壁のポートレート

道端の壁が気になって写真を撮り続けています。
でもオーロラやら植物・風景などが最近多いですね。

「われらはレギオン4」と量子論

2022年10月09日 | 最近読んだ本

 「われらはレギオン1~3」(ハヤカワ文庫)は、交通事故により冷凍保存された「ボブ」から復元されたコンピュータ頭脳を持つ宇宙船が、人類の存亡を懸けて、入植する他星系を探査したり、異星人と戦ったりするストーリーのSF小説ですが、今年発行されたその続編です。
 前作では、主人公である「ボブ」が自らを複製し、また複製されたボブ達が更に複製を繰り返して、それぞれのボブ達の目線で多数のプロットが同時進行してゆく構成となっていますが、新作ではうってかわって2つのプロットだけが進行して行きます。一つは、行方不明となったボブの1人を探している内に、AIが管理する人工世界に遭遇し、その世界に侵入しての捜索と世界成立の謎を追うロードゴーイング的な冒険活劇。もう一つが、前作でも疑問として提示されていた、複製を繰り返すたびにボブ達の性格がわずかずつ変化して行くことに起因して、世界を巻き込んだボブ同士の抗争です。
 前置きが長くなりましたが、新作において、ボブの1人の推論として、複製が親のボブと全く同じにならない理由について、ある仮説が提示されます。それが量子複製不可能定理。量子複製不可能定理とは、未知の量子状態の複製は出来ないという理論ですが(現実に証明もされている。量子暗号が解読不可能とされるのはそのせい。)、曰く、各人が持つ自意識(魂と言い換えても良い)は量子的な存在であり、だからこそ、完全な複製は不可能なのだと…。
 もともと生身の脳からコンピュータへの自意識の複製がされたSF設定世界がベースなので、そこに量子論を持ち込むのは無茶ともいえますが、量子論が光速度の制限を受けないことなども取り込んでうまく説明されており、読んだとき感心して面白いと思いました。(文中で量子論の説明を全くしてないのは、SFファンなら量子論ぐらい押さえておけよ、という作者の考えか?)ともあれ、丁度、ノーベル物理学賞の発表があり、量子論に関係した3氏が受賞したこともあって、いろいろな空想やら疑問が浮かびます。
 自意識は本当に量子論で説明されるような存在なのだろうか?
 量子計算機は、自意識を持つAIが生まれるきっかけになるのだろうか?
 光速度に制限されない事象があるなら、そもそも光速度の制限って何だったの?
 「量子もつれ」は、絶対、僕の理性が否定するんだけど?
相対性理論ならばまだ理解(したようなふりは)出来ますが、量子論は「シュレディンガーの猫」を過ぎたあたりで白旗です。

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