加藤敏春ブログ:21世紀の経済評論を語る!

2000年度東洋経済・高橋亀吉最優秀賞等を受賞。地域通貨「エコマネー」提唱者。

総括ライブドア対フジテレビ(その4):マネーの意味も変質する①

2005-08-02 01:10:20 | Weblog
 資本主義の第4段階におけるマネーの意味が変質することを、今回は取り上げて見ましょう。
 第2段階、第3段階においては、リスクをとるのは事業を興す企業家でした。金融機関の役割はそれへの円滑なファイナンスであり、リスクをとる必要はなかったのです。しかし、第4段階における金融とは、まだモノとしては何者でもないアイデアを具体的なモノの形に変換していくプロセスに対して、おカネを貸すことになります。金融機関もリスクをとるようになるのです。
 このことを明確に指摘したのは、『経済発展の理論』において「イノベーション」論を展開したJ・シュンペーターですが、これは会社がもともとの発生形態に戻っていくことを意味します。
 拙著『エコマネーはマネーを駆逐する』(2002)で指摘したように、会社の起源は一般に言われているように16世紀の東インド会社ではなく、3、4世紀の地中海交易の2つの事業形態に見出すことができます。この点に関して、私は『エコマネーはマネーを駆逐する』(2002)で以下のように書いています。

 「・・・歴史学者である大塚久夫氏の説くところによれば、この流れを受けて中世のイタリアでは、次のような「コンメンダ」、「ソキエタス」という形態のパートナーシップが隆盛し、ここに資本主義のメインプレーヤーである株式会社の起源が存在するのである。株式会社は、16世紀イギリスが東インド会社を設立したときに始まったと一般には考えられているが、その起源はもっと古いのである。
 「コンメンダ」…・資金提供者と労働提供者とのパートナーシップ
 「ソキエタス」…・資金および労働を提供し合う者同士のパートナーシップ
 イスラーム世界においては、これらと正確に対応する概念が存在した。すでにおわかりであろう。前者が「ムダーラバ」、後者が「ムシャーラカ」である。このように、イスラームのパートナーシップは、資本主義や株式会社の起源とその源流を共通にしているのである。
 そして、少なくともヨーロッパ中世のある時点までは、近代において決定的になった事業家(労働)の資本家(金銭)に対する従属という関係は顕著ではなく、両者はパートナーシップを基礎とした対等な立場を維持し続けていたのである。このような歴史を振り返ると、本来リスク分担方式によるパートナーシップが経済活動の主流であり、現在のように主たる担い手が会社組織となるに至ったのは、わずか100年ほどにすぎないことが明らかとなる。
 パートナーシップ契約は、継続的な事業を遂行することを目的として二人以上のパートナーが出資および業務の執行に当たるものであるが、出資に関しては金銭ばかりではなく、一定の条件下で提供される役務サービスも含まれる。これにより金銭を出資するマネー・パートナーと事業に携わる業務執行パートナーの存在が可能となるのである。
 パートナーシップに基礎をおくイスラーム銀行論は、現代金融システムの観点から見ても特殊なものではない。ある普遍的可能性を有するものであり、今後われわれが21世紀の金融システムを構築していく際の方向性を示している。
 それは、このパートナーシップ契約が、現代金融システムの最先端をいくアメリカのビジネス社会においても、活発に活用されていることに表れている。ベンチャービジネスにリスクマネーを供給するベンチャーキャピタルがパートナーシップ契約によって組成された組織によって運営されていることが端的な例である。また、日本での最近活用されている金融商品のレバレッジド・リースや金融機関の不良債権処理を円滑にする目的で考え出された特別目的会社は、いずれも匿名組合のスキームを基礎にしているが、この匿名組合はある種のパートナーシップである。
今後の金融方式は、銀行による間接金融から証券会社を中心として企業と投資家を結びつける直接金融に大きくシフトしていく方向にあるが、それとともにパートナーシップ契約の考え方がむしろ主流になってくるだろう・・・」。


最新の画像もっと見る