スピン偏極電子5回目
さて以前にGaAsではバンド構造上スピン偏極率が50%に制限されるという話を書きましたが、実はウルトラCがあって50%の壁を打ち破ることができる。現在までに実証されている縮退を解く有効な手段としては、
①GaAsに一軸性圧縮歪みをかけることで価電子帯の縮退を分離する
②1次元量子井戸構造(超格子構造)を用いた量子閉じ込め効果による価電子帯の縮退分離
が知られています。
今日は上記のうち①について書きます。「一軸性圧縮歪み」とか書くと難しそうですが、簡単な話GaAsにものすごく圧力をかけて格子を歪ませるわけです。そうすると歪みの効果で縮退しているバンドが解けて、偏極度が50%以上にできるのです。
左図:GaAs層に引っ張り歪みがかかる様子(この場合成長層がGaAs、基盤層はGaAsPを使っていました) 右図:歪みGaAsのバンド構造
さて以前にも紹介したが、GaAsのバンド構造を歪みをかける前後で比較すると下記のようになるわけです。左図が歪み無、右図が歪み有のときのバンド構造です。
この方法でバンドの縮退が解け、スピン偏極度が80%を超えるデータが出ています。実際は室温の影響によるエネルギー幅の広がり、スピン偏極の減衰効果などがあり100%とはなりません。この方式は知られてから相当時間が経っていますが(20年以上か??)、今でも現役で活躍している方法です。
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