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水晶は美しい! (2)

2009-05-12 10:00:00 | 過去のBlog記事

水晶の伝統と現代性 第2回



プロダクトデザイナーである僕と、水晶の関わりはふたつあります。
ひとつは、水晶が現代のテクノロジーと不可分の鉱物だということ。
もうひとつは、水晶が光と色を媒介する視覚的な美しさの部分です。


僕らの世代の男子の多くは、小学校高学年を過ぎる頃から、
鉱石ラジオやアマチュア無線などに興味を抱き始めました。
そのせいで、石英の圧電効果についても早くから知りました。
また僕は東芝時代には東芝総合研究所(現科学技術研究所)に入りびたっていました。
デザインそっちのけで音響工場の部品室から部品を持ち出しては、
簡単な時計などを自作するのに熱中していました。(もう時効でしょう)
ちょうど日本でセイコーがクォーツ時計を製造し始め、
スイスの時計産業が大打撃を被った時代でした。


そしてもちろん、水晶の視覚的な要素も僕を触発しました。
ニュートンが発見した紫色から赤色までの可視光線は、
現在の色彩論の基本であり、光をプリズムに通すことで観察できます。
室内で、虹色=可視光線が見える。
室内で、虹色=可視光線が見える。
室内の壁面によって、可視光線は変化する。この変幻は、「美しさ」の「質」だと思っている。
室内の壁面によって、可視光線は変化する。
この変幻は、「美しさ」の「質」だと思っている。
天然水晶でカラーセンターと呼ばれる、可視光線すべての「虹色」が散らばっている。ブラジル産である。値切って値切って、水晶の専門知識をふりまいてかなり安価で手に入れた。日々、カラーセンターで受け止める虹色が変化する。光を実感する結晶体だ。
天然水晶でカラーセンターと呼ばれる、
可視光線すべての「虹色」が散らばっている。
ブラジル産である。
値切って値切って、水晶の専門知識をふりまいて
かなり安価で手に入れた。
日々、カラーセンターで受け止める虹色が変化する。
光を実感する結晶体だ。


また僕がよくデザインする眼鏡のルーツも水晶の発見とその応用に源があったようです。
たまたまレンズ形の水晶を通して物が大きく見えることを発見した人が、
水晶製の眼鏡を作って、やがて望遠鏡や顕微鏡も生まれたのだとか。
いずれにしろ、ガラスやアクリルなどを発明する以前の人間が、
透明な鉱物を初めて見つけた時にはさぞかし驚いたことでしょう。
クリスタル性で、ガラスであっても「透明さ」には何か「力」がありそうだ。
クリスタル性で、ガラスであっても「透明さ」には
何か「力」がありそうだ。
映画「華麗なる賭け」の名場面でチェスが出てくる。だからチェスの収集もやめられない。このガラス製は、高価なモノではないが美しい。
映画「華麗なる賭け」の名場面でチェスが出てくる。
だからチェスの収集もやめられない。
このガラス製は、高価なモノではないが美しい。


地学という科目は高校時代でも主要科目ではなく、
ペーパーテストが終われば覚えた知識も忘れ去られるのみです。
建築家志望の学生に「石は何種類あるのか」と訊ねても、
たいていは授業で習っているはずなのに答えられません。
工学部に入ると鉱物の圧電効果などの知識が必要ですし、
薬学部ならミネラルに関する知識は欠かせません。
美術系なら陶磁器や絵の具の材料に使う鉱物を知ることが大切です。
地学はこんなにも生活に密着した大事な学問なのに、
学校の教育が興味を持たせてくれないのは嘆かわしいことです。


僕が学んだ鉱物の知識は、デザイナーの仕事にも役立っています。
例えば鍋などに使われるホーロー。
ホーローは金属板の上に石の粉を粘土状にして塗り、
それを高温で磁器処理してガラス質に変えたものです。
この材質が、ホワイトボードにうってつけであることをご存知ですか?
市販のプラスチック製のホワイトボードは使うと黒ずんできますが、
ホーローのガラス質なら文字の写りも良く、消しても汚れを残しません。
僕は良いホワイトボードが欲しくて、小さいのを自分用に作りました。
今でもどこかが製品化してくれないかと期待しつつ、デザインを考えています。
こんな発想も、元々は水晶への関心から生まれたものなのです。


次回は、水晶の持つ宗教性や精神性について考えてみようと思います。


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