを経て現在は情報・放送大臣だし、ヴェイコーは独立直後駐英大使を務めたけど今は外務事務次官だ(どっちが上なんだ?)。カンパラはヌジョマ初代大統領の私的アドバイザーだったけど、昨年大統領が代わったので今は何をしてるかわからない。

私は91年に第二子を出産したナンディに会いにナミビアまで行ったことがある。シンガポール・モーリシャス・南アと乗り継いでの長旅だった。北回りでルフトハンザやBAを使えばもっと早かったんだけど、お金がなかったので時間を掛けるほうを選んだ。

旅程は2週間。でも往復に時間がかかっちゃったのでナミビアに居たのは10日くらいだった。そのうち一週間は現地の旅行会社の主催するツアーでエトーシャ国立公園内のロッジに泊まってサファリしたりナミブ砂漠に行ったりしたので、首都のウィントフークに居たのは3泊くらいだったと思う。その間は彼女が夫の前妻の子やその家族と40人くらいで暮らす自宅に泊めてもらった。一つ屋根の下に住む一ダースはくだらない数のガキどもが毎朝「keba~、まだ寝てんのぉ?朝だよぉ~」とノックもせずに部屋に飛び込んできてベッドの周りを取り囲んで起こしてくれた。少子化の日本にあってはなんとも豪華な目覚まし時計だ(笑)。

帰国する朝、連れて行きたい場所があるので早めに出るよといわれ、一緒に車に乗った。彼女は当時も政府の要人だったので車は運転手つきのベンツだったし、自宅にはビーグル犬を連れた警備員が常駐していて、門の傍には警備員用の小屋があった。その朝までのナミビアでの生活は日本とさして変らない状態、っていうか~、政府専用車でツアーの集合・解散場所まで送ってもらえるなんて日本以上の扱いだった(笑)

さてその朝車でしばらく行くと開発が進みモダンな建物が建つ首都の一角(だったとおもう)に岩がゴロゴロする斜面が現れた。きれいに舗装された道路が砂利道に変ったな~と思っていた私の目に入ってきたのは、本物の正真正銘のスラムだった。斜面のあちらこちらにブロック塀にトタンやむしろで屋根を作った建物がある。どのうちにも水道はおろかガスも電気もない。仕事さえあればバリバリ働くだろうと思われる世代の男性が所在なげに建物の外に座っている。向こうのほうには枯れた枝を運んでいる人がいる。

車を降り立って呆然としている私に彼女は低い声で「keba、あなたが昨日まで見てきたナミビアだけがナミビアじゃないのよ。コレを見ないで帰ってもらうわけにはいかないのよ」と言った。促されて建物の中をのぞくと本当に真四角の空間。布で仕切った向こう側にトイレがある。台所はないので外で枯れ枝を炊いて調理。水はどこかから運んでくる。延々と続くこのスラムの向こうに首都のビル群が陽炎のように見えた。

写真を撮ってもいい、友達にこの現実を伝えて欲しいといわれたけど、どうしても撮れなかった。写真に撮るためにこの人たちを見るっていう行為が、この人たちの尊厳を犯す行為に感じられた。それほど絶望的な光景だった。

あれから15年も経った。その間私はユニセフのカードを買うくらいしかアクションをとっていない。それから多分、ダイヤモンドの指輪はナミビア産かもしれない(笑)。日本という自分の現実にもどると、あんなに悲惨な現実を突きつけられても遠いことのように思ってしまう。自分を正当化するつもりはないけど、でも普通の人ってそういうものだと思う。だってkebaneco家は猫ですらおやつの種類だけでもこんなにある。こんなものがあふれた国にいて、遠いアフリカの貧困を思えって言われても、悲しいかな想像力が貧困な私には無理がある・・・

だから国費を使って外国に行く人たちには現実に即した約束をしてきて欲しい。「常任理事国入り支援をもらうために必要な金額」は22億円かもしれないけど、スーダンの虐殺やその他の部族間対立、貧困と低開発、風土病やエイズ、「アフリカのために必要なお金」は決してそんなものではないはずだもの。

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