2022年  にっぽん復興へのシナリオ

日本が復興を遂げていく道筋を描いた近未来小説と、今日の様々な政治や社会問題についての私なりの考えや提案を順次掲載します。

【雑感-4】政府は統合された単一のエンタープライズである

2012-03-09 01:00:00 | 日記
 表題に掲げた言葉は、米国連邦政府チーフアーキテクトのリチャード・バーク氏が、講演で連邦政府のシステム改革の最終目標として紹介された言葉です。
 筆者は、その講演会が開かれた週の前半にデンマークとスウェーデンの視察から帰ったばかりで、彼の地で聞いてきた政府の在り様と日本の現実とのギャップのはざまで、頭の中がもやもやしている最中にこの言葉に接し、妙に自分自身の頭が整理された気になりました。

 2週間の北欧2か国の旅では、14機関の政府関係者と2社の民間企業の責任者とお会いして情報交換をしてきましたが、そこで最も感じたことは、政府機関や民間機関が極めて密接に連携して、スリムで効率的な社会を形成していることでした。
 それぞれの政府機関には明確な目標があり、仕事の範囲と領域が法律によって整理されていることは日本と同様ですが、そうした各機関同士が情報を介して無駄なく緊密につながっていることに正直新鮮な驚きを感じました。

 例えば、新しく事業を立ち上げたい人が会社の登記を行うとします。
 会社登記を行う役所に申請をすると、その会社が本当に信頼のおける会社かどうかのチェックを行う機関(税金省や企業省など)に登記申請情報が回ります。それぞれの役所で様々な確認を行い、回答が登記を行う役所に返されます。OKの返事がでれば晴れて企業が誕生することになります。

 さらに、従業員の給与支給額などの情報は毎年税金省に寄せられますが、この情報は企業に働いている従業員数(正社員・パート従業員など)を把握するための情報として雇用省や統計省などに送られ、雇用政策や統計上のデータなどとして活用されています。また、雇用助成金を企業に支給する社会保険省では、勤務実態の把握などにこの情報が活用されます。
 データベースをそれぞれの監督省庁で共有しているため、企業は年次事業報告や税務申告を行うだけで、それ以外の各種調査(企業実態調査や労働実態調査など)に協力する必要はなくなります。
 また、一度登録した情報はさまざまに活用されるため、手続の都度登録を求めることはなく、企業側の負担もかなり軽減されているようです。

 市民も同様で、例えば子供が生まれると病院の医師や看護師が出生申請をオンラインで行います。申請情報は関係省庁に回され、育児手当を管轄している社会保険省は、育児手当金を親の口座に自動的に振り込んでくれます。
 この間、一切手続きの必要はありません。

 デンマークもスウェーデンも番号制度が定着しています。そうした番号による情報連携の仕組みができているので、行政同士の情報のつながりが保てるのが事実ですが、それ以前に、行政組織がきわめて効率的に配備され、互いに連携をとって仕事が遂行されていることが私にとっての驚きでした。


 「政府は統合された単一のエンタープライズである」

 まさに、こうした理念を肌で感じてきました。

 北欧諸国は行政間の役割を明確にしている国であると、よく言われています。
 こうした機能分担は自治体でも徹底しており、例えば病院や高校以上の高等教育は県が主管し、介護や気味教育は市町村といった具合に、行政の守備範囲が明確に決められています。

 守備範囲を明確に規定し、それぞれの役割で機能することで、効率的な行政が実現できていると考えてもおかしくないと思います。

 また、政府機関の人がさかんに使う言葉に「カスタマー」という言葉があります。これは、一般的な市民や企業を指している言葉です。
 政府や行政は、カスタマーである市民や企業に奉仕することが使命であるという、ごく当たり前の理念が、彼らの意識に浸透していると思われます。

 市民にとってより良いサービスを効率的に実現していくこと、それが彼らの行動原理になっているようです。

 「○○の業務を改善したことで、△△人の人員を減らすことができた。しかし我々はそれでは満足していない。数年先にさらに◎◎人まで人員を減らすことを目標にしてプロジェクトを進めている」といった目標値を、多数の役所で聞かされました。
 日本の現状を知る私にとっては、まさに驚天動地ともいえる行政官の発言でした。

 こうした行政官の意識の根底には、行政組織のなかで社会人人生の一生を捧げる人はきわめて少ないことも原因しているように思います。
 終身雇用を前提とした組織に入ると、人は必然的に組織の強化や発展を中心とした目標の達成に情熱を燃やします。しかし、彼らのように組織ありきの自分ではなく、自分のキャリアの一環として組織を見つめる目線を持てば、おそらく全く違った見え方ができるのかもしれません。

 リチャード・バーク氏は、講演の後にフロアーからの質問に答えて次のように答えていました。
 「アメリカでも組織間の壁は高いが、それはあくまで行政官としての誇りと自己主張が強いからである」
 この返事を聞いて、おそらくアメリカの行政社会も自分中心の組織なのだと思いました。

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