◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/9月11日~9月20日

2022-09-11 23:09:49 | Weblog
9月20日(2句)

★子規庵に糸瓜を探す子規忌かな/廣田洋一
根岸の子規庵は一度訪ねたことがあるが、私もまず糸瓜棚を見た。結核を患った子規が痰を切るのによいとされた糸瓜水を採るために植えた糸瓜は、はらかずも絶筆の三句を作らせた。子規庵に糸瓜を探すのは「心のおのずから」のなせること。共感の一句。(髙橋正子)
糸瓜咲て痰のつまりし佛かな 子規
痰一斗糸瓜の水も間に合はず 〃
をとゝひのへちまの水も取らざりき  〃

★金色に稲穂稔りて空透けり/弓削和人
稲穂が金色に稔り、その間に空が透けている。金と青の対比が、エジプトの秘宝ように美しく輝いて、今現代の日本の稔の秋を伝えている。「黄金(こがね)」ではなく、稲穂に「金色」を感じたのは新しい感覚と言えるだろう。(髙橋正子)

9月19日(1句)

★雨後の藪竹伐る音の聞ゆなり/小口泰與
「竹伐る」は秋の季語。用材としての竹は秋伐るのがよいとされる。春は筍に養分をとられ竹はおとろえているが、秋は竹から虫が逃げ、竹幹が充実している。降り続く雨が止んだ後、竹を伐る鋸の音や、枝を掃う音が竹藪から聞こえる。静かな音である。(髙橋正子)

9月18日(1句)

★供えらる束の野菊や辻地蔵/桑本栄太郎
「野菊の束」と言わないで、「束の野菊」と言った理由は、はっきりしている。辻地蔵に供える野菊は、辺りに咲いているものを手折って一二本というのをよく見かける。束にするほどたくさん摘んで供えた人の気持ちに、人の心の有り様が思える。(髙橋正子)

9月17日(1句)

★稲の香や夜の家並み途切れれば/多田有花
夜の家並みを抜けて歩いていくと、家並みが途切れたところから急に稲の香が漂ってくる。家並みが途切れてそこから田んぼになっているのだ。熟れた稲の香りは稔りの秋の象徴。心が落ち着くなんともいい香りだ。(髙橋正子)

9月16日(1句)

★色鳥と仄語らいし森の中/小口泰與
「色鳥」は秋に渡って来るいろいろな小鳥。「仄語らう」は、「少し語らう」の意味。森の中に入っていくと渡って来たいろんな小鳥が鳴いている。しばし耳を傾けると少しばかり語り合えたような気持ちになった。小鳥の鳴き声も言語として科学的に研究されていて、小鳥の言葉が分かればどんなにたのしいことであろうか。(髙橋正子)

9月15日(1句)

★青空の風に群れなす赤とんぼ/桑本栄太郎
青空の中空を風が吹くと、その風に赤とんぼが群れをなしてくる。翅を光らせあいがなら群れ飛ぶ赤とんぼは、秋の爽やかさそのもの。「風に群れなす」が新しい。(髙橋正子)

9月14日(1句)

★落日の蕊の紅さよ曼珠沙華/弓削和人
落日のなかに立つ曼珠沙華の蕊が、入日に染まり紅く輝いている。今日の終わりの曼珠沙華の紅さが心に残る。(髙橋正子)

9月13日(1句)

★「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ/多田有花
「ひえい」は、比叡電車の列車で、京都市内から比叡山へ30分足らずで行ける観光電車とのこと。比叡山の名を採った「ひえい」に乗って、日本仏教の母山の比叡の懐へ入っていく言葉上の面白さもあって納得。(髙橋正子)

9月12日(1句)

★蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり/弓削和人
蟋蟀が鳴いているので、よく聞こうと耳を澄ませると、何かを察知したかのように鳴き止む。経験することながら、改めて秋の夜の深さ、自己ひとりの存在を思う。(髙橋正子)

9月11日(1句)

★浅間より吹かれ来し雲鵙高音/小口泰與
空には浅間から吹かれ来た雲が伸びやかに浮かび、鵙が高鳴きする声が響いてきてくる。秋の風景が晴れ晴れと詠まれている。(髙橋正子)
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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (多田有花)
2022-09-14 14:55:03
信之先生、正子先生
『「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ』を9月13日の
秀句にお選びいただきありがとうございます。

関西1dayきっぷを使い、比叡山まで行ってきました。
観光列車ひえいに乗れたのは思わぬ収穫でした。
残暑がぶり返した日曜でしたが、山上はさすがに風が涼しく快適でした。
Unknown (弓削和人)
2022-09-14 22:13:20
御礼
9月12日、「蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり」を選出くださり、ありがとうございます。こちらの気配を察するように、虫の音が微かになっていきます。暑い日はつづきますが、しだいに秋らしくなってきました。
御礼 (小口泰與)
2022-09-18 09:50:10
高橋信之先生、正子先生
9月16日の投句「色鳥」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、その上正子先生には素晴らしい句評をいただき有難う御座います。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼 (多田有花)
2022-09-18 13:37:38
信之先生、正子先生
「稲の香や夜の家並み途切れれば」を
9月17日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
駅から自宅へ戻る途中に出会った稲の香です。
御礼 (桑本栄太郎)
2022-09-18 17:16:46
高橋信之先生、正子先生
9月15日の今日の秀句に「青空の風に群れなす赤とんぼ」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難うございます!!。
先日の夕刻、風が余りにも涼しく心地よいため近在の田園を散策しました。稲は黄金色に稔り畦には彼岸花が咲き、未だ青空には赤とんぼが群れて居りました。
Unknown (小口泰與)
2022-09-23 12:43:28
御礼
高橋信之先生、正子先生
9月19日の投句「竹伐る」の句を秀句にお取り上げ頂き、正子先生には嬉しい句評を頂き大変嬉しいです。有難う御座います。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。
御礼 (桑本栄太郎)
2022-09-23 17:59:08
高橋信之先生、正子先生
9月18日の今日の秀句に「供えらる束の野菊や辻地蔵」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難うございます!!。
先日、田園散策の折り、野菊が束ねられて辻地蔵さんに供えてある光景を目にしました。小さな子供が親に連れられ、散策の途中に供えたものと推察致しました。
御礼 (桑本栄太郎)
2022-09-23 17:59:09
高橋信之先生、正子先生
9月18日の今日の秀句に「供えらる束の野菊や辻地蔵」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難うございます!!。
先日、田園散策の折り、野菊が束ねられて辻地蔵さんに供えてある光景を目にしました。小さな子供が親に連れられ、散策の途中に供えたものと推察致しました。
Unknown (弓削和人)
2022-09-23 20:39:04
御礼
9/20「金色に稲穂稔りて空透けり」を選出、有り難うございました。添削していただきまして、さらに引き締まりました。稲穂の実りから自然の偉大さを、さらな感じ取っていきたく思います。
御礼 (廣田洋一)
2022-09-24 12:14:16
高橋信之先生
  正子先生
いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
9月20日の「子規庵に糸瓜を探す子規忌かな」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難う御座います。
子規の絶筆3句もご教示賜り重ねて御礼申し上げます。
今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

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