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サラ・ペイリン氏のメガネと、これからのKazuo Kawasakiメガネ 3

2008-12-03 18:34:00 | 過去のBlog記事

メガネのデザインというと、普通は形だけのデザイン、と考えるでしょう。
でも僕は、メガネをデザインする場合、独自の計算式・数式を用いて部品数を決定したり、
新素材を開発する、というところから行ないます。
「軽さ」と「かけ心地のよさ」というのが、僕の一番のメガネ開発のテーマなので、
そこからはじめないといけないのです。



数学的にメガネをデザインするということは、まず、部品を最小化する条件をあみ出して、
それに基づいた設計値で、そこにアイデアを集約していくということです。
ペイリン氏がかけているモデルだと、部品は23点しか使われていないんですよ。
これはメガネの部品数としては驚異的な少なさです。
最小値は次に19。17までは想像がついていて、素材開発を追いかけています。



素材に関しては、肌に一番やさしくて金属アレルギーを起こさない、とか、
紫外線や整髪料の影響をうけない、といった素材を科学的に開発していきます。



安物のメガネの一番まずいのは、鼻あてパットがシリコン系のものは、
かなり安物が使われているということです。
それだと、どんなにそこのところに紫外線のUVクリームを塗っていても、
そこは完全にレンズ効果となってしまって紫外線をうけてしまいます。
将来、必ずシミになります。
それに、シリコン系というのは、生体との適合性がないので、
人間の皮膚には非常に悪いんです。
昔は胸を大きくするときにシリコンを入れたりしたようですけど、
あれももう全面的に禁止になりました。


僕のメガネの場合は、シリコン系の素材を使っていません。
高密度なポリマーで作るエラストマーというエンジニアリングプラスチックスがあって、
それを耳あての部分などに応用しているんです。
これは、肌にとまったときのかけ心地が非常に快適で、
整髪料や紫外線に対する、経年変化はありません。



ペイリン氏が使っているMP704の場合、
フレームに平板のβ-チタンを使っているのですが、
見た目は金属の平板だから重いんじゃないかなと思っても、
実際にかけてみるとめちゃくちゃ軽いんです。
それに金属アレルギーの人も全然大丈夫です。
これは、β-チタンの原子構造が体心立方構造になっているからです。
その次のモデルのMP705は、β-チタンところを全部エラストマーで作ったんですが、
それはもっと軽いです。



また、僕が発明したと言える「アンチテンション」という仕組みによって、
全然ネジ留めしなくても、どんなに厚いレンズの人でも
レンズを留められるようになっています。
これで、ネジ留めの箇所に起こる歪みが改善されました。



形や値段ばかり意識せず、そのような視点で日本人もメガネを
選んでくれたらいいなと思います。
だからといって、僕のメガネも2万8千円から3万6千円ぐらいまでですから、
そんなに高価なわけでもないですし、僕のメガネは、フレームの色も多様で、
レンズの形も自由に選べるので、どんな方でも
似合うメガネに出合えると確信しています。



Kazuo Kawasakiシリーズのメガネは、
毎年新しいモデルを秋にパリで発表するのですが、
今年はペイリン氏のメガネブームで発注が大幅に増えていている、
ということもあって、シルモ(国際的なメガネ見本市)には
新作を出しませんでした。
じゃあ、来年、川崎は何を提案してくるのか、と思われているところに、
みんながアッと驚くメガネを発表しなければなりません。
とても厳しい戦場です。
そこで次回作は、「テレグラス」を発表します。
僕は、この新世代のメガネで革命を起こしてやろうと思っています。
これは、『スタートレック』という映画で
「スカウター」と呼ばれているツールがあるんですが、
まさにそんなメガネ。SFの世界が実現できたんです。



これは、一言でいうと、レンズのないメガネです。
レンズのないメガネって?! と驚くかもしれませんが、
もう発売もしているんですよ。
去年増永眼鏡から発売した13万円くらいのテレグラスでは、
2メートル先に45インチの映像が見えるんです。
リアリティの世界の中にバーチャルリアリティの世界が見える、というわけです。
いずれは、瞬きをすれば、それでデジタルカメラで写真が撮れちゃうとか、
何百倍もの双眼鏡をつけた状態でものがみえるとか、
そういう未来の道具みたいなテレグラスを開発したいと思っています。



手術のときに医者がかけられるテレグラスの開発がちょうど最近終わったので、
来年の頭くらいには、2メートル先に65インチの映像が見える
新作のテレグラスが発表できると思います。お楽しみに!




kawasaki1030_5

耳かけは、メガネ用語では「モダン」と呼ばれている。
この部品は、耳への負担・体感重量的なバランスや、
整髪料などの影響を受けずに、肌との接触面の性能と機能が不可欠。
そのために、「高密度ポリマーのエラストマー」素材開発によって、
これまでシリコンであったことを革新し、経年変化は起こらない。



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メガネフレームにインダストリアルデザインが導入されたことで、
素材開発・イオン化傾向による腐食防止・超軽量化、
さらに、生産性の合理化と簡素化によって、
精度ある高品質性を確立できている。
結果、通常のリムレスなどのフレームは46から58部品であるが、
MP-704はその半分の23点のパーツで構成され、
構造的には、より弾性的で軽量化、品質精度の向上により
「進化」したメガネフレーム商品に仕上がっている。



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MP-705は、テンプルそのものまでを
「高密度ポリマーのエラストマー」によって、
MP-704よりも、さらに軽量なフレームを商品化している。



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さらに、よりメガネをレンズから解放し、
プリズムやデジタル的な視界獲得器具として、
いわゆる「スカウター」開発に向かっている。
これがそうしたコンセプトや実装設計をめざした提案スケッチである。



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いよいよ完成間近になってきた、「スカウター」。Teleglass T7
これがこれからの眼鏡というか、新しいメガネ。
プリズムと液晶、やがては有機ELによって、
眼前2mに65インチのHi-Visionが見える。
瞬きで、デジタルカメラを作動させたり、
望遠鏡として400倍までの遠方まで見える。
さらに医療手術用を現在開発中。
これでノートパソコンの時代も終わるだろう。
2008年度グッドデザイン賞受賞。



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眼前2mに65インチ画面。片眼の使用。Teleglass T8



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これは通常のメガネフレームに取り付けたり、
サングラスに付けて使用可能。
これからのパソコンは、これをモニターとして、
キーボードを机上に投影するだけでよい。
デジタルカメラはじめ、バーチャル画面からリアリティ画面まで
様々なモニタリングを可能にしている。Teleglass T9




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