2022年  にっぽん復興へのシナリオ

日本が復興を遂げていく道筋を描いた近未来小説と、今日の様々な政治や社会問題についての私なりの考えや提案を順次掲載します。

近未来小説「未来への遺言」を明日発刊します

2015-03-31 23:02:37 | 小説

すでにfacebookではお知らせしましたが、近未来小説「未来への遺言」が、明日4月1日より文芸社より発刊されます。

この小説は、社会保障改革に向けた私なりの処方箋について、2018年の近未来に舞台を借りて物語として書き下ろしたものです。
年金、医療保険、育児・介護制度、社会扶助制度の改革のシナリオがその柱です。 

そこで、若干ですが本文で語られた言葉を引用して簡単に内容をご紹介します。

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「6月に私が総理を拝命して以来、水面下で準備を進めてきた最も重要な課題があります。それは社会保障の抜本改革です。ご承知のとおり、わが国の社会保障制度は危機に瀕しており、もはや一刻の猶予も許されない状況に追い込まれております。釈迦に説法のようで大変恐縮ではありますが、これは一歩誤れば国を滅ぼしかねない深刻な問題であることは確実です。」

村元総理は、冷めたお茶を一気に喉に流し込むと言葉を続けた。「前の政権が行った大胆な金融緩和や一連の財政政策の結果、デフレ状態から脱却できたと言われますが、肝心の安定的な成長路線に乗せることはできませんでした。このまま放置すれば、スタグフレーションに陥る危険さえ考えられます。円安で輸出産業の営業利益増ばかりが盛んに宣伝されていますが、実態は原油をはじめとする輸入価格の高騰で苦境に立たされている企業のほうがはるかに多い。資源に乏しく輸入への依存度が高いわが国にとっては、円安はじわじわと経済を疲弊させる要因になることは明確です。毎年のように営業利益を上方修正している輸出産業も、今後の経済危機を見越して利益を内部留保せざるを得ない状況です。金融緩和や財政出動などの政策は、企業の利益を高めることで賃金が上昇し、国民の裁量所得を増やすことで内需を拡大するという狙いがありましたが、肝心の輸出産業が利益を内部留保してしまえば、成長戦略など絵に描いた餅も同然です。少しばかりの賃上げでは、輸入価格の上昇には追いつけないのは目に見えています。その上、さらに消費税増税が追い打ちをかけ、国民は消費を拡大するどころではない状態にあります」

「これまで、こうした困難な状況を打開するために、年金受給開始年齢の引き上げや、高齢者医療費の自己負担率の引き上げなどが実施されてきましたが、これらはいずれも対症療法であり、危機に瀕している社会保障制度の抜本的解決にはつながっておりません。

私は、わが国の社会保障制度を原点から見直し、長年にわたる制度のなかにひそむ非効率な要素を極力排除し、筋肉質で最大限の効率性が得られる制度に再構築することが重要であると考えております。
世界有数のセーフティネットを有した社会の実現を意図するものであります。セーフティネットを強固なものにすることは、国民の将来への不安を軽減することにつながり、多くの国民が将来への憂い無く希望を持って社会活動に邁進できる社会を実現することで、ひいてはわが国の力強い成長に向けた重要な施策であると考えます。」

祐一郎が示した論点は、次の4点である。
① 年金制度
年金受給開始年齢を将来にわたり後ろ倒しすることなく、且つ全ての年金生活者が健康で文化的な生活を営むことを可能とする持続可能な年金制度のあり方

② 医療保険制度
国民皆保険制度を前提とし、全ての国民が財産の多寡や居住地域等に影響されることなく、適切な医療サービスを受けることが可能な医療保険制度のあり方

③ 育児・介護制度
国民が、育児・介護に伴う人的・経済的負担等によって社会活動に制約を生じさせないことを前提とした、適切な育児・介護サービス体制のあり方

④ 社会的弱者への救済制度
高齢者、障害者、生活困窮者等、社会的弱者が、健康で文化的な生活を営むことを可能とする社会的セーフティネットの充実を目的とした制度運営のあり方

「以上掲げた論点は、社会保障改革本部の活動目標とお考えいただきたい。いずれの目標も、国民が現在および将来に不安を感じることなく生活を営む上で必要最小限のセーフティネットであります。もちろん、こうしたセーフティネットを構築するには、様々な角度からの見直しが必要で、場合によっては現行制度の再構築が求められると思います。」

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こうして改革計画がスタートし、紆余曲折の末、改革法案が国会を通過するまでを描きました。

社会保障改革は、この物語で語られるほど生易しい問題ではないことは百も承知の上ですが、あえて抜本的改革に着手しない限り未来の生活は危機に瀕するという危機感から書いたものです。

もっとも、小説という体裁をとりましたので、初稿で書いた細かな数式や図表の類は省きました。
折を見ながら、このブログで本では書けなかった私なりの改革の考え方についてご紹介して参りたいと思っています。

また、この小説は法案が成立するまでで終わっていますが、実際には施行までの経過で様々な各論による議論が巻き起こるのは言うまでもありません。 
むしろ、利害を巡った壮絶なバトルが展開されることになるでしょう。
しかし、そうした経過については枚数の関係から今回は省き、機会があれば続編で描きたいと思います。

まずは、皆様の忌憚ないご意見を頂けたら、著者として幸いに存じます。 

なお、本書はAMAZONなどで予約を受け付けております。

未来への遺言 理想的国家を目指して立ち上がった人々の物語
安達 和夫
文芸社

 

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