2022年  にっぽん復興へのシナリオ

日本が復興を遂げていく道筋を描いた近未来小説と、今日の様々な政治や社会問題についての私なりの考えや提案を順次掲載します。

【雑感-10】ストックホルムからの手紙(2)

2013-01-16 00:27:55 | 日記

スウェーデンの友人から、Dagens Nyheter新聞に1月5日に掲載された『西側諸国は負債のトラウマに悩まされる』という記事が送られてきました。
国土強靭化計画を始めとする一連の経済政策に世界の目が集まっているだけに、日本発の成功モデルとなることを祈らざるを得ません。

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これまで我々は、負債を蓄積している日本が1990年の危機の際に行った負債解消努力が完全に失敗していると見ており、慢性的な経済成長、急激に拡大する国家負債が“日本病”の病巣と見なしてきた。

今では20年前に“太陽が最初に上がる国”で発生した事が欧米で発生している。1980年代には不動産バブルが最高潮に達し、銀行は際限も無く貸し出しを行い投機熱を煽った時期であったが、バブルが弾けると沈黙した。その後に日本では商業用地の価格が86%も下落し、同時に民間部門は支出から貯蓄、負債返済に回ったが、今や米、英、スペイン、アイルランドで同じ現象が発生している。消費、投資が減少し、需要を維持しようと中銀は金利をゼロに近づけ、日銀が1990年代に行った事を実施している。

世界の経済学は学生に、個人消費が下がれば金利を下げ、貯蓄を下げて、消費・投資を刺激するように教えている。しかし、90年代の日本そして現在の欧米では金利がゼロに近づいても消費者、企業が消費、投資を控えている。状況はケインズが70年前に指摘した流動資金不足であり、“The holy grail of macroeconomics”と日系アメリカ人、リチャード・竜が指摘する事であり、企業は益極大化を目指すべきではないという教義だ。

負債は1929年の恐慌時のトラウマになり、30年代の危機に育てられた世代が「貯蓄は美徳で借金は蔑視すべき」と結論づけている。同じ考えが90年代の日本で発生したが、今の欧米で同じパターンが見られる。こうした姿勢が実質経済に劇的な影響を及ぼし、需要が無くなり、益々物価が下がる悪循環が発生させ、逆説的に危機を悪化させ、負債を拡大させている。

エコノミスト、アービン・フィッシャーはこの現象を“負債デフレ"と呼んでいる。民間部門での貯蓄が強化されれば国家歳入(税収)が減少し、その補てんの為の増税はこの下降現象を強化させるだけだ。責任ある政策は国家が一時的に負債を増加させ、需要を維持する事だ。日本は1990年代に危機が高まった時にこの手法を採用し、誰もが貸し渋りをする時に赤字予算を実施した。企業は貯蓄し、負債返済をその後15年間継続させたが、IMFや他の国際機関は盛んに日本政府に予算削減を推薦していた。だが、そうしなかった日本政府をいまや見直している。

日本の経験は非常に興味深い。1990年以降も日本の失業は6%を超えた事は無く、社会不安を避ける事が出来た。さらに、日本の国債金利はIMFが予想したのとは逆に引き続き記録的に低くなり、リチャード・竜が指摘したようになった。国家負債はBNPの220%に匹敵するが、大部分の負債は国内で調達され、経済が成長するにつれて多分下がるだろう。この事は現在の欧米と比較される。

ユーロゾーンの失業は11.8%であり、BNPは減少を続けている。英は緊縮政策を実施したために戦後最悪の景気後退を経験している。日本は幾つかの点で批判されており、著名なエコノミストのベンナンキ、ポール・クルーグマン(ノーベル賞受賞者)、スウェーデン中銀理事のスベンソンが推薦する一連の金融改革を実施しなかった。だが日本は他国と比較してよく経済経営を行っている。欧米では予算赤字が高い支出に繋がると考え、既存の遊休資源を有効活用するとは考えない。

リチャード・竜は我々が驚く事を指摘をしている。経済が金融危機、そしてその後に続く個人の負債危機に襲われた時には、需要が下がるので更に借金を高めるべきだと彼は主張するのだ。経済が回復する時に政府は負債を返済すればよいのであって、それはBNPが成長する事で容易になる。ヨーロッパの締め付け政策は1930年代での危機の対処失敗を繰り返すだけであり、不況を長引かすだけだ。日本の例は成功の神話ではない。だが西側世界と比較すると模範例として映るようになっている。



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