かもめのぶろぐ(JIA神奈川ブログ)

日本建築家協会関東甲信越支部 神奈川地域会(JIA神奈川)のブログです。

失われる原風景

2008-08-08 | 会員コラム
葉山の自宅から実家のある茅ヶ崎へ帰る度に、とても早いテンポで街が変貌してしまった印象を受けます。

一面月見草で覆われたなだらかな丘陵や、海近くの敷地に普通に見られていた松林は確かに茅ヶ崎の原風景で、街独特の雰囲気と安らぎを与えてくれていましたが、今では殆ど目にする事は難しくなりました。
同じように海沿いの街で別荘地として発展してきた葉山の街に、懐かしを感じさせてくれる小道や空地が多く残されているのとは対照的に、「茅ヶ崎らしさ」を一番感じられていた場所が簡単にその姿を消して、単調な分譲地になってしまう事は大変残念に思います。

懐かしい「街の記憶」と言えば、映画監督の小津安二郎が構想を練る為に逗留していた海浜旅館の茅ヶ崎館や旧原別荘跡地になるのでしょう。東洋一のサナトリウムと称された「旧南湖院」同様に風光明媚な茅ヶ崎の魅力を感じさせてくれる「聖地」です。

愛する地元の原風景がこれ以上失われないように、歴史的にも価値のある素晴らしい建物、邸宅が並ぶ美しい街並みをどうしたら残してゆけるのか。JIA神奈川元代表山口洋一郎氏を中心に湘南地域の文化・景観の育成の為の活動を行っている「茅ヶ崎の文化景観を育む会」が9月にイベントを行います。                   
                                                        
(広報:谷田部淳子

「茅ヶ崎の文化景観を育む会」MESSAGE

面影をの別荘地として受け継がれてきた土地も、とりわけ松林に象徴される自然も、古来から受け継がれるべき文化や環境資源も、今日の厳しい社会情勢の下ではその状態を維持することが困難とされています。永く住み続けてきた住民にとって最も大切な茅ヶ崎の原風景が失われていくことに対し、何らかの歯止めをかけることが急務ではないでしょうか。このような問題意識から私たちは、「茅ヶ崎の文化景観を育む会」を設立し、活動を行っています。

ちがさき文化景観祭08
茅ヶ崎らしさの「継承」と「創造」シンポジウム

場所  :茅ヶ崎市立図書館2階大会議室
時間  :9月7日(日)15:30から18:00
参加費:500円
定員  :100名
募集期間:~8月25日(月)
同日開催:●まちあるき
       (A)茅ヶ崎らしさの「創造」
       旧南湖院・藤間邸(バス使用・定員40名) 

       (B)茅ヶ崎らしさの「継承」
       団十郎山~氷室椿園~茅ヶ崎館(徒歩・定員30名)
       ●クリエーターズウイーク 9月7日~14日
       
問い合わせ:茅ヶ崎の文化景観を育む会
        FAX 0467-98-1630
        mail info@chi-bunkei.net

月影の銀色の庭

2008-07-30 | 会員コラム
在英10年のあいだ幾度となく日本と英国を行き来するうちに、日本の空間の持つ特異性について強く意識するようになり、自分なりに考えをめぐらしてきた。特に、西欧で見られる「ジャパニーズ・ガーデン」が日本庭園をそっくり模しているにも拘らず、日本的美を感じさせないのは何故なのか、逆に日本庭園の「型」やエレメントを用いずに日本的美を表現することが可能かどうか、それはどのような手法によって為しえるのか、ここ数年様々な機会に実験的なデザインを提案してきた。

2008年のショーガーデン・カテゴリーに出展された「月影の銀色の庭」(銀賞受賞)は、桂離宮の月見台から発想を展開し、「月を生け捕る池」、そうした間接的な方法により月を愛でる日本人の心性に焦点を当ててデザインされた。ここでは回遊式日本庭園の縮景として、視界の制御や景の連続など、現代様式のなかに伝統的な手法が試みられたものである。

「日本人の心性」ということを西洋との比較で考えるならば、西洋の文化は明らかに形、光、生といったポジティヴな実体に焦点を当て、生のあくなき追求、自然の克服、天へ届こうとする強い意志を持つが、それとは対比的に日本人の感性は移りかわりゆくものへの諦観、受容、或いはそれゆえの生への愛着といったようなものを育んできたように思う。この庭で提示されたように、「うつろいの美」をいとおしむ日本人の美学、実在の瞬間性を捉える美意識を表現することは、私の空間表現のひとつの核たるテーマとなっているものである。
Garden in the Silver Moonlight
Designer: Haruko Seki(Studio Lasso Ltd), Makoto Saito(add.locusarchitects)

関 晴子 (ランドスケープ・アーキテクト、STUDIO LASSO 代表)

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チェルシーフラワーショウ

2008-07-23 | 会員コラム
英国の夏はウィンブルドン、全英オープンとイベントが目白押しですが、春のイベントと言えば、エリザベス女王が総裁をつとめる王立園芸協会主催のチェルシーフラワーショウです。

毎年5月第3週の平日にロンドンの中心地で4日間のみ開催されるこのショウは、150年近くの歴史があり、世界中から集まる設計者・園芸家が最新の造園・園芸技術を競い合う、世界最大で大変権威あるものとされています。バイヤーが買い付けに来る種苗関係、エクステリア用品を扱う公開マーケットの他に最大の見どころは会場内のブースに、実際に庭を作り込んでアイディア、技術を競い合うショウガーデンで、来場者も実に様々なスタイルの庭に魅了されてゆきます。

高山植物を扱う業者のブースはまるでアルプスの植生をそのまま切り取ったようなイメージで小さな世界を再現しています。食虫植物等のレイアウトも個性的です。昨年は私の友人で、現在も英国で活躍しているランドスケープデザイナーの関晴子さん(STUDIO LASSO)の出展に関わる事ができ、工事のプロセスを見る貴重な機会を得ました。今年もJAPANESE GARDENは高い評価を得て、シルバーメダルを獲得しています。次回は本人自ら今年の作品を紹介していただこうと思います。

(広報:ASH-GARDEN・谷田部淳子 )