ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

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馬の獣医療がピント外れなわけ

2019年09月04日 | 馬の医療や管理について

 今、「馬の科学」という雑誌が手元にありまして。ウマ科学会の月刊誌の一つ、発行はJRA。ウマ科学会のメンバーとしては、一応毎回目は通してみるんですけど・・・・・。臨床に全く役立たない情報ばかりなんですよ・・・。

 小動物臨床を始めたばかりの頃って、今と違って薬がひどくて、例えば心疾患はなかなか治療がうまくいかなくて。で、例えば「循環器疾患100症例」みたいな本があったりして。その名の通り、100症例書かれている。症状・問診・検査・診断・治療・予後の流れを追いかけることができるわけ。そういうのがかなり勉強になりましたけども。

 そういうのを期待して、ウマ科学会に入ってみたんですけど、なんか違うんですよね。。。。

 「馬の科学」第56巻、おや、見直してみると、とんでもない紙が挟まってるじゃないですか。えーと、「廃刊」ですか・・・・。そうか、じゃ、ますます情報を得づらくなりますね・・・・。

 ともあれ、こういう雑誌を読むと、当たり前だが、馬の事ばかり書いてある。だから、いつまでたっても馬を理解できないんでしょうね。

 小動物臨床というのはなかなかな仕事です。子供の頃、動物園の獣医さんになりたいなーと思っていた。それをかなえたクラスメートもいる。彼女は、かのシャンシャンちゃんが生まれてからしばらくの間、よくインタビューに出てまして、顔色を窺って心配してたもんです。寝てなさそうだあ、とか思って。一方自分はどうかというと、やっぱり多種多様な動物を診察することになってしまって、それなりに願いがかなったのかも、しれない。これはですね、ヘンな生き物を買いたがる、で、飼いたがる日本人が悪い。元気な時はいいですけど、いざ病気になったときにおたおたする。で、頼られてしまうんですな。そういう要望を突っぱねて犬猫獣医でもやってはいけます。大学では爬虫類なんかこれっぽっちも習わなかったし、鳥といえば、鶏しか習わなかったし。鶏の場合は、病気=殺処分ですから、基本。でもね、ご要望がある以上、やっぱり勉強して、治療して、獣医が投げ出したら、その動物はどうなる、という自覚を持たざるを得なかったから。

 で、そんなことをやっていると、世の中色んな動物がいるけれども、治療の方針を決めるにあたって重要なのは、哺乳類・鳥類・爬虫類という分類もだけど、もっと重要なのが「食性」で、草食か、雑食か、肉食か、で治療指針が全然変わっちゃうんですよ。

 草食獣の典型がウサギ。哺乳類中一番厄介じゃないかと思っている。実に診察しにくい(診察中にオダブツ、になりかねない面がある)だけじゃなくて、治療も難しいんだが、一番困るのは、草食獣には安全に使える抗生物質が本当に少ない点。ペニシリンをはじめとしたβラクタム系・セフェム系という、普通第一選択で使う抗生剤をウサギに投与すると、ウサギって死んじゃうんです。これは、抗生剤が毒になる、からではない。この手の広域殺菌性抗生剤は、消化器内の腸内細菌叢のバランスを崩して、悪玉菌を増やしてしまう、その悪玉菌にウサギが殺されちゃうんですね。

 この件は、ウサギだけではなく、ハムスターのようなげっ歯類や草食性のカメやイグアナといった爬虫類もほぼ同様と考えられている。小動物の獣医で、草食獣を診ている先生方の間では、草食獣にβラクタム系・セフェム系は禁忌、というのは常識。

 なのに、なぜ、馬にセフェム系のセファロチンだの、βラクタムのマイシリンなんか、使うんだ???

 ウサギと馬の消化器構造はほぼ同じ、食性もほぼ同じ、だから、元来βラクタム系・セフェム系は絶対にダメだ。大体、セファロチンなんか、大昔のしょうもない抗生剤、効くわけない。それどころか、いつ製造中止になるかわからんのに。マイシリン使ってペニシリンショックを起こす馬は多いです。そんな危険を冒してまで使う意味がある薬じゃありません。

 ところが「馬の科学」56巻を読むと、「βラクタム系の抗生物質の検討」なんて論文が出てる。そんな論文を出しちゃう、審査員も、こういう常識話を知らないのか~~~。それじゃあ、廃刊でもしょうがないですよ。

 つまりまあ、馬を他の哺乳類(人も含む)と比較検討して、治療を考える、というようなことを全くやってないから、いつまでたっても空回り、なんでしょう。で、大動物だから特別、だの、馬は特殊だから、だの、何と比べているんだ???比べてなんかないじゃないですか。



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