泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

下積みは嘘をつかない

2023-05-10 20:47:13 | フォトエッセイ
 写真は、少し前の「もみじ」です。
 正確には「いろはもみじ」。春に小さな花をたくさんつけ、その後に実を結びます。赤くなっているところが実であり、種。
 これが風に乗って飛んでいく。「タケコプター」みたいな形ですが、そのように飛ぶのかは、確認したことがないので不明です。

 で、書いておきたいことは、タイトルにある通り。
「下積みは嘘をつかない」 今の私を支えている言葉。
 小説は、日々、少しずつ進んでいます。ひねり出して一日二行という日もありました。
 たかが二行、されど二行。
 今は対話の場面で、とても慎重になっています。
 人と人が向かい合い、話し合うとき、いろんなことが流れている。
 その人の歴史が滲みもする。欲望がちらつきもする。己が縮んだり、伸びたり、怒ったり、震えたり。
 その生きた蠢きを、どう書くのか。どう書けるのか。
 そもそも、この主人公を、自分はどれだけ理解できているのか、いつも問われています。
 で、書けなくなる。じっと、想像する。
 それでいいんだとも思います。集中力が必要とされる仕事だから。
 思っているだけで、次への準備となってつながっていくから。

 そう、下積みは嘘をつかない。
 木を見ていればわかる。種から芽を出して、立派な一本の木になるまで、どれだけの水と土と光が必要だったか。
 私の二行も、山から滲み出した清水のよう。あるいは、長い年月を経てできた地層から滲み出す、ほんの一滴、一滴。
 そう、人にも地層がある。
 書く上では、やはりどれだけ読んできたか。何を、どう読んできたか。
 それに経験。どれだけ、なぜ、どのように体験したのか。その適切な言語化はできているのか。

 先日、市議会議員と市長の選挙がありました。
 いつも近くの母校の中学校に投票に行きます。
 そこにはいつも同級生で公務員の彼がいます。S君と言っておきます。
 S君とは、中一と中三で同じクラスだった(らしい)。
 彼は、選挙会場の設営と管理の責任者になっていました。
 で、少し立ち話をしました。
 S君は、こう言ってくれました。
「もどかしいかもしれないけれど、大器晩成が一番だよ」と。
 また救われました。
 S君は、いつも、と言っても選挙のときしか顔を合わさないけど、軽妙に励まし、応援してくれる。ありがたい同級生。

 ほんの一滴、一滴でも、コップに溜まればおいしいコーヒーにもなる。
 大河が、もともとは山から滲み出た一滴、一滴の集まりであるのと同じで、小説も、一行一行が、やがて大きな流れとなって、作者も読書も見たことのない景色に連れて行ってくれる。その大きな流れを作り出してくれるのが、日々の一滴、一滴、一行、一行。マラソンでも、その一歩ずつが、着実にゴールに近づけるように。
 フルマラソンを、9回も完走できた。
 応援してくれる人がいる。楽しみにしてくれる人がいる。心身の健康を保つ術も身につけた。息抜きの方法も持っている。
 だから、大丈夫。
 そんなことを思いながら、小説を進めております。
 一行、一行。
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トラタのりんご | トップ | ファウスト 第一部 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

フォトエッセイ」カテゴリの最新記事