自燈明・法燈明の考察

輪廻転生について

 私が仏教に関心を持ち始めたきっかけは何かと言えば、二十歳の頃に知人の死という現実に遭った事です。数日前まで元気だった人が、目の前で棺桶の中に入っていたりするのを見たとき、人生の無常という事を考えたりして、そこから仏教に関心を持ち、創価学会の活動をしたりもしましま。

 いま生きている自分も、あと数十年以内には、荼毘に付されて骨壷にはいってしまう。骨になってしまうというなら、この人生であくせく働くという事に、どの様な意味があるのか。親子関係。友人関係。様々なしがらみがあり、ふとそれらは永遠に続く様に錯覚しますが、私や相手の意志とは関係なく、死というのは突然やって来ては、それら人間関係を無慈悲にも断ち切ってしまう。それを解決できるとは想わないが、少なくともその「死」という事の姿を理解したい。

 それもあって、日蓮仏法を実践しているという創価学会で二十年ほど学会の言う「信心」とかをやりましたが、そこでは結局この事を理解出来る事はありませんでした。知ったのは巨大組織の中での振る舞い方と、選挙に関する表面的な知識だけ。でもここで仏教に触ることが出来ましたので、組織から離れて以降、十年間ほど様々な事を考え、必要であれば様々な人と語らってきたのです。

 実に下らない宗教団体でしたよ、創価学会という処は。

 さて、前置きはともかく、そこで考えてきた事で、今回は輪廻転生について書いてみたいと思います。宜しければお付き合い下さい。

◆死後に人は「生き続ける」のか
 輪廻転生の前に、この事を考えなければなりません。人生五十年を過ぎれば、それなりに多くの人の死を見てきました。よく「死後の生命はある」という話しと、「人は死んだらおしまいよ」という話しがありますが、僕はやはり「ある」と思いますね。こごて「ある」と云うのは仏教でいう五陰の事で、この五陰でも「色(物体としての体)」は多少異なりますが、生から死、死後から次の生へと続く何かはあると思うのです。

 しかしこの様な話をすると、他で仏教を学ぶ人などには言われたりします。

「この世界は縁起でできている。今ある自分も縁起の上で存在するだけで、そんな我執(執着)をもたらす自我は本来存在しないのだ。」

 でも果たしてそうなのでしょうか。
 死んだらそこで自分は消えて、跡形も無くなってしまうというのは、一体どの様な状態の事を言うのでしょう。自分が無くなるというのは、今ある周囲を認識し、様々に働く自分の心が消えてしまうというのです。私は単純に考えて、死後にも続く生という事よりも、この死後に全ては消えてなくなるという方が、理解に苦しんでしまうのです。

 因みにチベット仏教には「バルド」という考え方がありますが、これは仏教の倶舎論から来ているとも言います。初期仏教では永遠に存続する自我を否定してますが、大乗仏教では心の在り方について「四有(しう)」を述べています。こは以前の記事にも書きましたが、本有とは今生きている状態を言い、死有とは生から死への移行の状態、中有とは死後から次の生(誕生)までの状態で、生有とは誕生に至る状態を言います。このうち「中有」をチベット仏教ではバルドと呼んでいます。

 つまり生死を巡り、自我は存在し続けるという事をチベット仏教では言うわけですね。因みに倶舎論では、この中有の時の体を「細身」と呼び、細い粒で出来ていて、どこでも通り抜ける事が可能ともある様です。

 但しこの中有の時に認識する世界が、この現実世界であるのかどうか、そこは解りません。興味深いのはこの中有では時間や空間の概念が全く異なっているという証言(臨死体験者など)もあったりしますから、そこがどの様な世界なのかは全く不明です。

◆輪廻転生について
 この様な事を考えると、やはり輪廻転生というのはあるのかもしれません。現に逆行催眠(退行催眠とも言いますが)で、過去世の記憶を思い出した人達の中で、語った前世について追跡調査を行った処、幾つかは実際に実在し、生活環境や死因に至るまで、事実あったとされる事例も確認されています。
 そんな事例の中では中有の記憶についての証言まで確認されていたりするのです。こういう事から考えても、言下に全てを否定出来るとは思えません。

 ただし最近確認されているこの様な証言を顧みてみると、仏教やバラモン教の語るような輪廻転生とは異なるという事も解ってきました。恐らく初期仏教で否定しているのは、過去の業因業果に人生をしばられ、人の心の自由を奪うが如くの輪廻転生観を否定したものなのでしょう。

 人の心とはこの世界では「因果の理法」で縛られてはいますが、三世に渡る心の働きには、その様な娑婆世界の因果の理法とは異なるものがある様です。



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