給料日直後の金曜日は、暇だ。
みんな名駅前や栄の繁華街に出ていくようだ。
みんなで騒いで、すぐに帰宅の電車などに乗れるせいもある。
あまり人付き合いのない独身者くらいしか客がないことが多い。
あとは自営の店主などだ。
それでも珍しく若い人たちが来た。
原発のメンテをする会社に勤めている若者だ。
「せっかくの金曜日に、行くあてもないのかい?」
僕は少しからかってみた。
彼らはまじめに答えてくれた。
「彼女もいないし、金もないんです。僕たちのような出張の多い仕事は、なかなか彼女を見つけるチャンスもないし、事故以来、仕事が極端に減ってしまって、給料だってどうなるかわからないんです。ここならお値打ちにおいしいものが食べられるし、何たって、歩いて来れるしね」
嬉しがらせてくれる。
そこに来たのが、33歳の独身女性。
イベントが近いので、土曜日も出勤で、今日も残業だったらしい。
彼女はお酒は飲まない。
車で通勤してるから。
「マスター、ワンピース選んでくれない?」
いつも趣味のいい服を着ているのに、何が不満なんだろう、と僕は感じた。
「私が選ぶと全部ブラウン系になっちゃうの。違う色を選びたいけど、似合ってるかどうか不安で、一緒に見てほしいの」
彼女にも悩みがあるんだ。
清楚でかわいい人なのに、そんなお洒落の悩みがあるのだ。
次に現れたのは、46歳独身のサラリーマン。
最近お父さんが入院し、その介護などで疲れきっている。
気分転換も兼ねるせいか、最近頻度が高い。
「会社もやすまないかんし、親も見ないかんもんなぁ。そやけど、親には口でいえへんほど助けてもろとるんやから、俺がやったらなあかんわなぁ」
疲れの見える顔に、やっとのことで笑みを見せているのが分かる。
僕も両親の最期を看取った。
心身ともに疲れていた。
彼もそうだ。
みんなにちゃらんぽらんに見られている男の、ひたむきさを見た。
いつものように客がいたら話せない。
いい日だった。
人の心と悩みが見えたいい日だった。
夜が明けたら、僕は土山に行こうと思っている。
久美子さんにも会いたいし、無農薬農家の人にも話がある。
帰りには畑によって、少しでも雑草を刈りたい。
明日も明後日も、いい日になればいい。
明日も明後日も、人の心に触れられればうれしい。
月末の原稿を書く用意を持って、僕は仮眠を取ろうと思う。
いい日が続くことを祈りながら。
みんな名駅前や栄の繁華街に出ていくようだ。
みんなで騒いで、すぐに帰宅の電車などに乗れるせいもある。
あまり人付き合いのない独身者くらいしか客がないことが多い。
あとは自営の店主などだ。
それでも珍しく若い人たちが来た。
原発のメンテをする会社に勤めている若者だ。
「せっかくの金曜日に、行くあてもないのかい?」
僕は少しからかってみた。
彼らはまじめに答えてくれた。
「彼女もいないし、金もないんです。僕たちのような出張の多い仕事は、なかなか彼女を見つけるチャンスもないし、事故以来、仕事が極端に減ってしまって、給料だってどうなるかわからないんです。ここならお値打ちにおいしいものが食べられるし、何たって、歩いて来れるしね」
嬉しがらせてくれる。
そこに来たのが、33歳の独身女性。
イベントが近いので、土曜日も出勤で、今日も残業だったらしい。
彼女はお酒は飲まない。
車で通勤してるから。
「マスター、ワンピース選んでくれない?」
いつも趣味のいい服を着ているのに、何が不満なんだろう、と僕は感じた。
「私が選ぶと全部ブラウン系になっちゃうの。違う色を選びたいけど、似合ってるかどうか不安で、一緒に見てほしいの」
彼女にも悩みがあるんだ。
清楚でかわいい人なのに、そんなお洒落の悩みがあるのだ。
次に現れたのは、46歳独身のサラリーマン。
最近お父さんが入院し、その介護などで疲れきっている。
気分転換も兼ねるせいか、最近頻度が高い。
「会社もやすまないかんし、親も見ないかんもんなぁ。そやけど、親には口でいえへんほど助けてもろとるんやから、俺がやったらなあかんわなぁ」
疲れの見える顔に、やっとのことで笑みを見せているのが分かる。
僕も両親の最期を看取った。
心身ともに疲れていた。
彼もそうだ。
みんなにちゃらんぽらんに見られている男の、ひたむきさを見た。
いつものように客がいたら話せない。
いい日だった。
人の心と悩みが見えたいい日だった。
夜が明けたら、僕は土山に行こうと思っている。
久美子さんにも会いたいし、無農薬農家の人にも話がある。
帰りには畑によって、少しでも雑草を刈りたい。
明日も明後日も、いい日になればいい。
明日も明後日も、人の心に触れられればうれしい。
月末の原稿を書く用意を持って、僕は仮眠を取ろうと思う。
いい日が続くことを祈りながら。
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