「後にいる多くの者が先になる」(マルコ10:31)

　最後にイエスは「しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になる」(マルコ10:31)と但し書きを付け加えます。これは、ペトロの自負に対する警告のようにも聞こえます。必ずしもイエスオリジナルの言葉だというよりも、当時の諺のようなものだったのではないかと考えられています。旧約聖書でも元来、兄よりも弟が祝福されるというケースが目立ちます。そもそもイスラエルが祝福されているのも、強大な帝国でなく弱小イスラエルが愛されているという、価値の逆転があるからにほかなりません。
　価値なき者が愛され、恵みを受ける。イエスが様々な人々との出会いを通して教えようとしていたことは、一般の諺でも実は知られていた原理なのでした。それでも、この弟子たちには、すんなり理解できたとは思えません。だからこそ、愛の極みである十字架までたどり着かなければならなかったのでした。