kebaneco日記

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賢者の贈りもの

2011年06月22日 | チェロ&アート
日本財団の関連組織に、ストラディヴァリやグァルネリ・デル・ジェスなどによって製作された世界最高峰の弦楽器を収集して(コレクションはこのサイトの「所有楽器一覧」に)、一流の演奏家や若手有望演奏家に無償で貸与する事業などを行っている、日本音楽財団というところがある。

その組織が、このたび1721年製作のストラディバリウス(詩人のバイロンの孫娘が所有し、レディー・ブラントという名を持つ)を、ロンドンでオークションにかけた。日本音楽財団のサイトによると、このヴァイオリンは、ラブレス伯爵の娘で、詩人として有名なバイロンの孫娘のレディ アン・ブラントが所有していたことからこの名前で呼ばれています。アシュモレアン博物館所有の1716年製「メシア」そして1690年製「タスカン」と同様、ほとんど未使用です。保存状態が非常に優れており製作当時のオリジナルのネックとバス・バーが残っています。糸巻きの箱の中に"P.S"と記されているのは、アントニオ・ストラディヴァリの息子、パオロが所有していたときに付記されました。とある。

このレディー・ブラントは、過去最高の4倍以上の12億7500万円という恐ろしい値段で落札された。日本音楽財団の塩見和子理事長は、「大切な楽器だが、日本の役に立ちたかった」とコメントを発表した。このお金は全額日本財団の「伝統芸能復興基金」に寄付される。この基金は、大震災で大きな打撃を受けた東北地方の祭りや伝統芸能の再生に取り組んでいく予定だという。

地域社会のつながりの重要性が再び脚光を浴びた、今回の震災と被災者のその後の生活ぶり。地元の伝統行事は地域のつながりの中核をなしている。決して地震で寸断されたり、津波で流されたりしてはならないものだ。そんな心のよりどころの再生を後押しする素晴らしい自己犠牲に、ちょっと目頭が熱くなった。クリスマスに自分が一番大切にしているものを売って、お互いが一番欲しがっていたものをプレゼントに贈り合った、オー・ヘンリー作の貧しい夫婦の物語、「賢者の贈りもの」を思い出した。

アントニオ・ストラディヴァリも草葉の陰からさぞや喜んでいることだろう。あたしも嬉しいぞ(笑)。

写真は日本音楽財団提供の写真を掲載した東京新聞の記事から拝借

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