かもめのぶろぐ(JIA神奈川ブログ)

日本建築家協会関東甲信越支部 神奈川地域会(JIA神奈川)のブログです。

月影の銀色の庭

2008-07-30 | 会員コラム
在英10年のあいだ幾度となく日本と英国を行き来するうちに、日本の空間の持つ特異性について強く意識するようになり、自分なりに考えをめぐらしてきた。特に、西欧で見られる「ジャパニーズ・ガーデン」が日本庭園をそっくり模しているにも拘らず、日本的美を感じさせないのは何故なのか、逆に日本庭園の「型」やエレメントを用いずに日本的美を表現することが可能かどうか、それはどのような手法によって為しえるのか、ここ数年様々な機会に実験的なデザインを提案してきた。

2008年のショーガーデン・カテゴリーに出展された「月影の銀色の庭」(銀賞受賞)は、桂離宮の月見台から発想を展開し、「月を生け捕る池」、そうした間接的な方法により月を愛でる日本人の心性に焦点を当ててデザインされた。ここでは回遊式日本庭園の縮景として、視界の制御や景の連続など、現代様式のなかに伝統的な手法が試みられたものである。

「日本人の心性」ということを西洋との比較で考えるならば、西洋の文化は明らかに形、光、生といったポジティヴな実体に焦点を当て、生のあくなき追求、自然の克服、天へ届こうとする強い意志を持つが、それとは対比的に日本人の感性は移りかわりゆくものへの諦観、受容、或いはそれゆえの生への愛着といったようなものを育んできたように思う。この庭で提示されたように、「うつろいの美」をいとおしむ日本人の美学、実在の瞬間性を捉える美意識を表現することは、私の空間表現のひとつの核たるテーマとなっているものである。
Garden in the Silver Moonlight
Designer: Haruko Seki(Studio Lasso Ltd), Makoto Saito(add.locusarchitects)

関 晴子 (ランドスケープ・アーキテクト、STUDIO LASSO 代表)

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