僕はiPhoneのアプリケーションのひとつとして、HOLAをリリースしました。
1988年にオリジナルのHOLAを発表した時は5250円。
アプリケーションとなると、115円(笑)。
やはりアプリケーションでのHOLAも好評のようです。
プロダクトデザイナーとして、
アプリの世界でのモノづくりは新しい手法ですね。
例えば、これからまた時計のデザインをすることになった場合、
1988年当時のような思考回路でその時計をデザインをすることはあり得ません。
iPhoneの中に収まっても素晴らしいと思えることも前提としてデザインをします。
だから、これからはリアルとバーチャルの両視点で
プロダクトデザインも考えていかなければなりませんね。
さて、若手デザイナー諸君もこの両方の手法をマスターして下さい。
その点、鉛筆はあくまでもリアルな世界のツールですから、
コンピュータの中に入ってしまうことはおそらくこれからも考えられません。
人が手に取って、触感感覚と認知力ではじめてその機能を発揮する
極めてアナログなツールですからね。
前回のブログで書いた海外ブランド産の鉛筆の素晴らしさも
人が手に取ってはじめて実感できることが多い。
これからの鉛筆の進化もそこを基準に考えられるのではないでしょうか。
社会にはコンピュータが生まれ、世界中がネットで繋がり、
いつでも誰とでも通信できる環境が整いました。
クラウド型コンピューター、そしてその次を創造しなければなりません。
これらは技術の進歩だと唱えられていますが、鉛筆の進化も大したものです。
モノの進化という観点から見れば、コンピュータと鉛筆の進化はまったく同等のはず。
むしろ、鉛筆なのに、「今やここまで!」と、もっと関心を示すべきでしょう。
そして、鉛筆には、コンピュータ以上に長きに渡る歴史があります。
鉛筆は17世紀頃に、徳川家康が日本で最初に使ったとか、
伊達政宗が愛用していたといったエピソードが残っています。越前の松平慶憲も使っていました。
考えてみれば、鉛筆があったから、
より便利なシャープペンシルが登場し、ワープロが開発された。
文字を残す上での根源ともなったツールが鉛筆です。
それほどまでに鉛筆は偉大なものだと思うのです。
そんな偉大な鉛筆からすると、シャープペンシルやワープロはまだまだ歴史が浅いツール。
鉛筆1本を大切に使うことこそ知性の証しです。
誰もが忘れてはいけないことです。
僕が国家プロジェクトとして進めている手術用のインテリジェントロボット開発があります。
これは、かなり難しい手術の場合でも、
医師の負担を軽減させることができるロボットなんです。
様々な大学と絡んでもう3年以上のプロジェクトを進めているんです。
この素晴らしいテクノロジーを搭載した、マシンの設計といえども、
結局は一枚の紙に鉛筆でスケッチすることから始まりました。
だから僕は、どんな先端技術の創造も、
偉大な1本の鉛筆から生まれるんだと断言します。
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