先日、千葉県君津市の森の中で何やら面白い空間づくりをしているというので、見学がてら作業のお手伝いに行ってきました。
周りは一面のヒノキ林です。その林の中にぽっかりと空が切れとられ光が差し込んでいる場所に皮むきされた柱が立ち並んだ異質な空間が目に入ってきました。

写真のように木が地面から約4.5mのところで切り揃えられ、皮がむかれています。
話を聞くところによると、この立ち木を柱にして、この柱の上に梁をかけ、屋根をつくって建物らしきものをつくる計画なのだそうです。
通常、建物をつくるときにはコンクリートで基礎をつくり、そこに土台を固定して柱を立ててゆきます。
ここではコンクリートの基礎をつくること無しに、ヒノキの根が基礎の代わりとなっています。基礎をつくるお金も労力もかけず、コンクリートも使わず、現地にあるものを利用してのアイデアです。
この場所ならではの理にかなった方法であると感心してしまいました。
そのうち根が腐ってしまうのでは?という懸念もありますが、土台周りをしっかりとつくっておけば問題ないように思われますし、どう経年変化をしてゆくのかは長い目で観察をしてゆきたいと思います。
今回お手伝いしたのは、木を地上4.5mの高さで切るという作業です。
クレーン車などは使いません。使うのはチェーンソーとロープと知恵です。
木を4.5mの高さで切るのは大変危険な作業です。切っている途中で木が倒れてきたら思わぬ大怪我をするかもしれません。そこで安全を確保して作業をするために、ロープを使い木が不意に倒れてこないように準備をします。
そのロープワークに知恵がたくさん詰まっていたのでお伝えします。
ロープは2種類使います。1つは木を倒す方向に向けて掛けます。もう1つは倒す方向の反対側に倒れてしまわないように掛けます。この2本のロープで木が不意に倒れてしまわないように固定するわけです。
ロープの掛け方は、両方ともなるべく木の高い所に掛けます。
木を倒す方向には、木が倒れても障害がない方向を定め、その方向にピンポイントで木が倒れるようにロープを配置します。
倒す木から倒す方向に20mくらい離れた木にロープの端を固定し、倒す木の高い位置を通って、再び倒す木から倒す方向に20mくらい離れた別の木に滑車をつけて違う方向にロープを持ってゆきます。最終的にはこのロープを引いて木を倒します。
滑車をつけて違う方向にロープを持ってゆくのは倒れる方向に人がいると危険なので、別の安全な場所でロープを引くため、このようにします。
倒す方向の反対側のロープは倒す方向の逆側に平面で120度くらいの角度を持ってなるべく遠くの木にロープを固定します。倒す木から20~30mくらい離れた位置に固定しました。
さて、ここで問題です。
木の高い位置にどのようにしてロープをかけるのでしょうか?
写真に梯子が見えていますが、これは木をチャーンソーで切る為に使います。
木の高さはだいたい10~12mくらいあり、高さ10mくらいの位置にロープを掛けます。その辺りには小枝が出ており、そこにロープを掛けるのですが、いきなりロープを掛ける訳ではありません。
ここで使ったのはツリークライミングの技術です。
細い糸に砂の入った重り袋を付け、それを高所の小枝めがけて投げます。振り子のように砂袋を振り勢いを付け、狙いを定めて投げます。練習すればだんだん狙い通りのところに投げられるようになります。
うまく狙い通りの小枝に掛かったところで、細い糸にロープを結び、ロープを木に掛けるという手順です。1本目のロープを利用して2本目のロープも木に掛けます。
このようにロープで木を固定し安全を確保してから、梯子に上りチェーンソーで木に切れ目を入れます。その後で梯子を下り、安全を確かめてから倒す方向と反対側のロープを緩め、倒す方向のロープを引き、木を倒します。
木ひとつ倒すのにたくさんのノウハウの詰まった作業体験でした。
この日は3人の作業で、午前中に2本、午後に2本と計4本の木を高さ4.5mの位置で切りました。
持続可能な場づくりの実践がここでも着々と進んでいます。