水晶の伝統と現代性 第3回
科学の進歩に寄与した岩石の代表が水晶でした。
その水晶が、魔除けなどにも使われているのはなぜでしょう。
僕は寝室の窓のそばにクリスタルをぶら下げています。
自宅に、色彩を取り込む装置として、
スワロフスキーのクリスタルを
窓辺に吊しておけば、「美しい可視光線」が見える。
朝日の光が飛び込んでくると、天井や壁に鮮やかな虹色が広がり、
その色彩を見るだけで幸運な一日になるゾーとかその心地よさが強く感じられます。
水晶を腕に巻いてパワーをもらおうと考えるのは、
こんな光を神様の降臨になぞらえるからではないでしょうか。
宝石の中にこそ、本当の光があると感じることがありませんか?
つまり物質の中に光や色彩を宿しているかのような美しさが、
水晶への信仰を生んだのではないでしょうか。
石の中にも精神が宿っていると感じることがあります。
一対の岩に注連縄を結んだ夫婦岩なども、その類いでしょう。
よくプロの植栽家から植物は会話ができるという話を聞きますが、
僕は岩石だって人間の話を聞いてくれているのではないかと思っています。
人類の歴史をじっと飲み込んできている岩石は、
めちゃめちゃ賢いのではないかと想像することがあるのです。
岩石の賢さを頼みにするという例に、水晶占いがありますね。
球状の水晶の中を覗いて「あなたの未来が見える」などと言いますが、
あれも半分ぐらいは信用していいんじゃないかと思っています。
迷信だという人もいるでしょうが、人間なんて本当は弱いものです。
自分だけの力で生きているわけでもなく、何かにすがりたい時もある。
すがる相手が身近な人間の場合もありますが、
一人きりになったときに対話できる「モノ」の存在も侮れません。
僕はインダストリアル・デザイナーという職業柄、
電子機器や眼鏡などのプロダクトといつも対話しています。
とどのつまり、僕がデザイナーとして創りたい究極のものは、
水晶のようなものなのかもしれません。
水晶の球に話しかけるだけで、それがテレビになったら最高です。
辛いときには、亡くなった父母や祖父母がそこに浮かんできてほしい。
「瑠璃」ならではの水晶のこの結晶体は
本当に美しい。
指輪やブレスレットをかけておくと
すべて「清浄」されて自然の力が宿ってくれる
これは「気」があるという実感となる。
現代的な科学性と、宗教性が交錯する水晶の面白さには
これからも飽きることはないでしょう。
日本は電波時計などのテクノロジーで世界をリードする潜在力があるので、
僕自身も一度ちゃんとしたドクターウォッチのようなものを
水晶の技術を使ってデザインしてみたいと思っています。
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