「日本国民が国内観光に行ける国を望む」From 三橋貴明
二十世紀後半、日本の工業製品が世界を席巻しました。日本発の高品質の製品が世界中に輸出され、メイドインジャパンが「高品質製品」の代名詞にすらなったのです。なぜ、当時の日本製品が世界に受け入れられたのか。グローバル市場を意識した製品開発をしたからではありません。品質に煩い消費者が何千万人と存在する国内市場でもまれ、選別され、競争し、排除され、生き残ってきたからです。
日本製品が世界的な競争力を持ったのは、国内市場で品質が磨かれ、洗練されたためなのです。「日本でしか生産できない製品」
だからこそ、メイドインジャパンがブランド化したわけでございます。その後、二十一世紀に入ると、いわゆる「グローバルスタンダード」が世界市場を席巻し始めました。グローバルスタンダードとは、「仕様」を守りさえすれば、どこの国で生産しても
「同じ品質」の製品になりますよ、という話です。特に、ITやNC工作機械の発展が、「どこの国で生産しても同じ」を実現しました。となると、当然ながら「より人件費が安い国」に、生産拠点は移っていきます。愚かなことに、日本企業もグローバルスタンダードの波に乗りました。結果的に、日本国内の賃金水準は低下を続け、「別に日本製品でなくても、他の国で作った日本企業の製品であれば同じ品質、かつ安い」という、自分の首を自分で締める愚かな路線を進み続けたわけです。結果、日本国民は貧困化しました。
しかも、国内で技術投資や設備投資、公共投資におカネを振り向けることもなくなったため、我が国は猛烈な勢いで「衰退途上国」と化しつつあります。衰退途上国が「次なる成長戦略」として飛びつくのが、「観光」であることは、歴史が証明してくれています。もちろん、国民の所得が増大し、国内観光に行く人が増えた、ならば話は別です。とはいえ、衰退途上国の観光サービスは、十中八九「外国人様に観光に来てもらおう」というパターンになるのです。ギリシャも、ローマも、イギリスですらそうでした。まさに、そのままの道を我が国は進んでいません?腹立たしいのは、我が国が未だに世界最大の対外純資産国で、衰退途上国から「繁栄国」に舵を切りなおすことは、政治力さえあれば余裕で可能という現実です。緊縮財政路線におさらばし、日本国民の所得を増やす政策に転進さえすれば、日本国は再び「覇権国」への道を歩み始めます。結果的に国民の所得が増え、国内の観光業も潤うことになるでしょう。
それにも関わらず、政府は緊縮財政路線を堅持し、国民の所得を増やす政策には目もむけず、外国人「様」に観光に来て頂くインバウンドとやらで成長すると。できるはずがないでしょ。人口1億人を超える国が、外国人「様」の財布にすがり、経済成長することなど不可能なのです。インバウンド、インバウンドと繰り返す政治家、官僚、そして日本政府は、まさに「衰退途上国」の象徴であると理解するべきなのです。
END
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