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NOBODY KNOWS

本、漫画、映画を中心に日々読んだり観たりしたもので、ツボにはいったものの感想を書いていきたいと思います。

沈まぬ太陽

2006-06-30 20:48:49 | 小説
 すっかり更新を怠ってしまいました。
 ただ、ここのところぐっと来るネタもなく、ただでさえ駄文なのにさらにどうでもいいことを垂れ流すのもどうかなと・・

 先日、本棚が収容限界を超えたので、二度と読まないであろう本を近くのブックオフに売りに行きました。まあたいした値では売れないのですが、本を捨てるのには抵抗あるし、誰かのお役にたてばそれでいいかと思いまして・・

 売ったときに金券をくれるのですが、本を買おうにもそこのブックオフのラインナップは今ひとつなので、またここに持ち込むであろう本を買い、お茶を濁しました。ほしいと思ってる本はなかなか置いてないんですよね。

 本当は数巻に渡る山崎豊子さんの本などはここで全巻そろえたいところなのですが、そろっていたためしはなく、結局全巻定価で買ってます。

 今回読んだこの小説は、実在の人物や会社をモデルにした半ドキュメンタリーとも呼べるもので、本当に生々しいものです。

 前半は主人公が、会社の組合活動に巻き込まれ、それに真剣にたち向かったが故に、通常ありえない長さの僻地勤務(カラチ、テヘラン、ナイロビ)を強いられる
話。後半は飛行機事故としては最大かつ最悪ともいわれる御巣鷹山墜落事件を軸に、展開します。

 
 まあ、「国民航空」として描かれているJ○Lの実態が現実にこれと近いものならば、やりきれないですね。政財癒着、利権、賄賂、横領、権力争い・・・・・
 私が新卒で入った会社にも複数の労働組合があったり、天下り官僚がいたり・・など懐かしく思い出されました。日本の大企業では多かれ少なかれ抱えている問題が集中したような会社なんですね。当時は半官半民だっただけに、余計。
ここ1.2年もなにかとお騒がせしているところから見て、きっと根本は変わっていないのかなあと思います。結局利益重視で、安全は二の次ですね。これからは絶対乗らないぞJ○L。(もうかれこれ20年は乗ってないけど)

 去年のJRの事故といい、最近話題の日銀総裁といい、ああやっぱりなと。まだ未だ変わらない魑魅魍魎の世界なんですね。

 でも、主人公に関しては、否定はしませんが共感はしません。なぜなら、筋を通すことは大事だと思いますが、会社組織で生き残っていくには、また自分の考えを実現するには、多少は清濁併せ呑む事は避けられないからです。この主人公は立派な人だけど、ちょっと融通がきかなすぎるかなと思います。

 1985年、私は中学生でした。家族や、直接の知り合いは事故にあいませんでしたが、当時の同級生のご家族が亡くなられました。事故のニュースを食い入るように見ていた記憶はありますが、テレビでは限界があったのでしょう。本当の惨状はこの本を読むまでわかりませんでした。残された遺族の慟哭も。

 何もわからなかった子供とはいえ、それを差し引いても、あの時の自分の言動や思ってたことなどを振り返ると、随分無神経だったと思います。反省の意もこめて今回の文章を書きました。

 

 

 

 
 
 

博士の愛した数式

2006-03-20 00:48:34 | 小説
 WBC決勝進出だそうですね。
 アメリカの嫌がらせや、韓国の野次にも負けず良くがんばりましたね。
 イチローがあんなに熱くなってるの始めて見ました。
 
 あらゆる小細工を施したのもかかわらず、予選敗退したアメリカちょっといい気味。結局小細工の主な矛先だったキューバは決勝に残ったし。

 今日、久しぶりに趣味で本を読みました。最近なかなかそんな時間もなかったので。
 
 小川洋子さんの「博士の愛した数式」(新潮文庫)です。

 事故で80分しか記憶が持たない初老の元数学者と、シングルマザーの家政婦と「ルート」と呼ばれるその息子の交流を描いた話です。
 
 時代設定は1992年がメインで文中にも出てきますが、その年は阪神タイガースが当時としては珍しく首位争いをしていました。私もその年の秋に試合を見に行ったのではっきり覚えています。結局優勝したのはスワローズだったと思いますが。

 博士は往年の阪神ファンで、特に江夏の大ファンです。そして、彼は1975年からの記憶がないため、というより記憶できなくなったため、彼の中では江夏は現役の阪神の選手のままです。
 この話は大事件はなく、淡々と主人公の家政婦と博士との出会い、10歳の息子を含めた日々の交流が描かれています。ちょっと重いことも淡々と。でも、それが良かったのか読み終わったあとに、「いい本読んだな」と素直に思えました。

 私は学生時代数学がかなり苦手だったのですが、時間があったら数学の本を読んで見ようかなあとちょっと思ったりしました。今だったら数学も楽しめるかも知れない・・そう思わせてくれるような本でした。

 

白い人、黄色い人

2006-02-12 23:15:41 | 小説
 最近、デンマークの新聞に掲載された風刺画が元で世界各地でイスラム教徒が暴動を起こしているそうです。

 問題となっている絵を一枚だけ見ましたが、イスラム教徒の人は怒って当然だと思います。マホメッドの頭を爆弾に見立てて導火線をつけていますが、同じことをイエズス・キリストの絵にやったらキリスト教徒も怒るでしょう。
 ましてや、イスラム教は偶像崇拝禁止です。マホメッドの肖像をかくことさえ許されてないのに、それを異教徒にされれば、冒涜以外の何者でもないでしょう。

 表現の自由も大事ですが、今回の絵はかなりデリカシーにかけると思います。
だからといって、デモを超えて大使館を焼き討ちにするのもこれまた行き過ぎだと思いますが。
 かねがね思っていたのですが、一神教の人たちには排他的というか、他宗教、非宗教者に対する許容性が低いひとが多いように感じます。
 

 日本人は神なき民族だとよく言われますが、無神論者なわけではなく元々多神教なだけです。だから、普通の人は国民的行事としてクリスマスも、初詣も、同時に受け入れることができるのだと思います。

 ただ、西洋人から見ると理解できないようです。そのあたりのことが書いてあるのが「黄色い人」です。作者の遠藤周作は、カトリック信者ですが、日本人でもあるので、登場人物を通してその精神構造の違いがよく描かれています

 幼少時から教会に通い、洗礼を受けているにもかかわらず、クリスチャンになりきれない千葉。一方、一度の過ちで教会を追われた元神父のデュランは生涯その罪の意識に苦しめられます。

 私は典型日本人なので千葉側について読んでました。
 ミッションスクールの出身なので、クリスチャンの友人、知人も大勢いますが、バランスのいい人は、ほどほどに現実生活と信仰に折り合いをつけています。むしろ、いわゆる敬虔な人のほうが形だけということが多いような気がします。
(聖職者は別ですが)
 
 西欧vsイスラムの問題は移民の問題も絡んでいて根は深そうですが、歩み寄る日は遠そうですね。
 

ミカドの淑女

2006-02-02 03:53:48 | 小説
 最近女性、女系天皇の議論が盛んになってきていて、皇族の中でもついに見かねて発言される方も出てきましたね。その是非については意見を差し控えますが、議論が盛り上がるのは大いに良いことだとは思います。
天皇制のあり方も含めて皇室という存在自体が、今、大きな転換期に来ているのかも知れませんね。

 そんなこともあって、皇室関連の本が割とあちこちで取り上げられ書店にも良くあるので、最近色々読んでみたりしているのですが、今のところ当たり!はないですね。可もなく、不可もなくというものが多い気がします。

 林真理子の「ミカドの淑女(おんな)」(新潮文庫)は明治を舞台にした小説です。
 
 明治末期、学習院女子部長で女子教育の第一人者であった下田歌子の醜聞がゴシップ新聞に連載されたという実際にあった事件をめぐり、事件の顛末にいたるまで、当の下田歌子はもちろん、明治天皇、伊藤博文、乃木希典、大山捨松など、歴史上そうそうたる人たちの心理や行動が描かれています。
 
 この小説は天皇制云々とはちょっと違うのですが、当時の天皇のあり方や宮中の様子が非常によく書かれています。もちろん制度的には天皇の地位は今と異なりますし、宮中のしきたりなどもかなり変わっていると思いますが、皇室の事実上のあり方はこのころと大筋では変わらないのではないかと思います。

 また、登場人物の人物描写や心理描写も抜群にうまいです。あと、明治維新についての一つの解釈というか見方が示されていて、これもなるほどなあと感心させられました。

 これに限らず、林真理子の書く歴史小説はかなり面白いです。
 彼女のエッセイしか読んだことがない人がこれを読むと彼女へのイメージはかなり変わると思いますよ。自慢たらたらのエッセイでお茶を濁すより、もっとこの手の小説を書いてほしいです。

  
 

 
 

ケインとアベル

2006-01-25 01:07:14 | 小説
 ホリエモンが逮捕されてからテレビでは連日このニュースばかりですね。
 特捜があれだけ派手にやるんだから間違いなく有罪まで持っていける材料を持っているのでしょうね。違法行為は罰せられるのは当然ですが、なんか見せしめっぽいですね。たたきやすいところからたたいた感じで。ホリエモン何か地雷踏んだのかしら?とも思ったりしてます。

 それはそれとして、今回はケインとアベル by新潮文庫です。
 ジェフリー・アーチャーの代表作でドラマにもなっています。
 同じ日に生まれたアメリカWASPの上流階級出身で銀行家のウィリアム・ケインと、ポーランドの移民からホテル王になるアベル・ロスノフスキの人生を軸にした大河小説。
 続編兼サイドストーリーとしてアベルの娘が主役の「ロスノフスキ家の娘」もあり。こちらもおすすめ。

 タイタニック号から第一次世界大戦、大恐慌、第二次世界大戦、FDR,JFKなど、アメリカ近代史を絡めているので、歴史好きの人も楽しめます。

 この二人がある事件をきっかけに終生のライバルになるのですが、どちらも相手憎しでビジネスに私情を入れたり、相手を陥れたりしようとすると必ず報いを受けています。これは他のアーチャーの小説でもそうですね。ただ他の小説は主人公はあくまで正々堂々としていて、仕掛けたライバルが天罰を受けることが多いのですが。
 道徳面も含めルールを守らないビジネスマン、政治家は絶対破綻するというのがアーチャー氏の信条の様です。(でもこの人、元イギリス下院議員ですが、確か偽証罪かで刑務所送りになってるはず。)
 以前読んだ「ビジネスマンの息子に送る30通の手紙」にもそんなことが書いてあったので、欧米では日本よりモラルが厳しいのかなと思いました。
 
 最後、ちょっとしたドンデン返しがあり、これを知った後でもう一回読むとまた別の読み方ができます。

金閣寺

2006-01-22 14:57:24 | 小説
 前回三島由紀夫だったので、ついでに。
 
 金閣寺に取り付かれてついに放火に走る男の話。

 ・・・・・・最後まで読みきれませんでした。
 ちょっと変質的な人の精神の内面についていけませんでした。
 時間があって精神状態がいいときに読み直そうと思います。

 同じく挫折した本に「我が闘争」byアドルフ・ヒトラー
 高校時代に図書館で借りたものの分裂した内容についていけず、上下巻の上巻で終わり、返却。
 これは二度と読むことはないでしょう。

豊饒の海

2006-01-21 00:10:26 | 小説
 これ、一気に書くのどうかなと思ったんですけど、1個ずつ書くのは辛いので。 
 第一部が映画化されて、新潮文庫が大量に売り出しでいたのでつい購入。
 まともな文学を読んだのは久しぶりでした。

  

 三島由紀夫の最後の作品で、第一部:春の雪 第二部:奔馬 第三部:暁の寺
第四部:天人五衰 という構成。
 テーマは転生輪廻。第一部の主人公松枝清顕が転生を繰り返し、清顕の友人本多がそれを見守るというか追い求めるというか、そんな話。本多の人生の春夏秋冬でもあります。以下、少しネタバレあり。

 


 第一部:侯爵の御曹司清顕と伯爵令嬢聡子の悲恋が中心。
 当時の上流階級やそれを取り巻く人々の描写が素晴らしい。さすが三島由紀夫、 美しい日本語。
 ただ、映画は見てないのにどうしても妻夫木聡と竹内結子のイメージが浮かんでしまい、先入観が入ってしまったのが残念。なかったらまた違う読み方ができたかも。

 第二部:松枝家の書生だった飯沼の息子勲が思想にかぶれてテロを計画。勲が清顕の生まれ変わりと気がついていた本多はあえて裁判官の地位を辞して勲を救おうとする。
 勲の思想の元となった話「神風連史話」はストーリーはともかく、思想面は理解不能。当時の人は理解できる人も多くいたのでしょう。まだ武士の生き残りもいた時代だし。勲はまっすぐです、がちがちに。30年くらい前まではこんな人いたんでしょうね。
 題名のように、勢いのある小説だと思います。
 この巻、後の三島の自決を連想させますね。

 第三部:今度はタイの王女が転生。前回の反動か今度はこの王女ちょっと頭が弱 い。存在感もない。本多が富を得て、法律家の鑑のような人だった前巻までとは 別人のような変態に成り下がってます。仏教について延々語られる部分が多く、 ここは流し読み。うーんあまり言うことないな。

 第四部:すっかり老人となった本多は、貧乏だが、頭のいい少年安永透を発見し、清顕の生まれ変わりとして養育し始める。でも、違ったらしく、その上透に迫害されるようになる。しかし、陰湿に復讐。
 ほんとゆがんじゃったね、本多さん。老いというのはかくも残酷な・・
 
 そして、衝撃?のラスト。

 どうとでもとれるけど、なんだかなあ。

 

ダ・ヴィンチ・コード

2006-01-19 00:03:42 | 小説
 前回に引き続き、ベストセラーつながりで。

 まあ、面白かったと思いますよ。
 ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」、画集あるので見直しました。あの絵は何回も見ていたのに何の疑問も持ってなかったです。言われてみれば確かに変なのに。

 メインはキリストの聖杯伝説ですが、謎解きの部分は楽しめました。あの解釈はキリスト教社会ではちょっと問題あるのかもしれませんが、私は日本人だしクリスチャンでもないので。
 
 物語の運び方も良かったんですよ。結末どうなるんだろうとドキドキしながらページを繰っていきました。

 しかし、最後の20ページくらいはいただけなかった。
 いや、謎解きの部分はいいんですよ。それなりに落とし前はついてたと思うので。
 でも、小説の完結としてはどうかなあ?安い恋愛場面はいらないと思うし、いれるにしてももう少しましな書き方はなかったのかなあ?後々振り返ると、人間描写の面ではいまいちでした。もちろん翻訳の問題ではないです。

 読む価値はありですが、ハードカバー上下卷で約4000円払った価値があるかといえば、ちょっと疑問。

  

ノルウェイの森

2006-01-15 18:51:40 | 小説
 数年後に読み返し、感想が変わったものの中でも、こちらは逆。
 
 村上春樹のコアなファンの間ではどうも別物扱いのようですが、一番売れたのは間違いなくこの作品でしょう。

 最初に読んだのは18歳。大学受験も一段落して本を読む余裕ができたので、当時すでにベストセラーだったこの本を渋谷の本屋で購入。赤と緑のクリスマスカラーできれいな本でした。
 
 しかし、どこがおもしろいのか?ベストセラーの意味がわからず、実家の本棚に放置。その後家族の誰かが持ち出したらしく、行方不明に。
 
 数年後、社会人になった後文庫版で出ているのを発見。なつかしさもあり、なんとなしに購入し、再読。

 確かにね、読み返してみると話の筋は覚えてたし、文章とかせりふとかもまだ記憶にあったんですよ。ただ、心への響き方が全く違う。
 ここにでてくる登場人物は大体ちょっと変わってたりとか、病んでたりとか、何かを抱えてたりとかするわけですが、それに共感したりとか、そこまでいかなくても理解できるようになったのが大きいでしょうね。
 レイコさんの再入院のくだりとか・・実際あの少女みたいな人物に本当に自分が遭遇するとは当時は思いもしなかったし。

 成長と経験の過程で、失われる感性もあれば、養われる感性もあるといったところでしょうか。
 

人間失格

2006-01-14 22:09:08 | 小説
 同じ本でも、読む時期によって感想は変わるもの。
 
 そんな本は何冊もありましたが、その中でも最近読んで一番落差を感じた作品。
 
 言わずとしれた、太宰治の代表作のひとつですが、17くらいでこれをはじめて読んだ時は、心をえぐられるというか、自分の中の汚いところをつかれたというか、とにかく非常に衝撃をうけた記憶があります。
 
 で、十数年ぶりに再読。
 
 感想一言・・・ただのクズ親父やん。
        

 ・・・何の感銘もうけませんでした。そういう面ではショックかも。
    十数年の月日は、繊細な感性を奪ったのかもしれません。