2.荘園領主との対立
黒田荘の荘園領主は東大寺(本所)である。
本所は、荘園の管理を大江氏(荘官)に任せ、収穫米の半分を年貢として徴収する。
病害や天候不順、災害により米の収穫量が減少した時は、
本所に年貢の減額を願い出ねばならない。
願いは十分には聞き入れられない。
荘園の方も、新たに開墾した土地や国衙領との争いで得た土地を
隠して、申告しない。
それらを調べるため、本所が代官を差し向ける。
また、本所は寺社造営のための材料や人を荘園に求める。(公事)
自然と荘園領主と荘官、村民の間に対立が起こる。
「大仏のために、なんで俺たちがこんなに搾り取られなければならないんだ!」
大江氏も本所の支配から抜け出し、この荘園の領主になりたい。
とうとう、大江氏は本所からの年貢や公事要求を拒否する。
大江氏は奈良からの道路をふさぎ、館を砦に変えた。
本所から役人が僧兵を引き連れ、荘園にやってくる。
乙次郎たち郎党や村民は太刀や鍬を構え、追い返す。
「楽をして上前を撥ねる奴らに渡す米はない!」
黒田荘は、東大寺の荘園として朝廷に認められている。
東大寺は、朝廷にこの不法行為を訴える。
「大江清定は仏法に背き、荘園をわがものにしようとする
“悪党(あくとう)”である。」
朝廷は、この紛争の解決を幕府に求める。
幕府は京都にある六波羅探題に“大江清定の懲罰”を命じた。
参考図:日本の歴史「走る悪党,蜂起する土民」、安田次郎、小学館、2008