2022年  にっぽん復興へのシナリオ

日本が復興を遂げていく道筋を描いた近未来小説と、今日の様々な政治や社会問題についての私なりの考えや提案を順次掲載します。

四.復興へのシナリオ(2)

2012-01-29 15:20:34 | 小説
 情報公開法は2014年に大幅に改正された。

 ・トランスペアレンシー(政府情報の透明な公開)
 ・パーティシペーション(国民参加型の政府)
 ・コラボレーション(国民組織との協働型政府)

 これは、2009年に就任したオバマ大統領が掲げた『開かれた政府(オープン・ガバメント)』の3原則である。

 オバマ大統領は、就任直後のビッグ3の経営破たんやリーマン・ショック、戦費高騰による財政危機など様々な危機的状況に遭遇し、その救済のために巨額の財政悪化をもたらしたため評価は分かれたが、危機的状況を何とか乗り越えてきた大きな要因の一つがこの『開かれた政府』にあったことに異論をはさむ人は少ない。
 危機を隠さず、国民と問題を共有化し、国民の英知とパワーを結集して危機を乗り越えようとする考え方である。

 日本では、東関東大震災で発生した原子力発電所の事故の際に、初動時における情報開示の遅さが後々大きな社会不安を招いた。
 事故当初から、市民からは放射能汚染状況の詳細な情報提供を求める声が高まったが、政府が『人体にはすぐに影響が出る範囲ではありません』など抽象的な説明に終始したため、市民の不安は増すばかりであった。
 疑心暗鬼にかられた市民の間では風評被害も広がり、それが海外にも増幅されて伝わったことで、農業・畜産・漁業などへ計り知れない影響が出た。

 その後、自治体を中心に日々の計測結果をインターネットと通じて提供する動きが活発になったものの、食品を中心とした風評被害を抑えるにはかなりの時間を要した。初期段階における政府の情報公開上の決定的なミスは、政権を追い詰めただけでなく行政訴訟にまで発展し、長く政府を苦しめる結果になった。

 こうした反省も踏まえて、M総理が主導した復興五原則に『透明な政府の実現』が組み込まれ、政府の情報公開のあり方や、民間参加や民間との協働によるピンポイント情報の収集などに関して徹底した論議が巻き起こった。
 政府は、政治学や情報学に関する内外の権威をメンバーとした『開かれた政府に向けた検討部会』を設け、そこでまとめられた大綱をもとにして、2014年に情報公開法の改正を行った。

 改正情報公開法のポイントは、次の点にある。

 一.国防、外交、司法、安全保障、個人情報等に係る特殊な情報を除き、国民からの請求行為の有無に関わらず、国民生活に関わる全ての情報は公開を原則とする
 二.公開された情報は、その管理部局の署名を付すことで責任の所在を明らかにする
 三.国民は必要な情報が開示されないことに対する不服申し立てを行う権利を有する
 四.議会で議論された内容はリアルタイムで国民に提供し、議案に対する国民の賛否の傾向をモニタリング可能な仕組みを導入する
 五.政府は地方公共団体及び民間団体と連携し密度の濃い情報収集に努める義務を有し、収集された情報を緊急度に応じたランクに分類し国民への情報公開を図る
 六.上記公開基準はそれを管轄する部局に委ねるが、それを監視する第三者委員会を設け、情報提供の適切な運用状況を常時監視するとともに、国民からの苦情等を受付け適切な対応を図る

 以上のように、行政側にとってはかなり厳しい内容である。

 
 また、市民が気付いた情報を行政に通知する専用サイトが設けられており、例えば道路の陥没やごみの不法投棄、危険が伴う個所など、市民生活上のあらゆる情報を通知することができる。
 行政は、通知された内容に迅速に対応することが義務付けられており、その進捗状況や対応結果は、サイトを通じて公開される。通知後24時間以内に何らの回答や対応が行われなかった場合は、行政の不作為と見做され糾弾されることになる。
 もちろん、事実無根の通知に対する市民への罰則も規定されている。通知の際は電子署名を付すことになっており、それで通知者を特定することができるため、摘発は容易に可能である。

 このように、改定情報公開法は行政からの一方通行の情報だけではなく、市民と行政をつなぐ双方向の情報流通を促進することを目的としたものである。


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