「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのかー有料座席列車導入は鉄道活性化のカギ

こんにちは。大塚良治『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)で鉄道活性化策を提言しています。

【提言】伊予横田駅周辺の街づくりとJR予讃線特急の伊予鉄道松山市駅乗り入れを!

2015-02-13 12:00:00 | 日記
皆様、こんにちは。

本日発売の『週刊 東洋経済増刊 鉄道完全解明2015』の「part03 戦う在来線」の項において、「客数減に苦しむJR四国 再生へ三つの処方箋」において、JR四国の持続的運営を実現するための方策として、(1)四国内交通事業者との経営統合、(2)大手小売業者との駅ビル共同開発、(3)駅直結医療機関設置で乗車人員増、の3つの提言を行いました。

本記事では、上記(2)および(3)の具体的な提言を試みたいと思います。

JR予讃線伊予横田駅(愛媛県伊予郡松前町)は、松山駅から8.6km、普通列車で10分程でアクセスできます。

当駅は普通列車のみが停車する無人駅です。駅周辺は農地が広がり、住宅が所どころに見られるだけです。



松山駅から近い好立地である利点を生かさない手はありません。当駅を核とした街づくりを進め、駅直結の大型ショッピングセンター、大型病院、そしてマンション等を整備すれば、予讃線の乗車人員と地域活性化の両方につながるでしょう。

駅周辺は市街化調整区域となっていますので、開発には県知事の許可が必要になると思われますが、事業化を検討する価値は十分にありそうです。

それと同時に、予讃線の利便性向上策もセットで行うことで、鉄道と地域の双方への便益がより高まることは確実です。

伊予横田駅の開発完了とともに、特急停車駅に昇格させることで、伊予横田駅周辺の発展と集客がより見込めるはずです。

特急料金と特急定期券も割安な価格設定とすることでより効果が高まります。

予讃線松山~伊予横田8.6kmとほぼ同距離の博多南線博多~博多南8.5km(全列車在来線特急扱い)を比較すると、以下の通りです。

予讃線松山~伊予横田8.6km:普通定期運賃(1か月)6,480円
博多南線博多~博多南8.5km:普通定期運賃(1か月)9,600円(特急料金込み)、特急料金100円

JR四国でも10km以内の特急料金を100円にすると、1か月の同距離の定期運賃は10,000円程度になると予想されます。

私はイールドマネジメントに基づいて、JR四国牟岐線特急「ホームエクスプレス阿南」の特急料金値下げを提案しています(『「通勤ライナー」はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』152~155ページ)。乗車距離と乗車率に基づく特急料金の柔軟な変更は、街づくりや地域開発の便益を高めるものと考えられます。

そして、最終的には、予讃線沿線から松山市中心部へのダイレクトアクセスを実現させることが、予讃線活性化につながります。

予讃線松山~市坪間で伊予鉄道郡中線と、そして予讃線三津浜~松山間では伊予鉄道高浜線と立体交差しています。

思いきって、予讃線と郡中線、予讃線と高浜線の線路をそれぞれつなげて、JR四国の特急列車を伊予市駅に乗り入れるようにしたら面白いと思っています。

特に、伊予鉄道高浜線西衣山駅付近では、JR予讃線と近接しています。



同駅付近には、四国で屈指の進学校愛光学園があり、通学時間帯は高浜線は通学生でにぎわいます。



予讃線にも西衣山駅を設置し、朝夕の特急を停車するようにすれば、今治等の東予地区かの特急通学生の利便性が向上し、愛光学園もスクールバスの運行から解放されることとなるでしょう。

もちろん、中予地方・南予地方からの通学生にとっても、松山駅でのスクールバスへの乗換が不要となるため朗報となります。西衣山新駅に停車する特急への松山駅での乗継により、西衣山駅・愛光学園へのアクセスが大幅に向上します。

また、周辺住民にとっても、南予、東予、香川、本州へのアクセスが向上し、JRの利用機会の向上にもつながりそうです。

予讃線は西衣山駅付近の今治方に急カーブがあり、新駅設置には技術上の課題があるようですが、都内にも東武東上本線大山駅やJR中央本線飯田橋駅のような急カーブに設置された駅もありますので、不可能ではないと思われます。



予讃線と高浜線の連絡線を今治方で接続すれば、予讃線への新駅設置は不要になりますが、急カーブがあるため技術上困難かもしれません。以下の写真のように、松山方は両線が平面で近接しており、連絡線設置は比較的容易に見えます。連絡線を松山方に設ける場合は、予讃線にも新駅を設置してほしいと思います。



連絡線設置位置の検討も含めて、設置に向けて検討してみてはどうでしょうか。

また、予讃線と郡中線の接続については、予讃線伊予市方から郡中線土橋方への高架橋による接続とするのがよさそうですが、事業費が相当かかりそうです。

ただ、中村時広愛媛県知事は伊予鉄道市内線の松山空港への延伸を表明しており、公共交通活性化の意思をお持ちです。さらなる公共交通活性化のために、予讃線と伊予鉄道の連絡線建設も是非検討していただければと思っています。

伊予鉄道松山市駅のホーム長は以下の通りです。

1番線(高浜線・横河原線):18メートル車5両分、2番線:18メートル3両分(高浜線・横河原線・郡中線)、2番線:18メートル3両分(郡中線)

1番線は20メートル車4両分の停車が可能ですが、2番線・3番線は20メートル車2両分が限界があり、JR四国の列車の乗り入れには課題が残ります。



四国には、開発余地のあるところが他にもありそうです。四国発展のための道筋をみんなで考えることが、四国発展のカギを握っています。


【ご参考】博多南線については、こちらをご覧下さい。

「生活路線感覚の『通勤ライナー』博多南線を見る」

以下、過去の関連記事です。

「週刊東洋経済の取材でJR四国泉雅文社長と面談いたしました」

「通勤・通学の貴重な足!JR予讃線特急「しおかぜ10号」「いしづち10号」」

週刊東洋経済の取材でJR四国泉雅文社長と面談いたしました

2015-02-13 06:00:00 | 日記
皆様、こんにちは。

本日発売の『週刊 東洋経済増刊 鉄道完全解明2015』の「part03 戦う在来線」の項において、「客数減に苦しむJR四国 活性化へ三つの処方箋」と題して、四国旅客鉄道株式会社(JR四国)に関する記事を執筆いたしました。

2014年12月12日(金)、週刊東洋経済臨時増刊号大坂直樹編集長とともに、香川県高松市にあるJR四国本社を訪問し、同社の四之宮和幸総合企画本部担当部長、宮脇正行地域連携室長、土居圭一広報室長の同席の下、泉雅文代表取締役社長への取材を行いました。



1時間半にも及んだ面談の中で、私からは完全民営化への見通し、不採算路線活性化策、収入確保策、四国のまちづくりに向けたJR四国の役割等について、時には突っ込んだ質問をさせて頂きました。

泉社長との面談終了後、泉社長と記念撮影をさせて頂きました。



その後別室に移動し、四之宮部長と宮脇室長から、観光列車と地域連携について、さらに詳しいお話しを伺いました。また、数多くの資料のご提供を頂きました。

今回の記事の本文と図表は、大部分を同社提供資料を活用して執筆・作成しました。資料をご提供下さった四之宮部長と宮脇室長に感謝申し上げます。

土居室長には、取材の窓口役として、様々なご配慮を頂きました。心より御礼申し上げます。

そして、泉社長には長時間にわたり、こちらからの質問に丁寧にお答え頂きました。誠にありがとうございました。

また、週刊東洋経済臨時増刊号の大坂直樹編集長には、JR四国の記事執筆という大役をお任せ頂きました。厚く御礼申し上げます。

なお、同記事中の図表の大部分はJR四国提供資料に依拠していること、また決算数値の一部はJR四国提供資料に基づいて、大塚が試算しておりますことをお断りいたします。

同記事では、JR四国活性化に向けた3つの私案を提言しています。記事の中では紙幅の関係で具体案までは触れることができませんでした。本ブログで記事の続きとして、本日12時に活性化の具体案を公開する予定です。

皆様におかれましては、ぜひご高覧の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

2015年2月13日 鉄道経営学者 大塚 良治