脱原発・放射能

利権によって動かない組織、我々の力で変えて行こう

六ヶ所再処理工場 セシウム137だけで、年間放出量(1.7×1010Bq) の3万2千倍漏れ

2011-09-13 21:13:44 | 原発・放射能

同じ箇所から2度も超危険な高レベル放射性廃液が漏えい

漏れてはならない廃液が150リットルも漏れた原因を徹底究明せよ

  国は事業指定を取り消せ


行方不明のセシウム137は再処理工場が年間に環境に放出する1.8万倍に匹敵

「漏えい警報がなっても無視」等々-ずさんな管理は

原燃の体質日本原燃に再処理工場を動かす能力はない!

 

 

 六ヶ所再処理工場の、これまで多くの問題を引き起こしてきたガラス固化溶融炉のあるガラス固化セルで、2月1日にまたも高レベル放射性廃液が漏えいした。1月21日に漏えいしたのと同じ箇所からの2度目の漏えいである。

この漏えいについて当会は1月23日付で記事を掲載したが、そのときはまだ原燃の報告書がでる前であった。それ以後、原燃が1月30日に原子力安全・保安院に提出した報告書によって新たな事実が判明している。そして、2回目の漏えいは報告書を出したまさにその翌々日に発生している。その報告書と2回目の漏えいから次のような事実が明らかになる。

(1)廃液供給槽Aの減少量からすると約150リットルの高レベル廃液が漏えいしたことにな
る。セル内の受皿に溜まっている量は約16リットルであり、それぞれの濃度を考慮して比
較すると、およそ300兆ベクレルのセシウム137が行方不明になっている。きわめて大
量の廃液が蒸発し、セル内を汚染し、放射能が排気筒から大気へと放出された疑いがある。

(2)最初の漏えいを止めた措置がきわめてずさんであったがために、2度目の漏えいを引き起こしている。それどころか、そもそも漏えいを止めることは最初から不可能な条件にあったことが明らかになった。

(3)なぜ漏えいが起こったのか、その原因は明らかにできていないことを原燃は1月30日報告ではっきりと認めている。それなのに他方では「対策」について述べている。原子力安全・保安院への報告書をだす1月30日の締め切りに合わせるように作文をしたに過ぎない。

(4)この漏えいはガラス固化溶融炉で起こった問題に対処するための措置に付随して起こっている。ガラス固化でこれだけの問題を起こした以上、もはやガラス固化は中止するしかないのは誰の目にも明らかである。

(5)「対策」で述べられている内容は、原燃の廃液管理がきわめてずさんであるという、恐ろしいまでの実態と安全軽視の姿勢を示している。
原燃に危険な高レベル放射性廃液を取扱う資格はない。ここで明らかになった原燃の体質
の問題はこのセル内にとどまるものではない。原燃には再処理を実施する技術力も能力もないことが明らかになった。国は事業指定を取り消すべきである。

 


報告書を提出した翌々日に2回目の漏えいが発生

2月1 日、またも高レベル放射性廃液が漏えいした。このことを日本原燃は2 日に公表した(原燃ホームページhttp://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/090202-recycle-b01.html)。

漏れた箇所は、1 度目の漏えい箇所とまったく同じフランジ部である。1 度目の漏えいを止めるために、配管接合部のボルトの増し締め作業を行い、漏えいの停止を確認したというその箇所からの漏えいである。回収したはずの廃液が配管内に残っており、増し締め作業後も密閉性が不十分なままに放置していたため、前回と同じ接合部から漏れたのだ。

しかも、1 度目の漏えいに関する報告書(「固化セルにおける高レベル廃液の滴下について(原因と再発防止対策)」1 月30日付)を保安院に提出した直後だ。報告書で原燃は漏えいを、「・・高レベル廃液の滴下という看過ごしてはならない事象・・・」と位置づけながら、その舌の根も乾かないうちに「看過ごしてはならない事象」を再び起こしたのである。2 度目の漏えいは、報告書が、机上の作文であることを事実で示した。


2度の漏れに対し保安院は「(セル内に)放射能レベルが高い廃液があってはならない。原燃は漏えいに対する認識が甘い」と指摘したという(2/3 デーリー東北)。また、「149リットル漏れた廃液のうち、受け皿で回収された16リットル以外はどこへ行ったのか、また、配管内のどこからどれだけ回収されたのか、具体的な言及がない」(1/31 東奥日報)などとして追加報告を指示せざるを得ない程だ。


非常に危険な高レベル廃液の2 度もの漏れについて、保安院は原燃に対し再処理事業指定の取り消しをも含めて徹底した調査と原因究明、およびその結果のすべてを公開することを指示するべきである。おざなりな報告書で済ますことは許されない。

 

1 度目のずさんな対応が2 度目の漏えいを引き起こした
「当該箇所には廃液が行かないことが前提」(原燃)。 漏えいをとめることは最初から不可能。

1 度目の漏れへの対処のずさんさが2 度目の漏れを引き起こした。1 度目の漏えいの後始末として配管内に残っている廃液を拭き取るのに、接合部のふたを取らずに緩めるだけで済ませていた。

そのため、配管内に残っていた廃液が2 度目の漏えいを起こした(2/3 デーリー東北)。しかも、このふたは密閉性が不十分であることを知りながら、ボルトを強く締め直しただけでことを済ませ、密閉性のあるふたに取り替えなかったのである。記事は、「原燃は『すぐふたを換えなかったのは、交換手順の検討と準備に時間が必要だった上、配管内には廃液が残っていないという認識だった』としている」と批判している。1 度目の際に十分に調査せず、思い込みで対処したことが、2度もの漏れになったのである。

実は、漏えい部分は、はじめから漏えいを防ぐ構造となっていなかった。報告書で原燃は、「・・・閉じ込め機能を期待して設置したものではない。このため、当該閉止フランジを取付ける際の考え方として廃液の移行がないことを前提としていた・・・」(7頁)と明記している。この前提から閉止フランジに「再使用のガスケットを使用し」ている。漏れるはずがないと頭から決め込んでいたことを認めているのだ。漏えいをとめることは最初から不可能な条件であったということだ。

 

約150リットルもの廃液が漏えいしていた
150リットル中のセシウム137は、再処理工場が海洋と大気に年間に放出する3 万2 千倍に匹敵

セシウム137だけで300兆ベクレルが行方不明

1 度目の漏れが判明したのは、1 月9 日に漏れはじめてから12 日後である。その間に、供給槽Aの液量の減少に気付きながら(12 日)、さらには15 日以降各種の警報が鳴り、漏えい部の受け皿でも注意警報が鳴っていたにもかかわらず、警報を無視し、廃液漏れではないと頭から決め込んだ。また、受皿に溜まった液体の調査もせず、シール水(設備内水)か冷却装置の凝縮水であろうと勝手に思いこみ、高レベル廃液とは考えようともしなかった。
これらは、漏れは起こらないという先入見に基づく廃液管理の実態を示している。
特に重要な漏れた廃液の量については、供給槽Aからの減少分で約150リットルにも達している。

供給槽内の廃液中のセシウム137の濃度は、3.6×109Bq/ml、すなわち36億ベクレ
ル/ミリリットルであり、150リットルでは36億ベクレルの15万倍、つまり540兆ベク
レルとなる。他方、受け皿に溜まったセシウム137は、濃度1.6×1010Bq/ml で16リッ
トルなので、256兆ベクレルとなる。そうすると、その差約300兆ベクレルのセシウム13
7が行方不明となっている。

これらはセルの床面にこびりついているかも知れないが、排気筒を経て大気中に放出されたものも多くあると考えられる。300兆ベクレルのセシウム137は六ヶ所再処理工場から海洋と大気に年間に放出される量1.7×1010Bq約1万8千倍にも上っている。今回漏えいした150リットル内のセシウム137は海洋と大気に年間放出するセシウム137の3万2千倍に匹敵する。いかに高レベル廃液が恐ろしい放射能かを如実に示している。

 

今回の漏えいはガラス固化の対症療法に伴って発生した
ガラス固化を直ちに中止せよ

今回の漏えいは、ガラス固化溶融炉に挿入したかくはん棒が曲がったことに端を発している。
溶融炉内に白金族が溜まったためにかくはん作業を行ったが、かくはん棒が大きくエル字形に曲がり、抜けなくなった。棒を抜くために、廃液を入れる原料供給器を外したが、そのとき廃液供給配管も途中の接合部分ではずさざるを得なかった。その残った配管の口にふたをしたところ、そのふたから漏えいしたのである
。これまでのさまざまな対症療法が、すべて裏目裏目にでて、トラブルを拡大している。その挙句の果てが、高レベル放射性廃液の漏えいとなったのである。
ガラス固化でこれだけの問題を起こした以上、もはやガラス固化は中止するしかない。

 

報告書が明らかにしているずさん極まりない原燃の廃液管理原燃に危険な高レベル廃液を管理させることはできない
原燃の技術の限界がはっきりした。国は再処理の事業指定を取り消せ

報告書の「9.再発防止対策」の記載内容は、ずさん極まりない廃液管理の現状を見事に示している。
以下、各項目にわたってずさんな管理実態をみてみる。(□内が引用、アンダーラインは引用者)

 

(1)まず、漏えい原因と推定している空気流量増大への「対策」を次のようにとるという。

(1)エアリフトのパージ空気流量の変動防止
エアリフトのパージ空気流量が大きくなったことについては、原因の特定ができなかった
が、想定される流量変動の発生原因に対する対策を図ることにより同様の事象の発生防止等を図る。

一度目の漏えい原因を、廃液を運ぶエアーリフト内の空気の流量が、通常よりも3 倍以上になったためと推定する。そのことを実物大模擬装置での実験(モックアップ試験)で確認したという。
しかし、なぜ空気の流量が3 倍にもなったのか。この肝心な点については、上記の通り、「原因の特定ができなかった」と認める。
ところが、原因は「特定できなかった」が、「変動の発生原因に対する対策」を図る、と記載す
るである。原因不明なものに対してどんな対策が取れるのか。書いていること自体が支離滅裂というほかはない。

 

(2)2 度も漏れた箇所への「対策」は、次のとおり。

(2)閉止フランジの取付け方法の見直し
・・・セル内の廃液等の系統に設置する閉止フランジの取付け作業を行う際には、万一の場合のことを考え再使用禁止等閉止フランジに廃液が移行することを考慮した取付け方法に見直しを行う。

現在の管理は万一の場合を想定していない。万一にも廃液が移行するとは考えていなかったから、フランジは「再使用」つまり中古品を使用したのであろう。今回の教訓として初めて「万一の場合」を想定するらしいが、今回の漏えいそのものが、原燃の姿勢を厳しく糾弾したのである。

 

(3)液量監視のルールさえなかったことへの対応

(3)重要な槽の液量変化監視ルールの強化
供給槽Aのような、高レベル濃縮廃液、不溶解残渣廃液、プルトニウム濃縮液を内包する貯
槽等については、現状実施している定期的な液量の記録に加え、監視制御盤におけるトレンドにより長期的な変動監視を行うことをルール化する。

プルトニウム濃縮液が含まれるような超危険な槽でさえ、変動監視を行なっていない。「記録」だけなのだ。「監視制御盤」がありながら、いまさら監視をルール化するというのは、何という杜撰な管理だろうか。

 

(4)異常事態に対処する方法が確立していなかったことへの対応

(4)通常とは異なる運転状況が発生した際の対応方法の改善
高レベル濃縮廃液、不溶解残渣廃液、プルトニウム濃縮液を内包する貯槽等からの漏えい拡大防止用の漏えい液受け皿については、注意報の発報等により液位上昇が確認された際の対応方法に対して改善を図る。
具体的には、漏えい液受皿の液位上昇に関連する槽液量等のパラメータを抽出するとともに、液位上昇が確認された際に関連するパラメータの評価及び監視を行うことを手順化する。

 

通常とは異なる状況が生じ、注意報が発報しても適切な対応をすることなく無視してきた。
また、受皿に漏えいした液が溜まっても、どこからの漏えいかを調べることを「手順化」して
いなかったことが「具体的に・・」以下から判明する。
今の管理では、漏えいしても、漏えいに関する槽液量等のパラメータ、関連するパラメータを
必ず評価することを決めていないのだ。
ここに書かれていることはすさまじいまでのずさんな廃液管理実態および原燃の安全軽視の姿勢である。
では、この「再発防止対策」をガラス固化セル内に限ってでも直ちに実施するのかと思えば、そうではない。9章のあとわざわざ次の10章を設けている。その内容がまた、原燃の体質を物語っている。

 

10 ガラス溶融炉の点検作業について
ガラス溶融炉の熱上げ作業を実施するにあたり、以下の処置を実施する。
・9章 再発防止対策のうち恒久対策以外の対策
(略)

 

「恒久対策」は実施せず、溶融炉の熱上げを優先させると明記するのだ。これだけの事を起こしておきながら、またもやスケジュール優先である。ガラス固化の中止こそ、「対策」である。
すさまじいまでのずさんな管理および安全軽視の姿勢が、今回の廃液漏えい事象を通じて明らかになったが、これは原燃に固有の普遍的な体質だと見なすべきである。このような原燃に高レベル廃液の管理を任すことができないのはいうまでもないが、それだけに留めることはできない。
原燃に再処理工場を動かす能力はない。国は再処理の事業指定を取り消すべきである。



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