泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

夏目漱石の家

2023-02-20 13:22:41 | 
 そして、熊本は文学の街でもありました。
 これも仙台と似ていて、私が引かれた大きな理由だったと、行ってみてわかりました。
 泊まったホテルの600メートルくらい先に、かつて夏目漱石が暮らしていた家が残っていました。
 その日は4時半まで公開されていて、入場無料、さらに解説してくれる方もおりました。フルマラソンの後だったのですが、間に合ってよかった。
 先人の作家の家に遊びに行くのは3軒目でしょうか。調布にある武者小路実篤、津軽の太宰治、そして熊本時代の夏目漱石。
 英語教師として四国の松山に赴任した後、熊本の五校の教師となり、4年も暮らしていた。その後、イギリスに留学。
 熊本時代、結婚して子供も産まれた。寺田寅彦が五校の生徒で、泊めてくれと懇願されたこともあった。
 大型犬を飼っていたとは知らなかった。
 その犬、通行人に噛みついて警察沙汰になったとか。漱石は、噛まれる人は愛想がなく、犬に対して嫌悪感も抱いており、犬ばかり悪いわけじゃないと警察に言ったとか。
 でも、あろうことか、その後、帰宅したご主人もまたその犬に噛まれたそうです。で、猫派になったのかなあ。
 貴重な直筆原稿もありました。

 机の前に座って、読書することもできます。

 正岡子規に送って、○をつけられて返された俳句もあった。
 洋間には肖像画が。
 ここにも全集などそろっていて、読書できます。

 仙台の東北大学図書館には、漱石の弟子である小宮豊隆が館長だったつながりで、漱石の蔵書が保管されています。戦時中に焼失することを避けるためでした。
 
 熊本には、書店も多かった。アーケード街を歩いただけでも古書店3店舗、新刊書店2店舗。
 そして、少し離れたところに、行きたかった「長崎次郎書店」があります。


 明治の創業。大きなお店ではありませんが、品揃えが素晴らしかった。
 熊本にはまだまだ作家がいて、石牟礼道子さんもその一人。石牟礼さんの本を3冊買いました。
「星の王子さま」を翻訳した内藤濯もまた、この長崎次郎書店の近くで生まれたとは知らなかった。
 2階はカフェになっており、本を読みながら、コーヒーとフレンチトーストとプリンと漱石饅頭をいただきました。

 作家たちは、文学を受け継いで、新しい文学を自分で作って、次の人たちに手渡していく。
 その気持ち、その言葉が、やっぱり愛おしいと、改めて感じました。
 その土地でなければ感じられないことでもあります。
 ほんと、十分に体験できてよかった。
 あの家で、漱石も昼寝していた。飼い犬に噛まれた。我が妻、我が子を抱いた。
 作家の芽は育っていた。豊かな熊本の地で。すくすくと。

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