加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

総括ライブドア対フジテレビ(その6):本当のCSRとは何か?

2005-08-04 01:13:58 | Weblog
 最近企業のCSRが強調されるようになってきました。関連のシンポジウムなども多く開催され「CSRバブル」と言う言葉も聴かれるほどです。しかし、私の解釈によると「本当のCSRとは何か?」について理解されているとは言えないように思います。
 市民社会の基本原理は、すべてのヒトは生まれながらにヒトとして扱われる権利を持っていると言うことです。しかし近代以降、社会はヒトに加えて「法人」と言う奇妙なヒトを生み出してしまいました。会社は法人の典型ですが、法人は生まれながらのヒトではありません。それは単なるモノです。その単なるモノが法律上ヒトとして扱われているのです。
 なぜ、社会は法人をヒトとして承認しているのでしょうか。それは、岩井克人・東京大学教授が『会社は誰のものか』(2005)で指摘しているように、法人が社会にとって何らかのプラスの価値を持っているからです。逆に言うと、社会にとってプラスの価値を有している限りにおいて、社会は法人をヒトとして認めるということになります。
 そうすると、法人企業としての会社の存在意義を、利益の最大化に限定する必要ないことがわかります。会社の社会的価値とは、まさに社会が決めていく価値であり、そこに市民社会の要請が入っていくことが必要になるのです。
 この社会的価値が具体的にどのような内容であるかは、時代によって、社会によって変わっていきます。CSRについては、よく「CSRはお得です」という言い方がされ、会社の持続的発展に必要なものであるような言い方がされますが、そもそも法人企業たる会社が存在を認められるのは、環境、福祉、子育てなど市民社会の要請を満たしている限りなのです。
 「社会」と言う言葉はもともと日本語にはありませんでした。個人を超えた世界を表す言葉は「世間」しかなかったのです。明治に入って英語の「Society」をいかに日本語に翻訳するのかが問題となりました。「Company」を「会社」と訳した西周は、「Society」は非営利だからその逆だと考え、漢字の順番を入れ替えて「Society」の訳語として「社会」としたのです。
 これは本当の”迷”訳でした。本来は「Society」と「Company」は同質の言葉であり、「Company」の延長線に「Society」があるのです。
 歴史的に見れば、資本主義的な法人企業というのは新しい現象であって、最初に生まれた法人は都市や僧院や大学などです。まさにNPOが法人の出発点なのです。しかもP・ドラッカーが指摘しているように、世界最古のNPOは法隆寺などの日本のお寺なのです。
 したがって、法人企業がその存在を認められる以上、常に環境、福祉、子育てなど市民社会の要請を満たしていく必要があるのです。また、法人企業にいろいろなタイプがあってもよく、配当しない会社もあってもいいと言うことになります。現にアメリカでは、501(C)3という非営利の会社と言う存在が認められています。

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